こんにちは。後期研修医Tです。

最近うちの科の中では微妙な鉄剤ブームが来ているのですが、今回はそれに便乗して鉄剤の論文を読もうと思います。
てな訳でこれです。
Effects of iron and n-3 fatty acid supplementation, alone and in combination, on cognition in school children: a randomized, double-blind, placebo-controlled intervention in South Africa
Jeannine Baumgartner et al. The American Journal of Clinical Nutrition 2012; 96:1327-38.

実は鉄剤って認知機能(特に子供の)を上げるんじゃないの?て論文が散見されておりまして、メタアナリシスとか出てるんですよね(1)。ただ、鉄分が低い=全体的な栄養が足りないって考えもできるので、まだまだ結論は出ていないようです。

今回ご紹介するのは、鉄と同様頭に良いかもしれないと言われているω-3脂肪酸と鉄剤を、鉄欠乏性貧血の子供にダブルブラインドで飲ませてみた!という試験です。ω-3脂肪酸というのは青魚に入ってると有名なDHA、EPAのことです。(追記1)

この研究では、鉄が不足する食生活の場合、DHA、EPAも不足しがちなのではないかという予想から、貧血気味の6-11歳の子供達321人を
①鉄+DHA/EPA飲ませる群
②鉄+プラセボ飲ませる群
③プラセボ+DHA/EPA飲ませる群
④プラセボ+プラセボ飲ませる群
の4つに分けて解析してみました。

結果としては鉄剤で認知機能が言語的にも非言語的にも向上した!というものでした。しかもDHA/EPAはあんまり認知機能に関係なかったというのですね。(追記2)

前回のむずむず足症候群の話もそうですけど、鉄はどうやら中枢神経系で大きな役割を果たしているようです。まだ確立した話ではないんですが、「うちの子症状ないけど貧血だなー」てときにレバーを食卓に載せると、テストの点数が1,2点上がるかもしれません(笑)。

以上、今日の論文紹介でした☆ 

追記1:ちなみにDHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサヘキサエン酸って言います。可愛い名前ですね。
追記2:認知機能に関して、DHA/EPAは女の子だとむしろマイナスに、男の子ではプラスに働いたそうです。なんでそうなったのかよくわかんない結果なので、追試を待ちたいところです。あと、DHA/EPAのために擁護しときますと、DHA/EPAを飲んだ群は、体格が良くなったらしいです。
追記3:こういう鉄剤×認知機能の論文は若年者を対象としていることが多くて、中年-老年を対象とした研究は少ないようです。年代別での綺麗な二重盲検が待たれます。

(1) Falkingham et al. Nutrition Journal 2010, 9:4