【北朝鮮の弾道ミサイルによる日本の首都機能消滅の可能性とアジアにおける覇権の交代について】

"Today, every inhabitant of this planet must contemplate the day when this planet may no longer be habitable. Every man, woman and child lives under a nuclear sword of Damocles, hanging by the slenderest of threads, capable of being cut at any moment by accident or miscalculation or by madness."
- John F. Kennedy, “Address Before the General Assembly of the United Nations”, September 25th 1961 [1]


現在、北朝鮮とアメリカの間で、挑発と緊張がエスカレートしています。

アメリカのトランプ大統領は、北朝鮮がミサイル実験を止めないと、北朝鮮は炎と怒りを見るだろうと警告し、これに対し、北朝鮮は、グアム島周辺に同時に4発の弾道ミサイルを着弾させる計画を検討中であると発表しました。

日本政府は、北朝鮮の弾道ミサイルが上空を通過する可能性のある中国・四国地方にパトリオット・ミサイルを配備することを発表。その際、集団的自衛権を援用することを表明しています。パトリオット・ミサイルでは、射程距離が短いことを明らかにし、より射程距離が長いTHAADを購入・配備する布石なのかも知れません。

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去る5月にアメリカが3個の空母打撃群を朝鮮半島近海に展開させた際も、北朝鮮とアメリカとの間で緊張が高まりましたが、結局、軍事衝突には至りませんでした。

そのため、日本では、今回もしばらくすれば緊張が和らぐだろうという見方をする人が多いようです。

しかしながら、私は、北朝鮮とアメリカとの間で、挑発と緊張が繰り返されるうちに、偶発的に小規模な軍事衝突が起こり、それが全面的な戦争に至る可能性は低くないと思っています。それは、次の理由からです。

歴史上、ひとつの大国から別の大国へ覇権が移るとき、その多くの場合は、戦争が転換点となってきました。たとえば、イギリスからアメリカへ覇権が移る転換点となったのは、第二次世界大戦でした。

19世紀末、アメリカが、北米大陸を完全に開拓し、海外へ目を向け始めたとき、アメリカが目にしたのは、ヨーロッパの列強が確立した植民地支配体制でした。すでに、アジアでもアフリカでも、ヨーロッパ列強が植民地支配体制を確立しており、アメリカの入り込む余地はありませんでした。

そのため、アメリカは、アジア・アフリカにおけるヨーロッパ列強の支配体制を破壊する国が現れるのを待ち、その破壊者を制圧することを通じ、アジア・アフリカにおいて影響力を拡大することにしました。

その破壊者とは、ドイツと日本です。第二次世界大戦において、ナチスドイツは、フランス、オランダ、ベルギーを占領し、イギリスを追い詰めました。一方、日本帝国は、中国から東南アジアへ進撃し、インドにまで迫りました。

アメリカは、日本帝国がアジアにおけるヨーロッパ列強の植民地支配体制を十分に破壊するのを待った上で、1943年から本格的な反撃を開始しました。

アメリカは、圧倒的な戦力で、日本を制圧し、第二次世界大戦が終了したとき、アジアにおける覇権を確立することに成功しました。その体制が現在に至るまで続いています。

これまで、中国は、アメリカの手法をずっとコピーしてきました。市場経済に基づく経済拡大を進めるにあたり、アメリカのシステムを研究し、導入してきました。拡大する経済力を基盤に、アメリカ軍同様、ステルス戦闘機やイージス艦、航空母艦など、軍事力も増強してきました。

そして、現在、中国は、かつてアメリカがアジア・アフリカにおけるヨーロッパ列強の植民地支配体制に直面したように、アジアにおけるアメリカの覇権に直面しています。

もし中国が、アメリカの手法をコピーするとすれば、かつてアメリカが行ったように、既存の覇権を破壊する破壊者が現れるのを待ち、その破壊者を制圧することを通じ、アジアにおける中国の覇権を確立しようとするかも知れません。

今回は、北朝鮮がその破壊者の役割を果たすかも知れません。

仮に北朝鮮とアメリカとの間で、小規模にせよ偶発的な衝突が起こった場合、互いに報復を恐れる北朝鮮とアメリカとの間で、紛争が一気にエスカレートする可能性があります。

その場合、アメリカによる全面的な集中攻撃を恐れる北朝鮮は、日本の首都と在日米軍基地に対し、弾道ミサイルによる先制攻撃をかけるかも知れません。

仮に北朝鮮が核ミサイルだけでなく、炭疽菌などを搭載した数十発の生物兵器ミサイルを使用すれば、東京にある日本の官僚機構、保守派政党、大企業本社、メディア、広告代理店、金融システム、宗教法人、教育機関、等々を、全て抹殺し、破壊することが出来ます。日本が、その破壊から立ち直るには数十年かかるでしょう。永久に立ち直れないかも知れません。[2]

アメリカは、報復として、北朝鮮に対し、空と海から、核攻撃を含む集中爆撃を行うでしょう。

中国は、北朝鮮が日本の首都機能を完全に破壊し、北朝鮮がアメリカの爆撃で戦闘能力を失ったのを見届けてから、人民解放軍を北朝鮮へ進撃させ、一気に北朝鮮を制圧することが考えられます。

その結果、北朝鮮には、中国の事実上の傀儡政権が成立するでしょう。すでに中国の政治的・経済的な影響力が拡大している韓国と合わせて、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶでしょう。

さらに、日本の首都機能が破壊されることで、日本および日本を足場にしたアメリカのアジアにおける影響力は急速に低下するでしょう。これに代わり、中国が東アジアにおける覇権を確立し、圧倒的な影響力を持つようになるでしょう。

現在、日本の保守派政治家は、日本の憲法改正・再軍備へ向けて着々と歩みを進めていますが、それは、実は、日本の自殺行為にしか過ぎないのかも知れません。

敵基地攻撃論などに代表されるように、日本人は攻撃することばかり考え、守ることを疎かにします。日本は小さい島国に人口が密集しています。とくに都市部に人口が集中しています。これほど攻撃に対して脆弱な国はありません。しかも、日本は東京にあらゆる機能が集中しています。そのため、東京を集中的に攻撃すれば、日本の政治力も経済力も破壊することが可能です。

かつて第二次世界大戦において、日本帝国は他国を攻撃することばかり考え、結局、最終的に日本全土が焦土化しましたが、それと同じ道を、日本は歩んでいるのかも知れません。

現在、日本の上には、核ミサイル・生物兵器ミサイルというダモクレスの剣が、細い糸によって吊り下がっている状況なのかも知れません。


北朝鮮の核開発・弾道ミサイル開発問題については、一刻も早い外交による解決が必要です。

政治家に任せていると、上記の軍事的衝突のシナリオが現実化する恐れがあります。日本国民のみなさんが、北朝鮮の核開発・弾道ミサイル問題の外交的解決を強く求め、自公政権に代わる、民主主義と平和主義に基づく政権を樹立することが必要です。

もうあまり時間は残っていないかも知れません。


参照資料:
(1) John F. Kennedy, “Address Before the General Assembly of the United Nations”, September 25th 1961

(2) 「金正恩ミサイルに日本の死者186万人のシミュレーション エスカレートする挑発行動」、週刊新潮、2017年4月20日号

(東京に北朝鮮の核ミサイルが着弾すれば42万人が死亡し、生物兵器(炭疽菌)を搭載したミサイルが着弾すれば186万人が死亡するというシュミレーションが示されています。)