「うちらさぁ、別にチームに入ってるワケじゃないから、いつも一台で走ってんだ」マイが言った。




「何寂しいアピールしてんだよ…ブースブース!」俺は心の中で返事をした。




あっちゃんは人がいいのか計算なのかは分からないが「うんうん」と素直に聞いている。




ガソリンも満タンにしてもらったし、何ならこのままトンズラしてもよかったが、美形のレンがいるせいで俺はそれが出来ずにいた。




「じゃあ、行こうか」口数の少なかったレンが言った。




打ち合わせもそこそこに、俺達の単車とレン達のマーク2は走り出した。




まずは俺達が前に出て、後ろに続くレン達に単車の走りを見せてやった。




俺達の爆音に負けじと、レンも思い切りアクセルを吹かす。




たった二台の緊急集会だったが、直管の独特な排気音と、車の地鳴りのような排気音が混ざり合って、周りの空気を捻じ曲げて切り裂いていくような感覚だった。




時には俺達の単車を煽ったり、俺達も煽り返したり。




ある程度走った所で、レン達の車に誘導されるがままにコースを変え、俺達は初めて通る道路で単車を吹かしまくった。




俺は運転しているあっちゃんに話しかけた。




「これからどうすんだよ」




「え?何?」




「どうすんだよって言ってんだよ」




「あー、これ終わったら帰るっしょ」




「バカかよ。食えるもんは食っていこうぜ」




「腹減ってんの?」




「そう言うことじゃなくてよ。お前はどっちいくんだよ。太い方でいいべ?」





「たっちゃんスケベだねー」




「俺からスケベ取ったら何も残らねーって」




「要達心配するだろうし、帰るっしょ」




「ガソリンまで入れてもらってそりゃねーべ」俺は残りたいがために心にもない事を言った。




「んー。まぁ、流れに任せるって事で」




その後一時間ほど楽しんだろうか。




レン達は海が見下ろせる高台に車を止めた。




広い駐車場のようなスペースだった。展望スポットなのだろうか。




あたりは陽が落ち、いい雰囲気だ。




四人で一服をしていると、美形のレンが聞いてきた。




「楽しかったわぁ。ねぇ、敦司君達はいつまでこっちにいるの?」




「レンちゃんが望むならいつまででも」俺が代わりに答えた。




すると、お前には聞いてねーよと言わんばかりの目で太めのマイに睨まれた。





「何も無ければこのまま帰るかな。ガソリンのお礼、どうしたらいいかな」あっちゃんが言った。




~つづく~

井口達也



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