【与党政権の残る手は、限られつつあることーその2】

8月19日、岩手県知事選挙に向けて野党5党代表が盛岡に集結、安保法案廃案へ向けて結束して行くことを表明しました。[1]

すでに、野党5党が結束して推す現職の達増拓也岩手県知事に対し、自公推薦による立候補を予定していた平野達男元復興相は出馬断念を発表しました。地方選挙での敗北が安保法案に及ぼす影響を恐れた安倍政権から平野氏へ出馬をやめるよう圧力がかかったと報道されています。安倍政権は、そこまで追い込まれています。[2][3]

また、それに先立つ仙台市議選では、野党候補が与党候補に対し圧勝しました。安保法案に反対する国民世論が、地方選挙における力関係の逆転となって現れ始めています。

安保法案を廃案に追い込むためには、安保法案反対の地方議会決議を始めとする、安保法案反対の声が全国の県市区町村に拡大し、中央政府を圧倒することが、決定的な威力を持ちます。

というのも、国会議員のみなさんは、地元の有権者の声にきわめて敏感であり、地元有権者から与党離れの動きが出れば、与党議員は、一気に浮き足立つからです。地元で突き上げをくらえば、与党内からも、安保法案先延ばし、安保法案廃案の声が出始めることが予想されます。その場合、たとえ与党が圧倒的多数の議席を有していても、安保法案の可決が出来なくなります。

現在、安保法案は、参議院において審議が行われていますが、国会前での抗議行動の激化、全国各地における安保法案反対の声の拡がり、安倍内閣支持率の低下、等々の結果、安保法案は、必ず廃案になると思います。

安保法案を、原案のまま、参議院で可決すること、あるいは、衆議院で再可決することは非常に難しくなりつつあります。再び強行採決したら、安倍政権の支持率は地に堕ちるでしょう。

与党政権にとって残る手は、野党との修正協議に限られてきます。

しかしながら、小野次郎安保調査会長を始め、対案を提出した維新の党の参議院議員には、リベラル派が多く、修正協議に応じる可能性は低くなっています。

仮に橋下大阪市長が再び介入し、維新の党を強引に修正協議へ参加させようとすれば、党内タカ派(大阪系議員)と党内リベラル派(結いの党・民主党出身議員)の対立が先鋭化し、維新の党が割れることにつながるでしょう。

そうなったら、たとえ自公と維新タカ派(大阪系)との間で修正協議が行われても、事実上、強行採決と同じです。分裂してタカ派一色となった維新の党(大阪系)と自公が修正協議しても何の正当性もありません。国民に見捨てられるでしょう。

最後の手は、維新案の丸呑みに限られてきます。しかしながら、安倍政権が維新案を丸呑みすると、昨年の集団的自衛権を容認する閣議決定とは似ても似つかない要件を受け入れることになります。1年以上におよぶ議論は、一体何だったのかということになります。その結果、安倍首相は、党の内外において求心力を失うでしょう。

修正協議が成立せず、安倍政権が安保法案原案のままで突っ走った場合、参議院での採決および60日ルールに基づく衆議院再採決において、与野党の議席数の差は僅かです。参議院の採決においては与党議員のうち12人、衆議院再採決においては与党議員のうち13人が反対すれば、安保法案の否決が可能です。安保法案否決の現実的可能性があります。秋の総裁選を見越し、自民党内の他派閥からの造反・棄権も考えられます。

安保法案が否決されれば、安倍内閣は即死です。安保法案を廃案に追い込むことは、安倍内閣倒閣に直結します。


参照資料:
(1) 「安保関連法案 野党5党首が成立阻止に協力」、日本テレビ 2015年8月19日

(2) 「<平野氏不出馬>安保逆風、不戦敗選択」、河北新報 2015年8月8日

(3) 「自民党が不戦敗 平野元復興相が岩手知事選出馬断念」、日刊スポーツ 2015年8月8日