「おや。これはこれは、誰かと思いましたら……。誰でっか?」

「システム事業部統括部長の長岡です」

「おお、これはこれは、せいやんやないかあい」

「せいやん?」

「そやかて、長岡誠司はんでっしゃろ、お名前。せいやんでんがナ。ほたらなにか。あんたトメ公か?」

「トメ公ではありませんが……。コホン。実装者さんに、そう馴れ馴れしく呼ばれるほど入魂の間柄ではないように思いますがね」

「またまた。他人行儀な」

「他人です。ところで実装者さん。お煙草吸われますよね。あれ、なんとかなりませんか?」

「なんとかとは?」

「本心を申しますと、きっぱりやめていただきたいところなのですが、個人の嗜好の問題なので、強制はできません。そこで、就業中に煙草を吸われる回数を減らすなりなんなりできないものかと思いましてね」

「そらあんた、無理っちゅうもんですワ。ワタイから煙草を取ったら、なあんも残りまへんさかいね。ぶっちゃけ、ずうっと煙草を吸うてるワケにゃまいりまへんので、時間潰しに仕事してるてなモンでやっさかい」

「……。その、売れない上方落語家のような喋り方も、なんとかしていただきたいのですが。イラッとくるときがありますから」

「システム事業部統括部長の要職にありながら、モノゴト分かってまへんナア。関西ではね、落語家やのうて、噺家ちゅうんでっせ。……ちょっとせいやん。そなして、ゲンコツをきつう握り締めるの、やめてもらえまっか。ハァーって、ゲンコツに息吹きかけたらあかん。やめて」

「やめるのは、あなたの煙草でしょうが! だいたい、席を外したら小一時間戻ってこないとは、どういった料簡なんですか!?」

「そない怒らんといてえナ。ここんとこ暑ぅおまっしゃろ。暑いときには葉巻。こら日本の、常識ですわナ。ちゅうことで、『葉巻キャムペイン』実施中なんです。ご案内の通り、葉巻一本吸うには、そらたいそな時間がかかりまっさかい」

「一日一本ならいいですよ。お昼休みとかね。一体全体、就業中に何本吸うのです?」

「おかげさまで、コンスタントに四本、灰にさせてもろとりま。ああめでたやな、めでたいことで払うなら♪ あコリャ」

「気持ちの悪い手踊りしないでください! 一日の就業時間は八時間でしょう。となるとあなた、半分はあなた、煙草休憩ということになるじゃありませんか!」

「システム事業部統括部長殿は煙草飲みはらへんさかい、お分かりにゃならんでしょうけど、こないめえて、煙草吸うとうおりも、ちあんと仕事のこと考えてまんのやデ。ずうっと考え続けても、答えの見つからん問題があるとしまっしゃろ。そんなおりあんた、一服煙草を吸いつけるやいなや、アズスンナズポシボー、がちゃこんと脳内歯車が切り替わって、まさに神の啓示の如く解決策がしらめくことが、往々にしておまんねんしぃ」

「しぃ、じゃないです。実装者さんの場合、せっかく解決策がしらめいても、あまりにも喫煙時間が長すぎて、席に戻ってきたときには、すっかり忘れているじゃありませんか」

「いやあ、それをゆわれるとツラい」

「ボリボリ頭を掻かない! フケが飛び散ってますフケが。いいですか。喫煙時間を現在の、最低二十分の一にしてください。これは業務命令だ!」

ちゅうことで、えらい長い前振りでしたけれど、本日はこれです。

アルカポネ

『アルカポネ・ポケット・フィルター・アイリッシュコーヒー』

独逸帝国製。十本入り、三百九十円です。

アルカ・ポネテキは、シガレット感覚で吸えるミジェット葉巻の名品で、隠れファンのお人も多いんと違う?

今回はそのラインナップの中の、コーヒー味のやつを買うてさんじましたの。

なあんし、フィルターがついてまんので、めちゃマイルドでっせ。

「葉巻て、いっぺん吸うてみたいけど、キツイんやろ。ゲホゲホしたら嫌やナ」

と、敬遠なすっとうおかたにお奨めです。

下手したら、シガレットより早うのうなるしナ。

なあシステム統括本部長殿、これやったらあんたも文句なしやろ?

【追記】
これは、アルカ・ポネテキだけに限らず、ミニシガリロ全般に言えることなんですけど、中盤を過ぎますと、キツうなる前にケブリが熱くなりすぎて、吸えんようになってまいます。

キセルや、シガレットホルダーやみなにプチュッと挿して、お吸いになることをつおく推奨させてもらいますワ。

でないと勿体ないさかいナ。