まえがき || 池袋ぐれんの恋 | 西条道彦の連載ブログ小説「池袋ぐれんの恋」

まえがき || 池袋ぐれんの恋

池袋ぐれんの恋



まえがき



 私は少年時代をすごした終戦直後の池袋を、記憶する限りリアルに書き残そうと思う。すっかり忘れ去られてしまった懐かしい時代であり風景であり、自分を再確認するために思いだし。調査しながら書くことにする。参考文献は書きあげてから列挙する。

 そこで障害となるのが「現代人から見れば差別がまかり通っていた怪しからん部分」を描かなければ嘘になる点である。例えば「姦通罪」という、夫のある女性がほかの男性と肉体関係をもてば法律で罰せられるが、男性の場合はやりたい放題で、公認の遊廓も大いに栄えていた。職業蔑視ほかさまざまな差別があった。

 そういう時代から民主主義、人権尊重のすばらしい時代へと変わり始めたのが戦後であるから、その変遷を書き残すのも、生き残っている人間には意義あることと思い、かくさず書くことにする。「影も形もなくなってしまった戦後」を知らない世代の人たちには、かえって新鮮な驚きがあるのではなかろうか。怪しからんものと同時に、日本人独特のさまざまな美点・魅力も失われていった時代である。


西条道彦



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