6月28日(日)は、吉祥寺 古典を読む会の定例会でした。今回は「『蜻蛉日記』に吐露される妻の嘆き」。
23回目にして、初めて取り上げた『蜻蛉日記』。実は、個人的に1番好きな作品なのです 語りにもいつも以上に熱が入っていたのではないかと思います。
好きなシーンはたくさんあるのですが、何回読んでもニヤニヤしてしまうのが「石木(いわき)のごとく」。ちょっと、引用しますね
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【中巻】
筆者(藤原道綱母)のもとに、夫・兼家はなかなか訪れない。ある日、兼家から、無沙汰を詫びる手紙が届く。つむじを曲げた筆者は「具合が悪い」とだけ返すが、そのようなことを、ものともせず、兼家は筆者宅にやってきた。
筆者(藤原道綱母)のもとに、夫・兼家はなかなか訪れない。ある日、兼家から、無沙汰を詫びる手紙が届く。つむじを曲げた筆者は「具合が悪い」とだけ返すが、そのようなことを、ものともせず、兼家は筆者宅にやってきた。
(原文)あさましと思ふに、うらもなくたはぶるれば、いとねたさに、ここらの月ごろ、念じつることを言ふに、いかなるものとだえて、いらへもなくて、寝たるさましたり。聞き聞きて寝たるがうちおどろくさまにて、「いづら、はや寝たまへる」といひ笑ひて、人わろげなるまでもあれど、石木(いはき)のごとして明かしつれば、つとめて物もいはで、かへりぬ。
(現代語訳)「(具合が悪いと言ったのに図々しく来るなんて)あきれた」と思っていると、兼家は、悪気もなくふざけているので、とても嫌な気分になって、数ヶ月の長きにわたってこらえてきた不満をぶつけると、兼家はぱたりと黙り込んで、返事もしなくなって、寝たふりをしていた。
そして、話を聞きながら寝入っていた人がふと目覚めたかのような様子で、「おやおや、もう寝てしまっているの」などと笑って、見苦しいほどまで戯れかかってくるものの、私は岩や木のように身を固くして過ごしたところ、兼家は翌朝、何も言わずに帰った。
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そして、話を聞きながら寝入っていた人がふと目覚めたかのような様子で、「おやおや、もう寝てしまっているの」などと笑って、見苦しいほどまで戯れかかってくるものの、私は岩や木のように身を固くして過ごしたところ、兼家は翌朝、何も言わずに帰った。
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イチャイチャしてごまかそうとする兼家と、意固地になって拒む筆者。文面を読む限り、確かに筆者は怒っているのですが、「もう! あの人ったら!」という感じの、憎み切れない気持ちを感じてしまうのは私だけでしょうか。
さて。
次回、7/12(日)『万葉集』の回をもって、会も2周年。1周年の際に「吉祥寺 古典を読む会」の1年目の活動を収めた年報「彩」を制作しましたが、今年も作ります!
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◆参加資格:吉祥寺古典を読む会 定例会に1度以上参加した経験があること
もしくは 年報「彩」を通販などで購入したこと
◆エッセイテーマ:私の好きな古典の人物(登場人物でも筆者・作者でも構いません)
◆字数:自由(400字~3000字程度だとありがたいです)
◆〆切:7月12日(日)の定例会まで
◆提出方法:メール(yukoyoshida.infinity[アットマーク]gmail.com)の本文もしくは添付ファイル、定例会での手渡し
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こちら、完成は8月下旬~9月上旬を予定しています。参加者には、定例会で配布もしくは郵送いたします(無料)。ふるってご応募くださいませ
★これまでの著書…『美しい女性(ひと)をつくる 言葉のお作法』(かんき出版)、『頭をよくする整理のしかた』、『人生が変わる読書術』、『正しい日本語の使い方』、『大人の文章術』、『源氏物語を知りたい』、『東大生の超勉強法』(枻出版社)など。産業能率大学総合研究所の通信講座『文章力を磨く』のテキストも執筆いたしました。
★都内の大学受験塾に勤務する他、NHK学園 市川オープンスクール・産経学園 新百合ヶ丘校で古典入門講座を担当しています。また、月1回開催の古典サークル「吉祥寺 古典を読む会」も主宰しております。