新編日本古典文学全集 (31) 栄花物語 (1)/小学館


この2月で19回目を迎える「吉祥寺 古典を読む会」、今月のテーマは「『栄花物語』から読む定子 悲劇の人生」でした。


定子は、藤原道隆の娘で、一条天皇の中宮となりました。実家 中関白家の没落、道長の台頭により、非常に苦労をしたであろう人です。

例えば、兄弟の伊周と隆家を捜索する際、定子も在宅する中で、屋敷が荒々しく破壊されたこと。

兄弟の逮捕に動揺した定子が、思わず自らの手で髪を切り出家したこと。

日ごろ、政治の安定運営を心掛ける冷静な一条天皇が、一人の男性として、どうしても定子を手放せなかったこと。

定子が初めての男児を産んだまさにその日の夜、一条天皇は道長の娘 彰子との婚儀にのぞまねばならなかったこと。

三人目の子を出産した後で亡くなると、部屋から遺言めいた和歌が三首発見されたこと。

そうしたエピソードの1つ1つは、もはや小説のよう。彼女の数奇な運命を紐解くと、いつも「事実は小説よりも奇なり」という言葉が浮かびます。


そうした定子の人生の悲劇の一面をよく伝えるのが『栄花物語』です。『栄花物語』は、『大鏡』と違い、編年体で綴られている分、刻一刻と定子が追い詰められていくのがよく分かります。一つ一つ、時系列で語られる出来事には、逃れえない悲劇の運命を思い知らされる思いです。

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いつになく、歴史の授業めいた回でしたが、おおむねご好評いただいたようで良かったです。頂戴したご感想はいつもながらバラエティに富んでいて、拝読するのが楽しかったです。


「『栄花物語』は初めて読みました。不遇と思える生涯の定子ですが、辞世の歌が愛に満ちていて幸せだったと思いました。来月の女房目線での定子が楽しみです」

「定子から学ぶことも多く、定子のことが残っているというのは、残るべくして残ったという感じがします。今日も、先生と古典の神様に感謝です」

「久しぶりに受講させていただき、至福の時を過ごしました。人物像がいきいきとしていて、まるで生きていらっしゃる方々のようでした。少し『栄花物語』を読んでみようと思いました」

「とても楽しい授業をありがとうございました。平安時代の人々も現代の私たちと同じように、言い訳をしたり、恋愛をしたり、嫉妬したりしていたのだなと思い、おもしろいなと感じました」

「伊周・隆家の様な兄弟がいると、迷惑ですね。なるべく家族の迷惑にならずに生きていたいものです」


ご参加の皆様、ありがとうございました。


来月は、今回の続編ともいえる企画です。「『枕草子』に読む定子の輝き」と題し、定子のキラキラした側面を取り上げたいと思います。不遇の状況下でも、明るさや笑いを忘れなかった定子サロンの凛とした美しさを感じたいと思っています。私自身とても楽しみです。


>> ご参加希望の方はこちら(吉祥寺 古典を読む会)から。


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都内の大学受験塾に勤務する他、隔週月曜13時に東急セミナーBE古典入門講座を担当しています。また、吉祥寺 古典を読む会も主宰しております(3月15日(日)14時「枕草子に読む定子の輝き」)。