2013年01月14日(月)

Fri 121221 ムーラン・ルージュ 詩人と未来人 まだマキマキ軍団(パリ速攻滞在記19)

テーマ:ブログ
 12月28日午後、モンマルトルの丘を行ったり来たり、いわゆる「彷徨」ということをやってみて、夕方近くなってやっと丘を降りてきたのが「ムーラン・ルージュ」付近。地下鉄2号線ブランシュ駅の近くである。
 フレンチカンカンで有名な店であるが、治安の面では昔からそれなりに評判が悪い。今井君よりもう1世代上の人たち、つまり全共闘世代のオジサマがたから、いろいろ恐ろしい体験談を聞かせてもらったことがある。
 昭和の日本から浮かれてパリにやってきて、しかも昔は「オジサマだけの団体旅行」などというのも少なくなかったから、オジサマだけのパリでますます浮かれてしまい、浮かれ放題に浮かれたオジサマが集団でどういう店に入るかは、我々からみても想像にかたくない。
ムーランルージュ1
(ムーラン・ルージュ)

 100年以上前に、モジリアニやユトリロが浮かれたお店。ヴェルレーヌやランボーやマラルメが入り浸ったお店、ボードレールが酔っぱらって書き残した詩が、いまもなお店の壁に残るお店。話だけ聞くとたいへんロマンティックであるが、それが20世紀後半とか21世紀とか、殺伐とした現代におかれると、マコトに殺伐とした武勇伝にしかならない。
 武勇伝と言ったって、ただ単にボラれまくっただけのお話か、ボラれる寸前にほうほうのていで逃げまくったお話か、ほぼその2者択一である。たいした武勇伝ではない。そもそも、怪しいお店に関する武勇伝が武勇伝として成り立つ時代は、とっくに過ぎてしまった。
 怪しいお店の武勇伝が成り立っていた時代とは、カンタンに言えば「詩人の時代」または「芸術家の時代」である。おおむかし、詩人も芸術家も、金銭感覚とは無縁であり、常識とは無縁であった。怪しい店を怪しいと判断できずに、稼いだ金銭を無駄遣いすればするほど、「詩人っぽい」「芸術家っぽい」と優しく判断してもらえたわけである。
ムーランルージュ2
(ムーラン・ルージュ 拡大図)

 すると、実際には詩人でも芸術家でもないヒトビトだって、「ぽい」行動を継続すれば世間は詩人または芸術家として認めてくれる。ホンモノでなくとも「ぽい」だけで満足する若者は、金銭感覚を捨て、常識を捨ててその種の店に入り浸り、店の女なり男なりに「ぽい」と言われて「ぞっこん惚れられ」たりすれば、それで十分に満足することになる。
 そのタイプのヒトが40歳すぎて、「オレは詩人になりたかったんだ」と疲れた顔で寂しそうに笑う。するとそういう疲れた顔が何だか可哀想。「可哀想」が「カッコいい」に変質するのはあっという間である。
 寂しげな顔でタバコを吸ってみせたり、強い酒を口に含んで表情を歪めてみせたりすれば、詩人じゃなくとも詩人に見える。芸術とは無縁の公務員的生活を送っているヒトでも十分に芸術家に見えるものである。
ムーランルージュ3
(ムーラン・ルージュ、中に入ってみた)

 しかし、「詩人になりたかった」などという発言自体、もともと詩人の本質を理解していない証拠であって、詩人とは「努力してなる」ものではなくて「もともとの本質がそうである」でなければならない。
 刻苦勉励してつましい生活を重ね、努力の日々を5年10年と積み上げた結果として、ついに世間から詩人として認めてもらう。つまり「詩が売れるようになって、詩を書いて生活してゆける」。「詩人になりたかった」と発言する人がイメージしている詩人とは、そういうタイプの詩人である。
カフェ
(相変わらず、カフェは混み合っている)

 しかし諸君、詩人とは、自ら書いた作品を生活の糧とみなすような人間のことであろうか。刻苦勉励&努力を重ねて、努力の向こうに世間的成功を勝ち取ることタイプのヒトだろうか。反語表現を2つも重ねるほどのこともなく、もちろんそういうヒトはもともと詩人ではありえないのである。
 同じことは詩人ばかりでなく、芸術家にもおそらく学者にも言えるのであって、「ボクは学者になりたかった」「ワタシは芸術家になりたかった」と、強い酒に顔を歪めながら苦しい過去を告白するようなヒトは、もともとの資質として学者にも芸術家にもなれるタイプではないのである。
魚屋
(魚介の店も多い)

 同様の誤解は、詩を読む側にも存在する。サトイモ男爵の同世代には、「何でフランス語を勉強しているの?」と尋ねられて「ボードレール『悪の華』をフランス語で読みたいから」と言い放つ猛者が平気でいたものだ。同じように
「ヴェルレーヌの詩集を一冊、上田敏の翻訳に頼らずにフランス語で読破したい」
「ランボーの『地獄の季節』を、日々フランス語で暗誦して過ごしたい」
の類いの発言もしょっちゅう飛び出した。おお、この現実からの隔絶ぶり、マコトに詩人的である。夢がタップリで、スンバラシイじゃないか。
カフェ風景
(混雑したカフェに入ってみる)

 ところが、このごろボクチンの周囲の若者たちに尋ねてみると、外国語学習の目標が甚だ現実肯定的である。英語学習の目的は「英語でビジネスがしたい」「人生を英語で勝負したい」なのであって、「オスカー・ワイルドを原文で読みたい」などであることは、ほぼ100%考えられない。
 うーん、世の中はますます殺伐としてくるのである。モジリアニやユトリロにとっては、ホントに生きにくい世の中になっていくのである。「だって仕方ないじゃないか」「生きていくには、そういうことをチャンと考えなきゃ」という話なのだが、そういう諦めを躊躇なく口にするヒトを、我々は「現代人」と呼ぶことになっている。
デキャンタ
(赤ワインをデキャンタで注文する)

 言わば現代人とは、現実をネガティブに肯定する人、「だって仕方がないじゃないか」という言い訳を恥ずかしげもなく口にしながら、自らの能力をネガティブに位置づける人である。うーん、何だか悲しい現実でござるね。
 クマ蔵なんかは、若い諸君にそういう現代人になってほしくない。現代人よりも未来人のほうがカッコいいじゃないか。詩人とは、詩を書き続けるだけで詩人なのだし、芸術家は、創造しつづけるだけでいいのである。
 他者による評価は、数十年もかかるし、100年以上経過しても評価されない場合だってあるけれども、それを待ちきれないで「だって仕方がないじゃないか」を口にした瞬間、諸君はネガティブ現代人。詩人でも学者でもなくなってしまう。たとえ「人間ガラパゴス」と言われても、自分ひとりで進化を続け、独自の進化を遂げて、数百年後の未来を目指すほうが楽しくはないかね。
オニオンスープ
(オニオンスープ。ポットの底まで、オニオンの嵐だった)

 「未来人」と言うとき、普通の人は「未来からきた人間」というSF的生物を想像するが、実際の未来人とは、現実をネガティブに肯定するのを拒絶する人間のことである。予備校的にカンタンに言えば、「夢をなくさないヒト」。「夢、なくすなよ」「夢、見失うなよ」とは、「だって仕方ないじゃないか、という絶望的発言を耐え忍びなさい」と言い換えることもできる。
 以上、サクレクールからの坂を降り、庶民的なモンマルトルの街を歩き回りながら、サトイモ大将の頭に渦巻いていたマコトに当たり前な考えをここに書いてみた。当たり前すぎて目の前がクラクラするほどであるが、まあ①肩こり②熱と吐き気③口内炎に苦しみながらの思索に過ぎない。批判はお手柔らかに願いたい。
 あんまりグルグル歩き回り、あんまりグルグルどうどう巡りの思索を繰り返したので、今井君の欲望はグルグル&マキマキな食べ物を求め、胃袋さえグルグル&マキマキし始めた。グルグル&マキマキな食べ物と言えば、エスカルゴ以外に考えられない。
エスカルゴ
(今日もまたエス・カルゴ王子のマキマキ軍団と対決する)

 じゃ、エスカルゴって、そんなにカンタンに手に入るの? 滅多な店では食べられないんじゃないの? 日本人ならそう考えるところだが、諸君、さすが「おフランス」は違いますザンス。そこいらのごく平凡なカフェに入って「エスカルゴ!!」とニッコリすれば、何のタメライもなく12個のエスカルゴが運ばれてくる。
 「12個じゃ、多すぎるよう」と泣きそうな顔をする少食ジャパニーズのためには、「6個」というたいへん控えめなマキマキ軍団も控えていて、「われわれ少数精鋭でござる」と意気軒昂。ただし、「少数」であるだけで別に「精鋭」ということにならないのは、日本の「少数精鋭主義の予備校」と全く同じことである。
ひろう
(カフェ内での自分撮り。若干の疲労を隠せない)

 今井君は軽薄であるから、少数精鋭などというヤセ我慢は大キライ。マキマキはたくさんあるに限るし、講演会場は参加者が会場から溢れ出すほどいたほうが、素直に嬉しさがつのる。ムール貝は、大きな鍋から溢れ出すほどなのが大好きで、殻入れの大皿に殻の残骸が入りきれないのがいい。
 12月28日、夕暮れ時に入ったモンマルトルのカフェでは、エス・カルゴ王子率いるマキマキ12個軍団の他、赤ワインをデキャンタで1つ、もちろんビアも大ジョッキで1杯。他に、オニオンスープ、イタリアン・サンドイッチ。「オマエ、ホントに今①肩こり②熱と吐き気③口内炎の3重苦か?」と自問自答するほどの健啖家ぶりで、夜のバスティーユ・新オペラ座に備えたのであった。

1E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT
2E(Cd) Philip Cave:CONONATION OF THE FIRST ELIZABETH
3E(Cd) Rachel Podger:TELEMANN/12 FANTASIES FOR SOLO VIOLON
4E(Cd) Sirinu:STUART AGE MUSIC
5E(Cd) Rampal:VIVALDI/THE FLUTE CONCERTOS 1/2
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