本田は飲食店基礎講座を受講し講師の榊先生から様々な事を学びました。
そして自身にもチームにも必要と思われるリーダーシップについて詳しい
社内のある人物に話を聞きに来ていました。
第30話:リーダーシップの基礎①
本田承太郎は自社の人事部部長「倉持」に
自分の部下である前田と共に話を聞きに来ていました。
「部長お久しぶりです」
そいう言うと本田は親しそうに倉持部長と話し始めました。
倉持部長は女性ながら45歳で人事部をまとめる部長職で、
本田承太郎が入社する時に採用面接を行った事から
社内では何かと相談をしてきた仲でした。
「今回新しいプロジェクトを始めることになりまして・・」
そう言って本田はこれまでの経緯を話し始めました。
倉持は新規入社の新卒試験や研修、
現社員の編成などを取り仕切るリーダーです。
そう言った経験が豊富な倉持に
自分達に必要な教育スキル・リーダーシップなどを
本田たちはアドバイスを貰いに来たというわけです。
「本田君、聞いているよ。藤森部長とやりあったそうね、
真っ直ぐなところはあなたの良いとこだけど早く上がって来なさい。
色々と違った景色も見えると思うよ」
と、倉持は意味深な事を言っていたのが
部下の前田には意味が分からず印象的でした。
倉持は一通り話を聞いたところで、
前田に質問します。
「前田さん、リーダーや店長に必要な条件ってなんだと思います?」
榊先生の言葉が思い浮かんだ前田はピンと来て
こう答えました。
「店長には決まった条件がなくて不明確なものです。」
「そうね、では会社が求める店長やリーダーの姿ってどんなものか解る?」
「・・・解りません」
「会社が最も大事にしていて求めているのは利益です。
仕事は慈善事業ではないし、有意義なものだけではありません。
例え、社会的に貢献できるも職種であっても
仕事であれば利益を求めなければならないのが会社というものなのです。
この、絶対条件を理解して考えるとある定義が成り立つのよ」
「企業が求める管理職、例えば店舗責任者であれば、
人や物資、資金を潤沢に流用してスタッフを歓喜させ
最大の利益を得ることが出来る人間を求めているんです。」
「なるほどです~」
「でも、本当にリーダーに大事な事はそんなことでは無いのよ」
「何なんですか?」
「簡単に言うと、自分が腹を切る覚悟があるか?ということなのかしら」
「どういうことですか?」
「まず、責任者の仕事というのは責任を取ることが仕事なのだけど、
うちの会社にも責任を逃れたい人がいっぱいいるのと同じように
役職の地位や権力にかまけて責任だけ取りたくない人に育っている人も多くいるのよ」
「確かにそんな瞬間を目の当たりにしたら
私たちヒラならちょっとヒキますね。」
「うちの事業でも物販部門で店長をやっている人間がいるけど、
いつも教えるのは自分が盾になる覚悟を持つ事を重要視してるの」
本田
「倉持部長、具体的にはどういう事例で言ってるんですか?」
「そうね、これは実際に起きた事例なんだけど、
例えばお店であるお客さんが暴れだしてお店の商品が壊されたらどうする?」
「弁償してもらいます」
「だけど、実際にはそのまま暴れたお客さんを帰してしまったのよ」
「何故なんですか!?」
「その暴れたお客さんがちょっと酔っ払ったまま買い物に来てたのか、
まわりの一般のお客さんに絡み出してしまったのよ。
それでその時の店長は何とか収めようと
止めに入るけど絡まれた方も逆上しだして収まらなくなってしまって
仕方がないので引き離して落ち着かせるうちにうやむやに
なってしまったという訳」
「実際に店長とアルバイトだけの体制で営業してて
他のお客さんに謝ったり上司に連絡したりしてたから暴れたお客さんの
連絡先や対応も不十分だった事から後で弁償代を回収する事ができなかったそうなの」
「つまり、店長がパニックになって対応ミスしたという事ですか?」
「それだけじゃなく、アルバイトへの
こういった場合の対処法や連絡系統が確立されていなかった事も
損失を生み出した原因としてその時の直属の上司は処分されていたわね」
「結局、自分のせいじゃないと言ってその時の店長は
会社に対して不満を漏らして辞めてしまったのよ」
前田
「じゃあどうすれば良かったんですか?」
「そうね、
こういう事例の時はこうするってケーススタディすることだけじゃ
店長という責任のある立場では事例が多すぎて混乱しそうでしょう?」
「そうですね」
「だから、考え方をまとめてイザという時に思い出し易いように
自分が盾になる。腹を切る覚悟を持てって簡潔に教えるようにしてるのよ」
「実際本当に自分が犠牲になれと言うわけではなく、
対応する時に勇気がいる行動、自分が責任を持って何かを守る行動を取ることが
店長としての役割になるんじゃないかということなの」
「例えば、今回の損失はお店の商品が破壊されて損失が出ているわよね?」
「これに対しては警察を呼ぶ。という行動が必要でしょう。
でも、その時の店長は近所の評判や自分の責任下で警察沙汰は嫌だったと言ってたの。
それにアルバイトに対してもなんのリスクマネジメントを教えていなかったから
事件当時はバイトの子も呆然としてて後で聞くと
実は暴れたお客さんに2発殴られていたそうなのよ。
店長が冷静で従業員や商品、まわりのお客さんを守る行動を正解とするなら
早めに警察を呼ぶべきだったということなのよ」
「例え、上司に怒られようと商品の損失を守ったり、
スタッフやお客さんを守る行動は後に評価されるはずなのに
プライドや恐怖が邪魔をして、それに覚悟が出来てないせいもあって
最悪の結果になってしまったという事なの」
「まとめるとポイントは、
会社にとっての損失は商品
お客さんにとっての損失は暴れた人からの危害
スタッフにとっての損失は殴られたこと」
「これに対して店長が取る行動は
スタッフに指示して警察と上司に連絡し
お客さんと暴れた当事者を隔離して確保する事
できれば防犯カメラや写真で破損した商品や備品を撮影」
こういう事が色んなパターンで起こっても臨機応変に対応出来る為に
「自分が盾になって守る」という事を忘れないで欲しいと
倉持は前田に教えました。
前田
「でも私は自分の身が大事で怖いです」
倉持
「そうね、私も怖い気持ちはあるわよ。
それに自分の身を守ることも本当に大事なことなのよ」
「自分の守り方は考えなくちゃいけないかもしれないわね、
女性でも直接喧嘩して殴られたりするケースもあるから
すぐに警察が呼べる体制を作るとか、近所に応援を呼べる体制を作っておくとか」
「それに本田君とか頼れる上司がいるんだから
それを使わない手はないでしょう?」
「それもそうですね」
そして本田承太郎はこの事例がリスク管理の話ながら
利益や安全を守る行動、「覚悟」が
リーダーシップに大事な事だと理解したのでした。
「本田君、じゃあリーダーの心得って何でしょうか?」
本田承太郎はこの後の倉持の話で
リーダーシップにも色々ある事を理解していく事になったのでした。
つづく
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