こんにちは。血液内科スタッフKです。

今日は結核と化学療法の話です。

「結核って過去の病気でしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本は先進国の中では結核の有病率が非常に高く、1997年にはそれまで減少していた結核患者が増加に転じたことから結核緊急事態宣言が出され、大きな社会問題になりました。

・・・と言っても、専門医でもない限りそんなに頻繁に患者さんに出会うわけではないので、「結核菌 忘れたころに やってくる」と常に意識を持っておかないと、うっかり結核疑いの患者さんを一般病床に入院させて、後からバタバタ部屋移動する・・・という痛い目にあってしまいます。

血液内科というと、抗がん剤はもちろんですが、自己免疫疾患の患者さんにはステロイド、骨髄移植後の患者さんには免疫抑制剤と免疫不全の患者さんを治療することがとても多いです。また、血液という免疫をコントロールする臓器の異常なので、血液疾患というだけで、大なり小なり免疫不全を抱えていることが多いのです。

たとえ症状がなくても結核菌を持っている方が血液疾患の治療が必要になったら、免疫不全による結核菌の再活性化が問題になります。このような「結核にかかっていることそのものが治療の対象になる」という概念を潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection : LTBI)と言います。私が研修医のころは、予防内服といってそのような患者さんに抗結核薬を内服していただいていましたが、現在は予防ではなく潜在性結核感染症は治療の対象という位置づけになっています。日本結核病学会から治療指針も出ていますので、興味のある方は一度目を通しておくといいと思います(Kekkaku Vol. 88, No. 5 : 497_512, 2013)。

血液内科は予防内服でキノロン系抗菌薬を使うことが多いです。また、よく分からないから(?)何となくキノロンを飲ませているなんてことを見かけたりすることもあります(飯塚病院じゃないですよ!)。しかし、根拠のないキノロン乱用で結核の診断が遅れ、死亡率を上げるというのは以前T先生に記事に書いていただいた通りです(リンクはこちら)。便利なキノロンですが、使いどころを間違わない医師でいたいですね!

既往歴の詳細な問診、画像検討、そして何より結核を常に念頭において診療にあたることが重要です。ついつい忘れがちですが、この記事を機会に一度思い出していただけると幸いです。