こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回は年度はじめなので、研修医の先生にも役に立つ知識を書こうかと思います。
以前、卒業生T先生が、血小板輸血のタイミングや外科処置との関連について書いてくれましたが(記事はこちら)、今回は、どうしてそのようになったかというか、どのくらいの血小板数がどのくらい危ないのかについての論文をお届けいたします。
Management of idiopathic thrombocytopenic purpura in the adult.
Semin Thromb Hemost. 1977 Jan;3(3):160-74.
かなり古い論文ですが、図が分かりやすいので今回取り上げました。特発性血小板減少性紫斑病患者さんにおける、血小板数と出血イベントの重篤度の相関を比較した論文になります。
上図をご覧ください(一部加筆しました)。生命に関わる重篤な出血・処置を要する自然出血、すなわち受診が必要なレベルの出血のほとんどは血小板 0~1万/μlで起こることが良く分かると思います。一方で、自然止血する、受診を必要としないレベルの自然出血は血小板 5万/μl以下から起こり始めます。
治療する側から言い換えると・・・
血小板数 1万/μl以下
生命に関わる or 処置を要する重篤な出血を起こしうるので、すぐに輸血などの血小板を増加させる処置が必要。原因が分からない場合は、即、血液内科コンサルト推奨!
血小板数 1~5万/μl
自然出血を起こすことがあるため注意深い観察が必要だが、処置を要しないことが多い。少し心に余裕を持ってコンサルトの準備をはじめよう。
血小板数 5万/μl以上
出血を起こすことはほとんどない。血液疾患が疑われるときはコンサルトしてください。
ただし、血液疾患の場合は凝固異常症を合併していることもありますし、最近は抗凝固 or 抗血小板薬を内服されている患者さんも多いですから、血小板数だけで判断するのも危険です!最終的には患者さんをよく診察して、総合的に判断しないといけません。
というわけで、皆さんが血小板減少患者さんを見かけたときのドキドキ感を減らすことができたら幸いです!