「安部譲二」「阿部錦吾」を語る(その3) | なんでも書いちゃってます

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さて・・・なんとか

私・・
「安部譲二・本名(直也)通称(直)」は

「阿部錦吾」の舎弟となり中学生の身ながら
住み込み修行が始まりました、

この私の親分にあたる「阿部錦吾」ときたら・・・

履歴書を書けば裏表でも足りないぐらい前歴があり、
しかも必ず何行目かに、

【元・日劇タップダンサー】という
 

 ヤクザに似ても似つかぬ前職が記されているんです

酔うと小柄な体を黒人ダンサーのように
柔らかくくねらせながらタップを踏み・・・

実に鮮やかに決まっていく、 

とてもヤクザの兄いとは思えない
日劇で観客に銭を取って演じていた芸だけに
素晴らしかった、しかし14歳の私を


ヤクザとして仕込んだ
 
「阿部錦吾」は
嫌なヤクザの典型でした!

情けないくらい口うるさくて、

おまけにケチンボウで

私に小遣いを1円だってくれたことはありません、

私が食堂でホクホクの煮魚と熱い味噌汁の
定食を食べていると横に座り

「飯」と言って「飯」だけ注文し

私の煮魚と味噌汁をペロリとたいらげてしまうんです、

もう腹がたつやら、情けないやら・・・

 
ケチのくせして、

一丁前に見栄っぱりなとこがあり

家の前の道路掃除をやらされる・・・

「よし家の前が終わったらお隣さんの前も掃除しとけ」

 「ハァ・・・


「隣が終わったら、その隣もだ」

「ハァ?


結局・・・町内会全部を私一人でやらされてしまう、

もうたまったもんじゃない!

私は毎日何かに取り憑かれたように
掃除をしまくりました!

手抜きをしようものなら私の両頬に
 
「阿部錦吾」の拳が炸裂する!

渋谷の喫茶店での一件から一年、

そんな事ばかりさせられていた私は
麻布中学三年になっていた・・

昭和27年、夏祭りの会場で
5~6人のテキ屋を相手に
一戦交える騒動を起こした・

多勢に無勢たちまちボコボコに叩きのめされた

「チキショー」

私は近くの寿司屋に飛び込み
出刃包丁をつかむと再び反撃にでた、

一人を斬った・・・少年院送りを心配した両親は
私をイギリスに逃がしてくれた


ロンドンに留学・・・といえばカッコいいが逃亡である、

リッジウェイス・スクールという
名門校の寄宿舎に転がり込んだ、

退屈な日々を送っていたある日・・・
 


「阿部錦吾」から手紙が届いた・・・

どこかの代筆屋に頼んだに決まっている、

物凄い達筆でコクヨの便箋に

【まだ未熟ではあるが、
今度お前を身内に加えてやることになった、
ついては異国にあっても

一家一門の名を穢す事のないように
勉学と渡世に励め】・・・

と大真面目な調子で書いてあった・・・

日本を遠く離れイギリスの地で
少々心細い身の上の私は
不覚にも涙をぼろぼろ流しながら、

この大嫌いな自分の親分である
 

「阿部錦吾」の手紙を何度も何度も読み返したものです、

寄宿舎をわずか四ヶ月で私は追い出されてしまった

その訳はイタリアから留学していた女の子と
素っ裸でいちゃついていたのを
舎監に見つかったからです

再び日本に舞い戻り

「安藤組」阿部錦吾の舎弟という、
今思えば懐かしいような・・・

けど悲しく苦しい生活が始まりました

民放の白黒テレビの放送が始まった頃・・・
どこで どうして手に入れたのか・・・

現金をはたいて手にいれたものじゃ無い
ことだけは確かだが、

テレビを一台抱えて帰ってきた、

まだ一般家庭に普及してない時代だ!

気難しい顔をして腕組みをしてテレビを見ている
 

「阿部錦吾」の後ろに座り私もテレビを見ていた

「直や お茶が入ったわよ」と姐さんの声・・・
姐さんは
 ,
「阿部錦吾」とは違って
私を優しく大事に扱ってくれた

「すいません いただきます」とお茶に手を出すと
途端に
「阿部錦吾」に怒られる

「おい!母さん直は番茶でいいんだ
煎茶なんざ~10年早い」・・・

かと思えば・・
いきなり私の頭をポカリと殴る

「何するんですか?」

「何じゃねーバカヤロー
お前はテレビ見るのにただポカント口を開けて
喜んで見てる、心得がねえんだよっ!」

心得がないと言われたって、
いったい錦吾が何を言いたいのか
さっぱりわからない!

「お前!コマーシャルをどんな心積もりで聞いているんだ・・・

<ワッワッワーぁ輪が三つ>だとか

<カステラ一番電話は二番・・・>だとか

<週間新潮は明日発売されまーす>だとか

いろいろと広告があるだろう」と言う、

そのくらいの事はわかっている・・・

いったい何を言いたいのか少しもわからない

「ヤクザというものはな
テレビのコマーシャル一つだって
お前みたいにニタニタしながら気を許して見てちゃいけねえ

どう考えたってイチャモンのつけようがないものに向かって
無理に無理を重ねた理屈をつけて
人様の懐を餌にして生きる!

それがヤクザというもんだ、

カステラ一番電話は二番・・・ときたらだな、

俺はお前と違うぞどんな理屈なら
相手に噛み付く事ができるのか
揚げ足をとる事ができるか

その訓練を俺は頭の中でやりながら
テレビの前に座ってる、

だのにお前は何だ!バカヤローせっかく
勉強の材料が目の前にあるというのに
ポカンとただ見てるだけだ」

と言ってはポカリと殴る

こっちは たまったもんじゃねえ!

馬鹿馬鹿しい私はそんな努力空しいと思うんです

ヤクザは漫才師ではありません、

テレビのスポットCMに向かって
いちいち機関銃みたいに吼えていたら
それこそアホです!

しかしそんなこと口に出したら
それこそ頭も顔もボコボコに殴られますから黙っています、


「阿部錦吾」もあれだけ殴れば
自分の手だって痛いと思うぐらい
私をよく殴ったのはその凶悪な性格によるものですが

それ以外にもう一つ理由がありました

私をボクサーと見ていたからです

人前でもどこでもすぐに殴るので
他のヤクザが心配して止めに入っても・・

・「こいつは拳闘家だから蚊に刺されたほども痛くはないんだ」

なんてこと言うんだ確かにボクサーやってたが殴られれば痛いに決まってるのに・・・


ボクシングの試合を終えて帰ると

「おい!直!勝負はどうだった」

「はい!今日は運が今一でした」と言うと 

すかさず ポカリと殴られる

「直!お前が負けるって事は
兄貴分の俺が恥をかく事なんだぞ」

私にしてみれば試合で殴られ
兄貴に殴られ二重のダメージです、

<何言ってやがるんだ王子体育館の観客が
「内海竜夫・リングネーム」が負けたからといって

「安藤組」の

「阿部錦吾」の恥なんて思う人は
誰一人いやしねえよ!>

あれはもう殴るのが趣味としか思えないような
手の出し方でした!
 

 


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