自分の本当の価値

　スポーツ選手を見ていると、活躍した時にはえらそうな態度なのに、成績があがらないととたんにしょげ返って、小さくなっているような人がいます。そういうのって、どう思いますか。僕は、変だと思うなあ。

　米国の小学校では、昨日で三学期が終わって、子供が通知表のようなものを持ち帰ってきたのです。うちは双子なので、その反応が面白くてね。

　私が出張から帰ってきたら、娘はすぐに通知表を持ってきました。「これとこれがあがったよ」と得意げです。家内も「よく頑張ったでしょう？」なんて、言うもので、私も、「そうだなあ、上がったなあ」と言いました。

　その横で、長男が「僕は、あんまり良くなかった」とポツリと言うのです。私は「どれどれ」と見せてもらったのですが、別に、悪くないんです。ほとんどが前回よりよくて、２項目ほど、前回と同じ。確かに長女の成績表と比べると見劣りはするのですが、しっかりと伸びているのがわかりました。

　私は、長男に言いました。「成績というのは、先生がどう感じるかが大きいから、点が全体に辛い先生もいれば、全体に甘い先生もいる。だから気にするな。それよりも、前よりも全部あがってるんだから、頑張ったんじゃないのか」。

　長男はちょっとホットしたような顔をして遊びに行きました。

　夜寝る前にも、ベットに横になって、長男の頭をなでてあげました。「お前は優しいし、いい子だから、パパもママも大好きだよ。パパとママの中で、お前の価値は、学校の成績とか運動会の順位とかでは、全く変わらない。成績なんか、よかろうが悪かろうが、お前のことが大好きだということは変わらないんだよ」。

　長男は、その声を聞きながら、スースー寝てしまいました。

　私は、ヤンキースの松井選手の大ファンで、彼を見ていても同じことを思うのです。松井選手が打った時、マスコミは大扱いして褒め称えますよねえ。松井選手は、堂々としています。

　でも、彼は、打てなかった時でも堂々としているんです。そして、悪びれることなくマスコミの前に現れて、悪かった結果について話します。

　ファンは、松井選手が打った時、一緒になって喜びます。では、打てなかった時、彼を責めるでしょうか？

　責めませんよね。ファンは、松井選手が失敗した時、自分の子供が失敗した時のように、一緒になって悲しむのです。ファンは、成績が良かろうが悪かろうが、松井選手のことが大好きなのです。

　もちろん、松井選手が打てない時に、責めるような行動をとる人もいることでしょう。

　でも、松井選手は、そういう人のことを意識せず、一緒になって共感してくれる人に向かって行動しているのだと思います。

　人間の価値は、一本のヒットや、一度の学校の成績、運動会の順位などで変わるものではないですよね。自分の本当の価値を知ってくれている人、自分を愛してくれる人を意識して行動したいものです。一時の成功や失敗では変わらないような自分の本当の価値を高めたいと思うのです。