Mon 111219 Must店は遠慮する ネコのいないクワトロ・ガッツ(バルセロナ滞在記13) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 111219 Must店は遠慮する ネコのいないクワトロ・ガッツ(バルセロナ滞在記13)

 初めてバルセロネータを歩いた日、今井君にしては珍しく店の選択を誤って「上品で高級っぽいレストラン」を選んでしまった。テーブルについた瞬間「しまった」と思ったが、すでにあとの祭りである。
 もっとも、テーブルについてからでも平気で店を出て行く欧米人をよく見かける。
「座ってはみたが、メニューをよく読んだら、自分の求めているものと違っていた」
「窓際のテーブルをと思っていたが、窓際からの景色が思ったほどよくない」
「高い。高すぎる」
「隣に東洋人グループがいたんでは、落ち着いて食事ができない」
など、人種差別まで含めて勝手放題である。もちろん、こういう勝手なお客が出て行った後でウェイターたちは思うぞんぶん肩をすくめ、目一杯お客についての悪口雑言を並べるのだが、そんなことはお客の知る由もないのである。
 だから「後の祭り」などと諦めないで、今井君もあの店はサッサと出てしまえばよかったのだが、東洋の臆病なクマどんに、そんな傍若無人な行動は不可能。高級店ぶった2流店の料理で我慢することにした。
クマ蔵の理想
(食いしん坊な今井君の理想のシーフード Ambos Mundosで)

 こういう店では、特に周囲に気をつかう日本人は苦労が多いものである。7年前、パリに滞在中の今井君は、ちょっと奮闘しようと思いたち、超一流店「トゥールダルジャン」の斜向いだったか筋向かいだったかの「まあ一流レストラン」に足を踏み入れたことがある。一応トゥールダルジャンに対抗&拮抗しているわけから、それなりに気難しい店だった。
 おお、あのときの気詰まりきわまりない夕食を、クマ蔵は忘れることができない。狭い通路をはさんで、客同士がお互いに飛ばしあう視線の面倒臭さ。
「何だ、オマエはその料理にそのワインを注文したのか」
「そんな組み合わせじゃ、料理のこと全然わかってないな」
というイヤらしい微笑。うにゃにゃ、クマ蔵はあんなのは絶対にダメである。
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(バルセロナの有名店クワトロ・ガッツ 1)

 フランス・ニースでコキヤージュを食べていたときの、周囲の視線もイヤだった。コキヤージュとは、生ガキ20個ぐらいをメインに、ナマの貝類を大皿に大量に持った料理である。料理というより、盛り合わせただけのことだが、今井君の大好物だ。
 ところが隣のイギリス人オバサマは、露骨に「アナタ、そんなもの食べて、周囲のお客様が迷惑だと思わないの?」というイヤそうな視線をこちらに向けた。いや、視線だけではない。まず顔全体をこちらに向けて批判ないし不満を表現し、知らん顔をしていると、やがて全身をこちらに向けて、巨大な体躯全体で非難を示すのだった。
 スコットランド・エジンバラでも同じような経験をした。クマ蔵のテーブルにコキヤージュの大皿が運ばれてきた途端、隣の席の若い男女のカップルは「うへっ」「ヤバくね?」というふうにソッポを向いた。見ないように見ないように、そんなゲテモノを注文する客がこの世に存在するなんて信じなくてもいいように、ずっと向こうを向いて過ごすことに決めたようである。
 うーん、現にメニューにキチンと掲載されているものを、そんなに批判&非難しなくてもいいじゃないか。キミたちが注文したステーキだって、ナイフでいくらこすっても切れないシロモノだったじゃないか。ナイフでこすりすぎて、摩擦で炎が出そうだったじゃないか。それどころか、あんまり肉が切れないせいで、キミたち2人はケンカして、別れることになりそうだったじゃないか。やーい&やーいじゃないか。
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(バルセロナの有名店クワトロ・ガッツ 2)

 そこへいくと、バルセロナ、特にバルセロネータ、中でも海老大王はこの上なく自由で楽しかった。生ハム1キューブ口に放り込んで、それから3分チューインガムみたいにクチャクチャやっていても、誰も何にも言わないし、忠告がましい顔でこちらを睨みつけるような客もウェイターも1人もいない。おお、これこそ今井君が求めていたパラダイスである。
 ま、そういうふうだから、ガイドブックにMustと記載されているような有名店に出かけることは滅多にない。例え出かけても、中には入らない。ドアや窓のところから中をうかがって、「うへ!!」「あひゃ!!」「うりゃあ!!」とか無意味な奇声をあげ、ウェイターと目が合ったりすれば、ダッシュで走って逃げ帰る。
 ウェイターが放っておいてくれれば、思うぞんぶん写真をとるが、有名店のウェイターというものは横柄な表情のヒトが多くて、「観光客は困るんですけどね」感がムンムンの嗜めるような笑顔で迎える。するとこちらの反応も反感の混じったものになって、意地になって店の欠点を発見し、「だから入りたくない」と自分の正当化に躍起になる。
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(バルセロナの有名店クワトロ・ガッツ 3)

 「ピカソも通った」という有名店「クワトロ・ガッツ」もその種の有名店。覗いてみると、店内は満席。山盛りの観光客で足の踏み場もなかった。しかし諸君、クワトロ・ガッツとは「4匹のネコ」のはずなのに、店内にはネコの「ね」の字も存在しない。
 そんなのは明らかに「看板に偽りあり」であって、店の外も中もネコの絵とオブジェだらけだったプラハ「ドゥブ・コチェック」とは大違いである。ドゥブ・コチェックとは「2匹のネコ」。2匹と4匹で比較すれば、2倍もネコがいて当然なのに、クワトロ・ガッツにはネコの存在は微塵も感じられない。
 こうなれば、ナデシコとニャゴロワの2匹と10年近く暮らしてきたクマの沽券にかけても、こんな店を許すわけにはいかない。例えどんな有名店であっても、例えピカソがどんなに気に入っていたとしても、クマどんはそんな店で気を許してメシなんか食べるわけにはいかない。
 それでも未練が残って店の回りをウロウロしていたら、店から出て来たスペイン人観光客のオバサマが「入りなさい、入りなさい」「有名だし、まあおいしかったですよ」「ただし、すごく高かったですけど」と意味深な表情ですすめてくれた。
ばかばか
(バカ&バカ。スペイン語で牛肉は「カルネ・デ・バカ」である)

 もちろん、今井君は遠慮することにした。やっぱり、安い生ハムキューブと、しゃりジャリのナバジャスがないと、食べても食べても食べた気がしない。なお、ナバジャスはnavajasという表記とnavallesという表記が併存しているようだ。するとやっぱり、発音はナバハスよりナバジャス、あるいはナバジェスが正しいということになる。

1E(Rc) Muti & Philadeiphia:PROKOFIEV:ROMEO AND JULIET
2E(Rc) Collegium Aureum:SCHUBERT:八重奏曲ヘ長調 D.803
3E(Rc) Walter & Columbia:HAYDN:SYMPHONY No.88 & 100
4E(Cd) Barenboim/Zukerman/Du Pré:BEETHOVEN/PIANOTRIOS⑥
5E(Cd) Barenboim/Zukerman/Du Pré:BEETHOVEN/PIANOTRIOS⑥
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