エンジン・サマー | 一迅社文庫編集部のブログ

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新刊情報など中心に更新していく予定。

H田です。

唐突ですが、古賀亮一先生の信奉者であるところの私としましては、「猿やゴリラが出てくるフィクション=面白い」という信念を持っております。
そして、「国際ゴリラ年 」でもある今年2009年は、ことフィクションの世界におきましても、『猿駅/初恋』『やってきたよ、ドルイドさん!2』『はずむ!おじょうさま』『アッチェレランド』などなど、猿が登場する傑作小説・漫画が次々と刊行されておりまして、これはまさにSARU-YEARと言えましょう。
おっと、そういえば、4/20発売の一迅社文庫『ペンギン・サマー』にも出てきますよ、猿が……。


と、前置きはこのくらいにして、先日の更新でも少し触れました『エンジン・サマー』の話をします。何しろタイトルの元ネタでもありますから、紹介くらいはしないとバチも当たりましょう。

『エンジン・サマー』(Engine Summer)は1979年にジョン・クロウリーが発表したSF小説です。日本では1990年に大森望 氏によって翻訳され、その後絶版になっていたのですが、昨年2008年に、大森氏自ら訳文に大幅に手を入れた上での復刊と相成りました。

物語の舞台となるのは、何らかの事情によって文明が崩壊した未来。様々な物品や言葉が本来の意味を失って伝わり(タイトルとなっている「エンジン・サマー」という言葉も、「インディアン・サマー(小春日和)」という言葉が、変形して伝わったものです)、人類の末裔たちが、独自の文化を作り上げてしまっている世界。

そのような世界の中で、主人公の少年「しゃべる灯心草(ラッシュ・ザット・スピークス)」(変な名前ですが、そういう世界なので諦めてください)が初恋の少女「一日一度(ワンス・ア・デイ)」(解説では訳者の大森氏が「ツンデレ」と仰っていますが、どちらかというと「素直クール」とかの方が近いのではあるまいかと思わなくもありません)を追い、故郷を離れて旅に出る、これが物語の骨子です。

奇妙な世界での旅の様子、ワンス・ア・デイとの再会、再びの別れ、そして……、
これらを受けたラストで明らかになる真実、これが本当に美しく切ないのですよ。最初は世界観などに戸惑いを覚えるかもしれませんが、最後まで読んでも時間を損したと思うことはない物語だと思います。


さて、長々と書いてしまいましたがこの『エンジン・サマー』、『ペンギン・サマー』のタイトル元ネタとなっただけあって、読んでおくと『ペンギン』を読んだ時にニヤリとできる、
とかそういったことは一切ございません。お気をつけください。

「じゃあ全然関係ないんジャナイカ。そんな話、公式ブログでスンナ!」
と腹を立てる方もいらっしゃるやも知れませんが、まあ慌てるない、こちらの画像をご覧ください。

一迅社文庫編集部のブログ-ペンギン・サマー帯有り

ご覧の通り、『エンジン・サマー』の翻訳者である大森望さんに帯の推薦文を頂きました。

「今度『ペンギン・サマー』という本を出すことになりまして、いやまあタイトルいただいただけで『エンジン・サマー』とは全く一切これっぽっちも内容関係ないものなんですが、でもこのタイトルならいっそ大森さんに帯を頂ければ面白いと思いまして(大意)」という、冷静に考えずとも失礼なお願いを快諾頂いた大森さん、本当にありがとうございました。
開口一番「ネタかよ!」と怒られはしましたけれど。


それと、これだけではあまりにあんまりなので、『ペンギン・サマー』の内容も一部公開しましょう。

一迅社文庫編集部のブログ-ペンギン・サマー本文

途中、戯曲になります。(H田)