荒瀬ダム撤去凍結以来、八代では荒瀬ダムの「水がめ」に期待する(政治的な思惑も
深く絡む)土地改良の農家と、撤去に期待してきた市民・漁民の間に深刻な溝~対立
軸が生まれています。

27日に行った、企業局との交渉2時間半のうち、1時間半がこの「水がめ」機能を意図
的に否定しなくなった企業局との論争に費やされました。
企業局の言い分はこうです。
「私たちは、撤去決定のときから、同じ説明(※)をしています。農家が勝手に期待される
だけです」と。
※「荒瀬ダムは、上流に位置する瀬戸石ダムの放流水を受け止め、下流への水量
 変動を調整して放流しており、1日当たり流入した水量とほぼ同様の水を利用して発電
 を行う発電専用ダムであり、農業用の利水機能は有してない」という説明

しかし、6月、企業局は土地改良区に「(ダム撤去凍結は)反対が多いが皆さんは応援
して欲しい」と発言し、暗に荒瀬を撤去したら、八代の農業用水に不安が生じるかのよ
うな誤解を煽っています。

土地改良区では、総代を通じて、「水がめとしての荒瀬ダム撤去反対」の請願署名を
集めはじめ、しかし、心ある農家の方、釣りをして川のことをよくしっている農家の方
は署名集めに応じず、また、平素の農家の取水方法のルール違反などもあぶりだされ
、一見水が豊富な八代平野ですが、現代の水争いの様相も呈してきました。

また、球磨川の各地にダムや堰が出来たことで、八代の干潟が減少したことは周知
のことですが、その干潟を回復させる覆砂事業は、県の税金だけではなくて関係漁協
を通じて、漁民の「受益者負担」でも賄われてきたことが判明。
漁民にしてみれば、「我々はダムの被害者なのに、なぜ負担しなければならないのか」
「農家の水がめのためにダムを存続させるのなら、農家は負担金を払うのか」
という疑問も表に出てきました。

八代の坂田市長は、県議時代に荒瀬ダム撤去の決断を最終的に引き出した本人です
が、八代の土地改良の理事長でもあります。
土地改良という大きな票田が「ダム存続」に期待していることは、市長や市議、その後援
者の政治的な「荒瀬ダム存続」の動きにつながっています。

以上、ざっと説明しましたが、荒瀬ダムが水がめではない、という真実を広く知っていた
だく必要があり、陳情書に以下の添付資料がつけられました。

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(参考資料)荒瀬ダムと農業用水の関係について

【撤去する場合も、存続する場合も、農業用水は困りません。】

 撤去が決定した時に、渇水時の農業用水を心配する農家の声に対し、平成18年6月26日
開催された、第2回「荒瀬ダム撤去対策検討会議」において、電源開発資料「藤本発電所の
運転終了後の瀬戸石発電所の放流について」が配布されていますが、それについて、事務
局は電源開発資料について、「瀬戸石ダム直下流では、水が流れている時間と流れていな
い時間がある。荒瀬ダムがなくなると、川が空っぽの時間帯と流れる時間帯があるので、2
4時間荒瀬ダムの下流に水が流れていたように流すと言う事で、電源開発さんと県さんで話
し合いが持たれたと伺っている。先程の、河川の流量の観点とはまったく別のお話で現在
荒瀬ダムが調節することによって、一日安定して流れている水を同じように流したいというお
考えを示されたと言うことです。」と説明しています。

 すなはち、荒瀬ダム撤去後の水の運用は、瀬戸石ダムが現在の荒瀬ダムに代わって、
運用されることを明確に説明しています。
 このことが、農家に十分に伝わっていないため、荒瀬ダムがなくなることに不安を抱いて
いる農家が多いのです。
平成6年の渇水時は、荒瀬ダムは球磨川の水量低下のため発電ができなくなったため、上
流からの水が溜められずに、下流に流されただけです。このことが、荒瀬ダムの水ガメが
農業用水に転用されたという誤解を生んでいます。

○平成6年の渇水時に、県内42市町村に渇水対策本部が設置されましたが、八代地区に
おいては、鏡町に9月1日設置されたのみです。八代市においては、熊本県「渇水の記録」
にも、球磨川の利水調整会議の開催状況に関する記載があり、藤本発電所に関する記録
はなく、「球磨川下流の遥拝堰でも、かんがい期間を通して流量は足りており、取水制限
する必要はなかった」と記録されています。
○平成6年の渇水について、八代市選出の一県議からの問い合わせに対し、企業局は「過
去を振り返ってみると、平成6年に1度だけ、遥拝堰で水不足が生じた。その時は渇水協議
会を開いて、農業用水優先と言う取り決めで、工業用水を調整して、問題解決した」とある
ように、遥拝堰の管理体制の範囲内の協議であることが分かります。実際、八代の工業用
水は余っています。
○企業局も、荒瀬ダムについては、「発電専用であり、水ガメとしての機能はない」ことを認
めている。