昨日今日もハノイでてんやわんやあった、日本と中国の関係の中で、急速に注目を集めているのがレアアース。そして、ちらっと見た週刊ダイヤモンドで見つけた中づり広告(これを見るアプリがあるんですねぇ、それもビックリ!)であったのは、「レアアースの次はリン!?」という記事。これに触発され、今日は書いてみようと思います。

 まずは、その記事の内容:日本はリンを完全に輸入に頼っていて、その内中国は3-4割。ところが、中国がその輸出を渋り始め、リンの価格も上昇傾向、この10年で3倍以上になりました。リン鉱石の生産量では中国が34.8%でトップ、埋蔵量はモロッコに次いで23.1%で第2位ということ。新興国の人口増加とそれに伴う食糧生産圧力で、今後の価格も引き続き上昇傾向になる中、もし中国がリンの輸出を規制し始めたら・・・という感じでした。同紙のHPには、2008年に中国が100%の輸出関税をかけたことも紹介されており、既にそういう措置をとる可能性はあることを示唆しています。

 実は以前にも類似の、その時には中国のカリ肥料原料確保に関してのブログを書かせてもらいました。この記事でもあったPotashCorpの買収話は、今のところ引き続き進展がないよう(新華網日本版記事参照)ですが、その際にもリン鉱石において同様な状況が起きるかも、という風には言及させて頂きました。いずれにせよ、中国は早々と化学肥料原料を重要資源と認識して、その確保に動いていたようであるというところです。何だかんだ言ってもまだ農民が多い中国、これらの安定供給ができないことは、国家運営としても経済運営とうしても死活問題ということなのでしょう。もちろん、国有企業なんてものが多くあるわけではない日本に、同じような動きをとることはできませんが、中国はこういうところへの動きは速いと感じられるところです。

 ただ、こういう資源議論の際に思うのは、数少ないということは分かっている希少資源を取り合いに行けば、最後には札束の叩き合い、或いは勢力(軍事力含む)の張り合いになってしまいますが、それだとゼロ・サムゲームであることは明白です。

 それよりは、それらを代替していく、或いは使用量を減らしていくというのは、実は本質的であるべきですよね、特に日本にとっては。石油ショックの歴史的総括にも、結局は省エネ技術への大きな転換というものが大きく入っているのが物語るところです。例えば化学肥料の使い方にしても、もちろん当面の、或いは必要量の確保のための資源確保は必要ですが、同時に化学肥料使用量の削減、或いはそれに頼らない農法の改良、こういったところで戦った方が、日本が得意とする「技術力」での勝負に持っていけます。そして、ひいては省エネ、環境保全型農業へもつながる、ウィンウィンの出口が見えるのではないでしょうか。

 そう考え、もう少し農業の方からみてみると、リン肥料の利用効率という問題もあるそうです。自分がいつも勉強させて頂いている西尾道徳先生の環境保全型農業レポートによると、中国、そして日本も世界の中でリン肥料の利用効率が低い国と指摘されています。日本などは火山灰土などのリンを難溶化しやすい土壌が多いなどの賦与条件の違いがあるようです。世界に占める農地面積の割合が高い中国、インドもその使用効率が低く、こういった国で使用効率を上げていくことが、非再生資源であるリン、60-130年で枯渇すると言われるリン鉱石という現実を踏まえると、非常に大事なことだとしています。

 こういうことをきっかけに、資源の安定的な確保と同時に、化学肥料も含めた農業のあり方についても議論が深まれば良いなあ、そんなことも考えさせられた、リン肥料の記事でした。

 追伸:ちなみに、週刊ダイヤモンド紙HPには「今度は漢方も?」という記事も・・・。レアアースをきっかけに議論が深まっていると評価すべきか、それとも何か今は「レアアース」って言っておけば記事になりそうと感じるか・・・、ともかくそういうくらいレアアースの勢いですね(笑)。