Tue 161213 ヴィラ・イジェア/モンデッロ/旧チャールストン/スイカ(シチリア物語38) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 161213 ヴィラ・イジェア/モンデッロ/旧チャールストン/スイカ(シチリア物語38)

 以上のようなスッタモンダの連続をものともせず、無事にワタクシはシラクーサからパレルモに帰還したのである(スミマセン、昨日の続きです)。

 何がコワかったと言って、やっぱりこの日の「暴走タクシー」。大声でわめきながら対向車線を猛スピードでブッ飛ばし、別に追い抜かなくてもいいクルマを次々と追い抜く様は、「アンタは中年のジェイソン・ボーンかい?」と、思わず問いかけたくなるアリサマだった。

 しかも諸君、ヴィラ・イジェアのエントランスで、彼はワタクシに固い&固い握手を求めてきたのである。おやおや、機嫌が悪かったんじゃないのかい? 「我々が勝利をつかみ取ったのは、お互いのチームワークが原動力だ」。まるでスポ根ドラマみたいに、オジサマは勝利の熱い笑みを浮かべるのだった。

 その勘違いを振り切るためにも、出来ればいったん部屋に入って、激しいカーチェイスに熱した頭を冷やしたかった。しかし諸君、さすがに「ルキノ・ヴィスコンティの映画の舞台」は、そのへんのチンケなホテルとはワケが違う。

 今井君がちょっとやそっとスゴんでも、「まだお部屋の準備ができてません」の一点張り。「荷物は預かりますから、午後3時まで待っていただきます」。うーん、何の権力も後ろ盾もないワタクシには、それ以上どうにも頑張りようがないのである。
モンデッロ
(パレルモ近郊、モンデッロ海岸の風景)

 ま、致し方ない。今すぐ部屋に入りたいのは山々だが、ここは100歩譲って「モンデッロまで行ってきます」とフロントの女子に告げた。モンデッロは、パレルモ近郊で最大の海水浴場。モンデッロまで出かけてランチでも楽しんで帰れば、チェックインの15時はカンタンに過ぎているだろう。

 ホテル前から乗ったタクシーの運転手さんは、さすがにウルトラ紳士である。そりゃそうだ。駅や空港から、ないしは2流のホテルから、そういう乗り場でタクシーをつかまえれば、ネロネロおじさまも暴走おじさまもいらっしゃる。

 それに対して諸君、パレルモ貴族が次から次へと闊歩するヴィラ・イジェアだ。タクシー運転手さんの紳士ぶりだって群を抜いている。その優雅な運転は、「これがおんなじパレルモですか?」と問いかけたくなるほどのものであった。

 ただし諸君、今井君がタクシーを利用したのは「ポリテアマ劇場前」までである。モンデッロまでは、ごく普通のパレルモ市営バス、806番バスで行く。

 ホントはタクシーで乗りつけたいし、タクシーで乗りつけさえすれば、モンデッロの人々もそれなりに今井君を大事にしてくれるはず。でもそんなことをしたら、旅の醍醐味が台無しだ。
バス
(シラクーサからパレルモに到着したバスは、すぐにトラーパニに向かって出発する)

 ポリテアマ劇場前からモンデッロまでは、ホントのホントの「市バス」が、20分おきだか30分おきだか、マコトに頻繁に走っていて、こんなに頻繁に走られたんじゃ、豪勢にタクシーで乗りつけるのが恥ずかしくてならない。

 夏の陽が正面から照りつける停留所で、十数分バスを待った。何しろここはシチリアだ、気軽に「十数分」と言っても、降り注ぐ紫外線はたいへん危険な分量になる。両腕の皮膚がチリチリ焼け縮んでいくけれども、何しろ相手は紫外線だ。どうにも防ぎようがないのである。

 モンデッロに向かう806番バスは、最初から満員。一番後ろのあたりにやっと空席が見つかったが、パレルモの若者は、昼過ぎにでも構わずモンデッロを目指すらしい。モンデッロの海岸が見えてくるまで、バスは超満員のまま。おお、こりゃ江ノ島とおんなじだ。

 海岸にズラリと立ち並ぶのは、着替えその他のための小部屋である。何しろここは高級海水浴場。「トイレで着替えます」「男女別の大部屋で着替えます」とか、そういう下品なことはありえない。鍵のかかる小部屋を借りて、着替えもその他いろいろのビロビロも、全部その中で済ませるのである。

 ワタクシは海水浴に来たのではない。もちろんもしも海水浴ということになったら、イタリア男子もイタリア女子もそこのけ&そこのけ、見事なクロールでティレニア海をつんざいてみせる。スピードは全く出ないが、フォームだけはマコトに美しい模範的クロールである。

 ついでに、同様にスピードは全く出ないが、平泳ぎも100%模範的なフォーム。小学校 ☞ 中学校と仲間たちの模範だった今井君は、水泳とスキーのフォームもまた模範。もし今ここで泳ぎだしたら、男子も女子もみんなワタクシの優雅な泳法に夢中になるに違いない。
旧チャールストン
(旧「チャールストン」の勇姿)

 とはいうものの諸君、ワタクシがわざわざパレルモからモンデッロまで、こともあろうに市バスでやってきた理由は、モンデッロのウルトラ有名レストラン「チャールストン」のランチを楽しむためである。優雅な泳ぎの披露は、2の次&3の次だ。

「チャールストン」はすぐに見つかった。何しろ美しいモンデッロの海に建物全体が泳ぎだしたような格好の、御殿のようなレストランである。見つからない方がおかしいぐらいだ。

 しかし、その重々しいドアを押し開けようとしても、ドアはビクとも動かない。ありゃりゃ、ロックされているんだろうか。もう1回押してみるべえ。もう1回。もう1回。今井君は合計5回チャレンジしてみたが、ドアはビクともしなかった。

 他にも、このドアにチャレンジしている欧米人が数組いらっしゃった。しかし彼らも彼女らも空しく押し返され、ドアは拒絶に拒絶を重ねて、誰が押そうが、誰が引っ張ろうが、意地でも道を譲ろうとしない。
パスタ
(モンデッロ、マコトに普通なスパゲッティ)

 諸君、ウルトラ名店「チャールストン」は、2年前に移転。今は「テラッツェ」という名前で別会社が営業中らしい。この日どうしてもドアが開かなかったのは、「貸し切り」のせい。確かに中年の男たちの高歌放吟が海岸を圧して、他の一般客が入り込める雰囲気ではなかった。

 ということなら、他の店を探すしか仕方ないじゃないか。ワタクシはモンデッロのビーチをしょんぼり歩き回った。おやおや、モンデッロは旧チャールストン ☞ 現テラッツェの金城湯池であるらしく、他のお店の接近も存在も許さない。

「金城湯池」を知っているかね? 金城湯池と書いて「きんじょうとうち」と読む。守りが極めて堅い状況を言い、攻め込みがたい堅固な備えを示す。「金城」とは、金属のみで築いた城。「湯池」とは熱湯を煮えたぎらせた堀。そりゃ恐ろしい。とても攻め込む気になれませんな。

 だから他の飲食店は、元チャールストンを遥かかなたから遠巻きにして、冗談にも元チャールストンを怒らせないように、地味を極めた庶民的な料理で勝負する。昭和日本の「ドライブイン」を思わせるスパゲッティにサンドイッチ、その程度のものしか用意していないのである。
スイカ
(モンデッロ、バーチャンのスイカみたいなスイカ)

 シチリア最終日にも関わらず、だから今井君はその類いのランチで我慢することにした。まず何と言ってもムール貝のスパゲッティ。1本15ユーロの赤ワインをグビグビ飲み干して、シチリアの締めくくりとしたのである。。

 あとは、やっぱりスイカ。お盆にバーチャンのウチを訪れた孫たちじゃあるまいし、ボクチンはいい年をして「スイカ」をサクサク&サクサク、終わりの近づいた夏休みを惜しんだ。

 うるさいハエがブンブン飛び回るのもまた一興。「おお、夏休みだ」「おお、バーチャンの家だ」であって、高級レストラン・チャールストンでなければシチリアの締めくくりが出来ないとか、そんな贅沢を言う必要は皆無なのである。

 こういうふうで、モンデッロの午後は呆気なく過ぎていった。帰りもまた806番バス。バスの終点・ポリテアマ劇場からは、タクシー。落ち着いた運転手さんの運転でホッと一息つきながら、たった一晩だけ滞在する高級ホテルにたどり着いたのである。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN①
2E(Cd) Alban Berg:SCHUBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
3E(Cd) Baumann:MOZART/THE 4 HORN CONCERTOS
4E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
5E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
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