【着実に話し合い解決への道を歩み始めた北朝鮮と好戦化するトランプ政権について】

1. 北朝鮮の金正恩委員長の中国電撃訪問と朝鮮半島非核化への決意、トランプ政権の混迷

3月25日〜28日、北朝鮮の金正恩委員長が中国を電撃訪問、中国の習近平主席と会談し、朝鮮半島非核化へ向けての決意を表明しました。

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滞在中、金正恩委員長は、中国の技術院も訪問、中国の先端技術を視察しました。北朝鮮は、すでに党大会において、軍事優先のいわゆる「先軍政治」から脱却し、国防と経済の両立を目指す「並進路線」への切り換えを表明しています。今後、北朝鮮が朝鮮半島非核化への歩みを進めるにつれ、中国は北朝鮮への制裁を段階的に解除し、経済協力・技術支援を行っていくものと思われます。それは、北朝鮮が平和経済へ移行することを可能とします。

また、今後、北朝鮮が朝鮮半島非核化を実施するに際し、中国がいわゆる核の傘を北朝鮮に提供し、北朝鮮の安全を保障するということも考えられると思われます。

他方、3月29日に行われた南北閣僚級協議において、すでに開催が決まっていた南北首脳会談の日程も、4月27日と正式に決定されました。

今年に入ってからの北朝鮮の一連の外交攻勢は、順序を踏み、非常に論理的かつ緻密であり、その内容といい、タイミングといい、外交的観点から見て、きわめて的確であると思います。おそらく、北朝鮮は、中国およびロシアの助言を受けながら、ひとつひとつのステップを進めているものと思われます。

今回、北朝鮮が、アメリカに対する強硬姿勢から一転して韓国および中国との積極的対話姿勢へと変化した理由は、北朝鮮がアメリカ本土を攻撃出来る核兵器と弾道ミサイルの開発を完了したからです。

北朝鮮の移動式弾道ミサイルは、地下トンネルと山岳地帯に隠されており、アメリカは、たとえ核兵器を投入しても、軍事力を使って、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルを全て取り除くことは出来ません。そのため、もしアメリカが北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮は、アメリカ本土に対して核ミサイルによる報復攻撃を行うことになります。報復を恐れるアメリカは、北朝鮮を攻撃出来ません。

すでに北朝鮮が大気圏再突入の技術まで得ているかは不明ですが、もし得ていないとしても、北朝鮮は、アメリカ上空の大気圏外で核兵器を起爆し、「電磁パルス攻撃」を行うことが可能です。電磁パルスによりアメリカの電力網・通信網・経済システムが破壊され、最悪の場合、アメリカの全人口の90%が餓死すると予想されています。[1]

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たとえアメリカから先制核攻撃を受けても、報復でアメリカを壊滅させることが出来る能力を得た北朝鮮にしてみれば、アメリカが軍事演習をしようが、戦略的爆撃機を展開しようが影響はないということなのだと思います。報復を恐れるアメリカは、いずれにせよ実際に北朝鮮を攻撃することは出来ないからです。そのため、北朝鮮は、アメリカの動向如何に関わらず、韓国および中国との対話に集中出来ることになります。

北朝鮮が、着々と韓国との融和を進め、朝鮮半島非核化への決意を明らかにし、平和的外交攻勢を進めている状況において、もしアメリカが北朝鮮を攻撃したら、アメリカは、ただの戦争国家・殺人集団となってしまいます。同盟国の信頼も失うことになるでしょう。上述のように、すでにアメリカには軍事的オプションはありませんが、北朝鮮、韓国、中国の関係が親密になっていく中で、アメリカは、ますます北朝鮮を攻撃しにくくなっていくと思います。


一方、アメリカのトランプ政権は、ますます混迷の度合いを深めているようです。トランプ大統領の個人的嗜好に基づく、行き当たりばったりの政策が続いています。

今月、トランプ大統領は、北朝鮮との無条件の交渉開始を提言したティラーソン国務長官を解任し、後任の国務長官に、タカ派で前CIA長官のマイク・ポンペオ氏を任命しました。

さらに、マックマスター国家安全保障担当補佐官を解任し、後任の補佐官にジョン・ボルトン氏を任命しました。ボルトン氏は、北朝鮮への先制攻撃を主張してきた超タカ派です。トランプ大統領の人事は、客観的状況から乖離しています。

これらの人事を受けて、一部報道は、アメリカが北朝鮮への攻撃を行うことを予測しているようです。しかしながら、仮に大統領が北朝鮮への攻撃を望んでも、軍が大統領の命令に従うかは、別問題です。

すでに昨年11月、アメリカ軍の核戦略トップのジョン・ハイテン米戦略軍司令官(空軍大将)は、たとえ大統領が核攻撃を命令しても、「違法」な命令ならば拒否すると明言しています。[2]

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General John E. Hyten, USAF
Commander, United States Strategic Command

B-52、B-2などの戦略爆撃機、ミニットマン大陸間弾道ミサイル、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を統合指揮する戦略軍司令官が拒否すれば、核ミサイルは発射されません。

現代において、戦争は、国際法の規制を受けます。アメリカも署名しているジュネーブ条約などの国際人道法は、通常兵器で足りる場合にあえて核兵器を使ったり、核兵器によって軍人や市民を無差別に殺戮することを禁止しています。大統領が違法な核攻撃を命令した場合、戦略軍司令官は、これらの国際法を引用し、「大統領、その命令は法律に違反しています。」と伝え、命令を拒否します。[3]

もちろん大統領は、命令に従わない司令官を解任出来ます。しかしながら、後任の司令官も違法な命令には従いません。たとえ何人司令官を解任しても、違法な命令は実行されません。それが「法の支配」の意味です。「法の支配」の下、軍人は、適法な命令に従う義務があると同時に、違法な命令に従わない義務があります。[4]

もし大統領が違法な命令を繰り返せば、アメリカ各軍の司令官レベルで辞任が続出するかも知れません。

すでに国務省の朝鮮半島問題専門のベテラン外交官は、辞任しました。


2. 南北間の経済協力の可能性

なお、これまで、朝鮮半島情勢をめぐっては、軍事的な側面ばかりが焦点となっていましたが、4月末の南北首脳会談へ向け、今後、北朝鮮および韓国から、南北間の経済協力の面で、様々な提案が行われて行くものと思われます。

朝鮮半島西岸沿いには、韓国から北朝鮮へつながる鉄道路線が敷設されています。京義線と呼ばれます。この鉄道路線を整備・再開し、定期的な運行を実現すれば、韓国とロシア、韓国と中国、韓国とモンゴルが鉄路でつながることになります。さらに、ロシア、モンゴル、中国を経由して、韓国の釜山からヨーロッパまで鉄路が直結することになります。[5][6]

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かつて行われた南北間の経済協力は、韓国と北朝鮮の間だけにとどまり、小規模でした。鉄道の運行も、北朝鮮の開城工業団地とソウルの間だけでした。

これに対し、今後、南北間の経済協力が進めば、それは、中国が進める「一帯一路」と直結することになります。従来の経済協力と比較にならないほど大きな経済的効果が期待出来ます。

しかも、韓国はAIIB (アジア・インフラ投資銀行) 加盟国です。南北間の経済協力に関し、AIIBから韓国へ巨額の融資が行われるかも知れません。

さらに、韓国側から、朝鮮半島を貫き、ユーラシア大陸の太陽光発電・風力発電施設へつながる直流送電網の建設など、再生可能エネルギーの面でも提案が行われるかも知れません。[7]

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これらの提案を通じて、韓国国民の間に、南北協力による果実として、平和だけでなく、経済的なメリットもあることが広く認知されれば、韓国国民の南北融和への支持が高まることになるでしょう。

その場合、韓国の文大統領は、世論の支持を背景に、アメリカに対し、今後予定されている米韓合同軍事演習の規模縮小を提案出来るかも知れません。


3. アメリカと中国を加えた本格協議への移行の見通し

上述のように、南北首脳会談の過程で、北朝鮮から、朝鮮半島非核化の条件として、北朝鮮とアメリカの間の平和条約の締結、在韓米軍の撤収、アメリカの北朝鮮への不可侵の保証などの具体的提案があれば、5月以降、アメリカや中国を加えた本格的な協議へ移行することが考えられます。

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その際、本格的な協議は、6カ国協議となるかも知れません。あるいは、中国、北朝鮮、韓国、アメリカの4カ国の協議になるかも知れません。

本格協議の内容として、北朝鮮側からは、アメリカが北朝鮮と平和条約を締結すること、在韓米軍を撤収すること、アメリカが北朝鮮への不可侵を保証することなどが要求されることになると思われます。アメリカ側からは、北朝鮮が核兵器を放棄すること、北朝鮮国内における基本的人権の尊重を含む民主的措置の実施などが要求されることになると思われます。また、韓国から朝鮮半島の非核兵器地帯化の提案が行われるかも知れません。中国から北朝鮮に対し経済支援と「一帯一路」への参加の提案が行われるかも知れません。[8]

今月上旬、北朝鮮を訪問した韓国大統領府の鄭義溶・国家安保室長と会談したトランプ大統領が、5月までに北朝鮮の金正恩委員長と会談することに同意したとの発表がありました。アメリカに軍事的オプションがない以上、話し合いしか問題解決の方法はありません。来るべき米朝首脳会談において、上述の本格協議の内容について、その大枠が合意されれば、北朝鮮問題の話し合いを通じた解決が加速されることになります。

ただ、問題となるのは、現在、トランプ政権には、優秀な外交官がいないことです。アメリカ国内の国際協調派の優秀な人材は、トランプ政権への協力を拒否しています。そのため、トランプ大統領がアメリカ国内の国際協調派と和解し、優秀な人材を政権に迎い入れるか、あるいは、異例ですが、中間選挙以降、上院の外交委員会が、北朝鮮との協議を実質的に監督・主導することになるかも知れません。

トランプ政権での決着が難しい場合、本格協議が断続的に継続され、アメリカの次の政権で最終合意に到達することになるかも知れません。

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なお、仮に平和条約の締結、在韓米軍の撤収となれば、その後の朝鮮統一へのロードマップも必要となってくると思われます。

東西ドイツの統一、南北ベトナムの統一が、ある程度参考になるかも知れません。東西ドイツの統一においては、冷戦にアメリカが勝利し、ソ連軍が東ドイツから撤収したあと、西ドイツの政治システムで統一が実現しました。南北ベトナムの統一においては、ベトナム戦争に北ベトナムが勝利し、アメリカ軍が南ベトナムから撤収したあと、北ベトナムの政治システムで統一が実現しました。

これに対し、朝鮮半島情勢においては、いずれかの側が勝利したという状況にありません。そのため、南北朝鮮統一においては、北朝鮮あるいは韓国のいずれかの国家制度で統一するのでなく、ゆるやかな連邦制を採用し、当面、北朝鮮および韓国のそれぞれの政治システムを維持したままでの統一を行うことが望ましいと思われます。中国およびアメリカが、それぞれ、韓国の民主制度の維持の保証、北朝鮮の政権の維持の保証を行うことが必要です。

その上で、北朝鮮が市場経済を徐々に導入し、韓国の民主主義制度が維持されれば、北朝鮮の平和経済への移行と南北間の交流を通じ、少しずつ北朝鮮に民主主義の諸制度が浸透して行くことになると思われます。

ちなみに、現在、中国の「一帯一路」政策は、北東アジアにも及び、中国、モンゴル、ロシアの間で、道路や鉄道網の整備が進み、経済的協力関係が進んでいます。北東アジアは、経済成長の大きな可能性を秘めています。[9]

韓国の文在寅大統領は、すでに中国の「一帯一路」政策を支持し、積極的に参加することを望むと表明しています。

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もし北朝鮮も「一帯一路」に参加し、経済復興が進めば、南北朝鮮統一へのハードルも下がることとなります。というのも、統一に反対する韓国国民があげる理由のひとつは、統一が実現した場合の経済的負担だからです。

そして、仮に南北朝鮮が統一すれば、「一帯一路」が、韓国南端の釜山にまで及ぶことになり、釜山から平壌、ウランバートルを経由してモスクワ、さらにヨーロッパまで陸路および鉄路でつながることになります。それは、通商・交易・金融・エネルギーを通じ、統一朝鮮に大きな経済的繁栄をもたらすことになるでしょう。逆に、それが、南北朝鮮統一への大きな経済的誘引となるでしょう。


4. 本格協議が決裂した場合

一方、もしアメリカがどうしても話し合いを拒否する場合あるいは本格協議が決裂した場合、事態は、アメリカの意向にかかわらず、中国、ロシア、北朝鮮、韓国の間で進展して行くことになると思われます。

中国とロシアも、朝鮮半島の非核化を目標としています。しかしながら、非核化の時期については明確にしていません。むしろ核保有国である中国とロシアは、北朝鮮が、これ以上核兵器と弾道ミサイルの開発を進め、核ミサイルの多弾頭化や大気圏再突入の技術を確立する事態だけは避けたいと考えていると思われます。

そのため、中国とロシアは、もしアメリカが対話を拒む場合には、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発を「無期限停止」することを条件に、北朝鮮に対する制裁を解除し、北朝鮮に対する経済援助と経済交流の再開に動く可能性があると思います。

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もし北朝鮮が条件をのめば、中国とロシアは、北朝鮮の核兵器および弾道ミサイルの開発を「無期限停止」させるとともに、北朝鮮を「一帯一路」に巻き込むことが可能となります。それは、「一帯一路」の進展と北朝鮮の経済復興につながります。

上述したように、もし北朝鮮が「一帯一路」に参加し、経済復興が進めば、南北朝鮮統一へのハードルも下がることとなります。というのも、統一に反対する韓国国民があげる理由のひとつは、統一が実現した場合の経済的負担だからです。

そして、仮に南北朝鮮が統一すれば、「一帯一路」が、韓国南端の釜山にまで及ぶことになり、釜山から平壌、ウランバートルを経由してモスクワ、さらにヨーロッパまで陸路および鉄路でつながることになります。それは、通商・交易・金融・エネルギーを通じ、統一朝鮮に大きな経済的繁栄をもたらすことになるでしょう。逆に、それが、南北朝鮮統一への大きな経済的誘引となるでしょう。


5. 謀略の可能性について

なお、南北間の融和、南北間の経済協力が急速に進展することを恐れるアメリカは、何らかの妨害工作を行うかも知れません。たとえば、韓国からアメリカへの輸出品に高額の関税をかけるかも知れません。

また、南北間の融和ムードを破壊する、何らかの軍事的衝突が発生するかも知れません。ただ、その場合、アメリカが直接北朝鮮と交戦するのでなく、日本が当事者となるかも知れません。

たとえば、日本の自衛艦が、北朝鮮への密輸品摘発のために海上阻止行動を行っている際、付近に現れた北朝鮮の軍艦から攻撃を受けたと誤認し、あるいは、誤認したとして、北朝鮮の軍艦との間で実弾射撃を交わすなどの事態が発生するかも知れません。

現在の安倍政権は、国会・国民の監視・コントロールを受けない全くの無法状態にあります。日本の民主主義の未成熟が、アジアの平和を阻害する危険性があります。


参照資料:
(1) US Congressional Report "North Korea Nuclear EMP Attack: An Existential Threat", October 12th 2017

(2) "US general says he would resist 'illegal' Trump nuclear strike order", The Guardian, November 19th 2018

(3) "Can US generals say 'no' to Trump if he orders a nuclear strike?", BBC News, November 26th 2017

(4) "The Duty To Disobey A Nuclear Launch Order" by Marjorie Cohn, Huffington Post, November 27th 2017

(5) "Koreas-Russia Project: S. Korean Businesses to Visit N. Korea as Part of Pyongyang-Moscow Venture", BusinessKorea, February 10th 2014

(6) "Two Koreas, Russia Consider Building Railway Training Center", VOA News, July 7th 2014

(7) "KEPCO pushes for 'power grid' connecting S. Korea, Russia", Yonhap News, November 8th 2017

(8) "Understanding the North Korea threat" by Joseph S. Nye, The Strategist, December 7th 2017

(9) "North Korea and Beyond: An Alternative Vision of Northeast Asia" by Lyle J. Goldstein, The National Interest, December 28th 2017

【安倍政権の進めるファシズム体制・戦時体制の背景には、アメリカのオフショア・バランシング戦略があることについて】

1. アメリカの国家安全保障戦略の変質

アメリカが唯一のスーパーパワーであった時代は終わりつつあります。2020年に、中国は、GDPでアメリカを追い越すと予想されています。それにともない、中国は、急速に軍事力の拡大を進めています。ロシアも、極超音速滑空ミサイル(HGV)の開発や超音速巡航ミサイルの配備を行い、軍事力の高性能化を進めています。

このような状況の下、アメリカの国家安全保障戦略は、大きく変わりつつあります。

通常兵力の優位性が低下しつつあるアメリカは、先月、「核態勢の見直し(NPR)」において、小型の戦術核の開発を行うことを発表しました。[1]

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戦術核は、中国やロシアに対抗するため、東アジアやヨーロッパなどに配備されるものと予想されます。抑止力の役割を担う戦略核と異なり、戦術核は実際に使用される可能性が非常に高くなります。

また、今月、トランプ大統領は、ティラーソン国務長官を解任し、後任の国務長官に、タカ派で前CIA長官のマイク・ポンペオ氏を任命しました。そして、新しいCIA長官に、CIAで30年以上の勤務歴を持ち、秘密工作を専門とするジーナ・ハスペル女史を任命しました。[2][3]

今後、アメリカは、冷戦時代のように、CIAや軍情報機関による秘密工作や謀略を通じ、外国政府の揺さぶりや転覆を試みるようになるのかも知れません。


2. アメリカのオフショア・バランシング戦略と安倍政権の進めるファシズム体制・戦時体制

さらに、アメリカは、アメリカ自らが中国やロシアと戦うのでなく、地域の同盟国を中国やロシアと戦わせ、自らは後方から指令を出す、いわゆるオフショア・バランシング戦略を進めています。[4]

これを受け、現在、日本では、安倍政権が、あらゆる民主主義のルールを無視して、ファシズム体制と戦時体制の構築に邁進しています。

安倍政権は、特定秘密保護法、共謀罪法を成立させ、公務員および国民に対する監視体制を築きました。違憲の安保法制を成立させ、法形式上、限定的集団的自衛権に基づく海外における武力行使を可能にしました。

さらに、報道によると、自民党憲法改正推進本部は、改憲案について、戦争放棄を定めた9条1項、戦力不保持を定めた9条2項を維持した上で、「必要な自衛の措置」のための組織として、自衛隊の存在を明記する方針を固めたそうです。[5]

たとえ戦争放棄および戦力不保持の文言が残されたとしても、自衛隊が憲法に明記されれば、「後法は前法に優先する」の原則に基づき、「必要な自衛の措置」のための組織として、自衛隊が合憲とされ、戦争放棄および戦力不保持の文言は空文化することになります。

その結果、「必要な自衛の措置」すなわち全面的集団的自衛権に基づき、自衛隊による海外での武力行使や事実上の攻撃的兵器の配備が、加速度的に推進されることになるでしょう。

オフショア・バランシング戦略に沿って、自衛隊が中国の制海権や制空権を阻止するために動員され、北朝鮮や中国を攻撃出来る中距離弾道ミサイルが日本に配備されるようになるでしょう。戦術核も、日本に配備されるようになるかも知れません。

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3. 日米安保条約体制に代わる、新しい、あるべき安全保障体制に関する国民的議論の必要性

現在、安倍政権下では、公文書の改ざんが行われ、政府が国会・国民に嘘をつき、また、事案に関わった公務員の自殺が続いています。まさに、無法、非人間的状況が常態化しています。一刻も早く安倍内閣を総辞職に追い込むべきです。

しかしながら、たとえ安倍政権を取り除いても、問題の根本は解決しません。アメリカのオフショア・バランシング戦略は維持され、新しい政権が日本のファシズム体制・戦時体制の推進を続けるからです。

日本では、与党はもちろん、野党の立憲民主党でさえ、日米安保条約体制の堅持をうたっています。共産党は、日米安保条約に反対ですが、それに代わる具体的な安全保障体制の提示が出来ていません。

日本国民は、日米安保条約体制に代わる新しい安全保障体制を構想すべきです。現実のパワーバランスに基づき、ロシア、中国の役割を認めるべきです。

具体的には、ヨーロッパにおいては、ロシアおよびアメリカとヨーロッパ諸国が構成する集団安全保障体制により地域の平和と安定を維持していくべきです。

アジアにおいては、中国およびアメリカとアジア諸国が構成する集団安全保障体制により地域の平和と安定を維持していくべきです。

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集団安全保障の具体例としては、国際連合やOSCE、ASEAN地域フォーラムなどをあげることが出来ます。集団安全保障においては、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。

そのような集団安全保障の仕組みがアジアにおいて構築された場合、集団安全保障機構の総会あるいは理事会における決議に基づき、たとえば、域内のテロ組織や海賊を撲滅するために、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して対処することになります。

また、域内で地震や津波などの災害が発生した場合、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して災害救助活動を行うことになります。

さらに、域内に、核保有を進めようという独裁国が現れた場合、その抑制のため、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力することになります。

日米安保条約体制を維持する限り、近い将来、日本は必ず北朝鮮あるいは中国との武力衝突に至るでしょう。そして、それは核戦争になるでしょう。その結果、日本本土が再び焦土と化し、あるいは琉球列島を失うことになるでしょう。

アジアの平和を維持するため、新しい、あるべき安全保障体制に関し、広範な国民的議論を開始すべきです。男性・女性、全ての年齢層の国民が参加し、新しい、あるべき安全保障体制について議論を開始すべきです。

アジアにおいて、中国およびアメリカとアジア諸国が構成する集団安全保障体制の構築を目指すということであれば、立憲民主党、自由党、社民党、共産党の間で共通の安全保障政策を共有出来るかも知れません。その場合、選挙協力だけでなく、政権交代後の安全保障政策も共有することが可能となります。


参照資料:
(1) "Nuclear Posture Review: US wants smaller nukes to counter Russia", BBC News, February 2nd 2018

(2) "Mike Pompeo, a Hawk Who Pleased the President, Moves From Spying to Diplomacy", The New York Times, March 13th 2018

(3) "Gina Haspel, nominated by Trump as first woman to lead CIA, has controversial past", USA Today, March 13th 2018

(4) "The Case for Offshore Balancing - A Superior U.S. Grand Strategy" by John J. Mearsheimer and Stephen M. Walt, Foreign Affairs, July/August 2016 Issue

(5) 「9条改憲案 自民『必要最小限度』削除 細田氏に一任」、毎日新聞、2018年3月22日

【来るべき南北首脳会談における南北間の経済協力進展の可能性と「一帯一路」、朝鮮統一について】

1. 韓国使節団の北朝鮮訪問と南北首脳会談開催の合意

平昌オリンピックによって醸成された南北対話ムードの中、3月6日、韓国の閣僚級使節団が北朝鮮を訪問し、北朝鮮の金正恩委員長と会談、南北首脳会談が4月末に開催されることになりました。

帰国した韓国使節団の発表によると、北朝鮮側は、これまでの立場を変更して朝鮮半島非核化の意思を明確にし、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がないと表明したそうです。

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先に、1月22日付の弊ブログ記事でお伝えしたように、南北間の話し合いの過程で、北朝鮮側から、朝鮮半島非核化の条件として、北朝鮮とアメリカの間の平和条約の締結、在韓米軍の撤収、アメリカの北朝鮮への不可侵の保証などの具体的提案があれば、アメリカや中国を加えた本格的な協議へ移行することが考えられます。

これまで、北朝鮮は、保有する核兵器は交渉の対象にはならないとしてきましたが、今回、北朝鮮が非核化の条件提示へと態度を変えたとすれば、話し合いを通じた問題の解決へ向け、大きな前進であると思います。

今後、4月末の南北首脳会談において、北朝鮮側から、より具体的な条件の提示があるでしょう。韓国側からも朝鮮半島全体の非核兵器地帯化の提案が行われるかも知れません。

また、北朝鮮は、韓国との対話が継続している間は、核実験および弾道ミサイルの実験を行わないとし、米韓合同軍事演習についても、例年通りの規模であれば、理解すると表明したそうです。

今回、北朝鮮が、アメリカに対する強硬姿勢から一転して韓国に対する積極的な対話姿勢へ変化した理由は、北朝鮮がアメリカ本土を攻撃出来る核兵器と弾道ミサイルの開発を完了したからです。

北朝鮮の移動式弾道ミサイルは、地下トンネルと山岳地帯に隠されており、アメリカは、たとえ核兵器を投入しても、軍事力を使って、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルを全て取り除くことは出来ません。そのため、もしアメリカが北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮は、アメリカ本土に対して核ミサイルによる報復攻撃を行うことになります。報復を恐れるアメリカは、北朝鮮を攻撃出来ません。

すでに北朝鮮が大気圏再突入の技術まで得ているかは不明ですが、もし得ていないとしても、北朝鮮は、アメリカ上空の大気圏外で核兵器を起爆し、「電磁パルス攻撃」を行うことが可能です。電磁パルスによりアメリカの電力網・通信網・経済システムが破壊され、最悪の場合、アメリカの全人口の90%が餓死すると予想されています。[1]

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たとえアメリカから先制核攻撃を受けても、報復でアメリカを壊滅させることが出来る能力得た北朝鮮にしてみれば、例年通りの規模で米韓合同軍事演習が行われても影響はないということなのだと思います。報復を恐れるアメリカは、いずれにせよ実際に北朝鮮を攻撃することは出来ないからです。そのため、北朝鮮は、アメリカの動向如何に関わらず、韓国との対話に集中出来ることになります。


2. 南北間の経済協力の可能性

なお、これまで、朝鮮半島情勢をめぐっては、軍事的な側面ばかりが焦点となっていましたが、4月末の南北首脳会談へ向け、今後、北朝鮮および韓国から、南北間の経済協力の面で、様々な提案が行われて行くものと思われます。

朝鮮半島西岸沿いには、韓国から北朝鮮へつながる鉄道路線が敷設されています。京義線と呼ばれます。この鉄道路線を整備・再開し、定期的な運行を実現すれば、韓国とロシア、韓国と中国、韓国とモンゴルが鉄路でつながることになります。さらに、ロシア、モンゴル、中国を経由して、韓国の釜山からヨーロッパまで鉄路が直結することになります。[2][3]

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かつて行われた南北間の経済協力は、韓国と北朝鮮の間だけにとどまり、小規模でした。鉄道の運行も、北朝鮮の開城工業団地とソウルの間だけでした。

これに対し、今後、南北間の経済協力が進めば、それは、中国が進める「一帯一路」と直結することになります。従来の経済協力と比較にならないほど大きな経済的効果が期待出来ます。

しかも、韓国はAIIB (アジア・インフラ投資銀行) 加盟国です。南北間の経済協力に関し、AIIBから韓国へ巨額の融資が行われるかも知れません。

さらに、韓国側から、朝鮮半島を貫き、ユーラシア大陸の太陽光発電・風力発電施設へつながる直流送電網の建設など、再生可能エネルギーの面でも提案が行われるかも知れません。[4]

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これらの提案を通じて、韓国国民の間に、南北協力による果実として、平和だけでなく、経済的なメリットもあることが広く認知されれば、韓国国民の南北融和への支持が高まることになるでしょう。

その場合、韓国の文大統領は、世論の支持を背景に、アメリカに対し、今後予定されている米韓合同軍事演習の規模縮小を提案出来るかも知れません。


3. アメリカと中国を加えた本格協議への移行の見通し

上述のように、南北首脳会談の過程で、北朝鮮から、朝鮮半島非核化の条件として、北朝鮮とアメリカの間の平和条約の締結、在韓米軍の撤収、アメリカの北朝鮮への不可侵の保証などの具体的提案があれば、5月以降、アメリカや中国を加えた本格的な協議へ移行することが考えられます。

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その際、本格的な協議は、6カ国協議となるかも知れません。あるいは、中国、北朝鮮、韓国、アメリカの4カ国の協議になるかも知れません。

本格協議の内容として、北朝鮮側からは、アメリカが北朝鮮と平和条約を締結すること、在韓米軍を撤収すること、アメリカが北朝鮮への不可侵を保証することなどが要求されることになると思われます。アメリカ側からは、北朝鮮が核兵器を放棄すること、北朝鮮国内における基本的人権の尊重を含む民主的措置の実施などが要求されることになると思われます。また、韓国から朝鮮半島の非核兵器地帯化の提案が行われるかも知れません。中国から北朝鮮に対し経済支援と「一帯一路」への参加の提案が行われるかも知れません。[5]

ただ、問題となるのは、現在、トランプ政権には、優秀な外交官がいないことです。アメリカ国内の国際協調派の優秀な人材は、トランプ政権への協力を拒否しています。そのため、トランプ大統領がアメリカ国内の国際協調派と和解し、優秀な人材を政権に迎い入れるか、あるいは、異例ですが、中間選挙以降、上院の外交委員会が、北朝鮮との協議を実質的に監督・主導することになるかも知れません。

トランプ政権での決着が難しい場合、本格協議が断続的に継続され、アメリカの次の政権で最終合意に到達することになるかも知れません。

(追記: 日本時間3月9日9時、北朝鮮を訪問した韓国大統領府の鄭義溶・国家安保室長と会談したトランプ大統領が、5月までに北朝鮮の金正恩委員長と会談することに同意したとの発表がありました。アメリカに軍事的オプションがない以上、話し合いしか問題解決の方法はありません。来るべき米朝首脳会談において、上述の本格協議の内容について、その大枠が合意されれば、北朝鮮問題の話し合いを通じた解決が加速されることになります。)

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なお、仮に平和条約の締結、在韓米軍の撤収となれば、その後の朝鮮統一へのロードマップも必要となってくると思われます。

東西ドイツの統一、南北ベトナムの統一が、ある程度参考になるかも知れません。東西ドイツの統一においては、冷戦にアメリカが勝利し、ソ連軍が東ドイツから撤収したあと、西ドイツの政治システムで統一が実現しました。南北ベトナムの統一においては、ベトナム戦争に北ベトナムが勝利し、アメリカ軍が南ベトナムから撤収したあと、北ベトナムの政治システムで統一が実現しました。

これに対し、朝鮮半島情勢においては、いずれかの側が勝利したという状況にありません。そのため、南北朝鮮統一においては、北朝鮮あるいは韓国のいずれかの国家制度で統一するのでなく、ゆるやかな連邦制を採用し、当面、北朝鮮および韓国のそれぞれの政治システムを維持したままでの統一を行うことが望ましいと思われます。中国およびアメリカが、それぞれ、韓国の民主制度の維持の保証、北朝鮮の政権の維持の保証を行うことが必要です。

その上で、北朝鮮が市場経済を徐々に導入し、韓国の民主主義制度が維持されれば、北朝鮮の平和経済への移行と南北間の交流を通じ、少しずつ北朝鮮に民主主義の諸制度が浸透して行くことになると思われます。

ちなみに、現在、中国の「一帯一路」政策は、北東アジアにも及び、中国、モンゴル、ロシアの間で、道路や鉄道網の整備が進み、経済的協力関係が進んでいます。北東アジアは、経済成長の大きな可能性を秘めています。[6]

韓国の文在寅大統領は、すでに中国の「一帯一路」政策を支持し、積極的に参加することを望むと表明しています。

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もし北朝鮮も「一帯一路」に参加し、経済復興が進めば、南北朝鮮統一へのハードルも下がることとなります。というのも、統一に反対する韓国国民があげる理由のひとつは、統一が実現した場合の経済的負担だからです。

そして、仮に南北朝鮮が統一すれば、「一帯一路」が、韓国南端の釜山にまで及ぶことになり、釜山から平壌、ウランバートルを経由してモスクワ、さらにヨーロッパまで陸路および鉄路でつながることになります。それは、通商・交易・金融・エネルギーを通じ、統一朝鮮に大きな経済的繁栄をもたらすことになるでしょう。逆に、それが、南北朝鮮統一への大きな経済的誘引となるでしょう。


4. 本格協議が決裂した場合

一方、もしアメリカがどうしても話し合いを拒否する場合あるいは本格協議が決裂した場合、事態は、アメリカの意向にかかわらず、中国、ロシア、北朝鮮、韓国の間で進展して行くことになると思われます。

中国とロシアも、朝鮮半島の非核化を目標としています。しかしながら、非核化の時期については明確にしていません。むしろ核保有国である中国とロシアは、北朝鮮が、これ以上核兵器と弾道ミサイルの開発を進め、核ミサイルの多弾頭化や大気圏再突入の技術を確立する事態だけは避けたいと考えていると思われます。

そのため、中国とロシアは、もしアメリカが対話を拒む場合には、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発を「無期限停止」することを条件に、北朝鮮に対する制裁を解除し、北朝鮮に対する経済援助と経済交流の再開に動く可能性があると思います。

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もし北朝鮮が条件をのめば、中国とロシアは、北朝鮮の核兵器および弾道ミサイルの開発を「無期限停止」させるとともに、北朝鮮を「一帯一路」に巻き込むことが可能となります。それは、「一帯一路」の進展と北朝鮮の経済復興につながります。

上述したように、もし北朝鮮が「一帯一路」に参加し、経済復興が進めば、南北朝鮮統一へのハードルも下がることとなります。というのも、統一に反対する韓国国民があげる理由のひとつは、統一が実現した場合の経済的負担だからです。

そして、仮に南北朝鮮が統一すれば、「一帯一路」が、韓国南端の釜山にまで及ぶことになり、釜山から平壌、ウランバートルを経由してモスクワ、さらにヨーロッパまで陸路および鉄路でつながることになります。それは、通商・交易・金融・エネルギーを通じ、統一朝鮮に大きな経済的繁栄をもたらすことになるでしょう。逆に、それが、南北朝鮮統一への大きな経済的誘引となるでしょう。


5. 謀略の可能性について

なお、南北間の融和、南北間の経済協力が急速に進展することを恐れるアメリカは、何らかの妨害工作を行うかも知れません。たとえば、韓国からアメリカへの輸出品に高額の関税をかけるかも知れません。

また、南北間の融和ムードを破壊する、何らかの軍事的衝突が発生するかも知れません。ただ、その場合、アメリカが直接北朝鮮と交戦するのでなく、日本が当事者となるかも知れません。

たとえば、日本の自衛艦が、北朝鮮への密輸品摘発のために海上阻止行動を行っている際、付近に現れた北朝鮮の軍艦から攻撃を受けたと誤認し、あるいは、誤認したとして、北朝鮮の軍艦との間で実弾射撃を交わすなどの事態が発生するかも知れません。

現在の安倍政権は、国会・国民の監視・コントロールを受けない全くの無法状態にあります。日本の民主主義の未成熟が、アジアの平和を阻害する危険性があります。


参照資料:
(1) US Congressional Report "North Korea Nuclear EMP Attack: An Existential Threat", October 12th 2017

(2) "Koreas-Russia Project: S. Korean Businesses to Visit N. Korea as Part of Pyongyang-Moscow Venture", BusinessKorea, February 10th 2014

(3) "Two Koreas, Russia Consider Building Railway Training Center", VOA News, July 7th 2014

(4) "KEPCO pushes for 'power grid' connecting S. Korea, Russia", Yonhap News, November 8th 2017

(5) "Understanding the North Korea threat" by Joseph S. Nye, The Strategist, December 7th 2017

(6) "North Korea and Beyond: An Alternative Vision of Northeast Asia" by Lyle J. Goldstein, The National Interest, December 28th 2017