あっちゃんのが「いいこと」と言って、実際に良い事だったためしがない。
俺は何も聞かず、小ばかにして鼻で笑った。
「ひっちはーいく!」あっちゃんが言った。
俺はしらけた目であっちゃんを見た。
あっちゃんのいつもの危険な発想でも、無いよりはいいと思っていたが、俺並に幼稚な提案だった。
俺の顔色を伺いながら、あっちゃんは「だめ?」と言った。
「一人でやれよ。単車どうすんだよ」
俺がそう言うとあっちゃんは「あ、そうか」と言った。
バカが二人そろうと手に負えない。
互いに代案も無ければ、単なる思い付き以外のアイディアが出てこない有様だ。
「単車はあとで取りに来るとか」あっちゃんが言った。
「盗まれんじゃねーの?」
「それはいーやーだ」
「お前は手で単車押しながら歩いて帰れよ。俺はヒッチハイクで帰るわ」
「…」
「だから泣くなって」
「…」
あっちゃんは弱った小動物のような眼で俺を見つめた。
「わーったよ!あー…10円もねーの?電話出来りゃ仲間連中迎えに来てくれんだろ」
俺はそう言ってもたれかかった自販機のつり銭口に手を入れたり、地面に這いつくばって自販機の下を覗き込んだ。
一瞬光るものが目に入って「あ!」なんて声が出たが、何年前のものか分からないプルタブだった。
「銀行強盗しちゃう?」あっちゃんが言った。
「一人でやれよ。ガス欠になって銀行強盗する奴なんて聞いたことねーぞ。その辺のやつカツアゲでもすっか」
「カツアゲはダメでしょ。不良のやる事だよそれは」
「あのな…銀行強盗はよくてカツアゲはダメなんかよ。お前の頭の中どうなってんだよ」
「…」
「だから泣くなってんだよ!」
その後、1ミリも進展の無い会話がしばらく続き、結論が出た。
車も殆ど通らないこの道。
どの位進めばあるか分からないスタンドを目指してとりあえず単車を押していく事になった。
金は無い。
金は無いが、行けばどうにかなるだろうという、何の根拠も無い答えにたどり着いたのだった。
「途中でかわいいギャルが通りかかって、ポーンとお金貸してくれるんじゃないかな」あっちゃんが言った。
「お前なら出来るよ」
あたりは既に陽が落ち始めている。
俺達は歩き出した。
たまに車が通り過ぎるので、ためしに手を挙げてみるが止まる気配はない。
たった10円。
されど10円。
10円あれば仲間に電話をしてすべてが解決するのに、その10円が手に入らない。
しかしそんな事を考えていても何も変わらないので、俺達は黙々と歩いた。
すると、一直線のこの道路のはるか向こうから、空気を揺らす下品なマフラー音が聞こえてきた。
井口達也
※今夜はガラスのハート四十代、年内ラストの放送だ!
クリスマススペシャルって事で、色々話したいと思ってる。
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※クリスマスだな。いちゃいちゃしてんじゃねーぞコラ!(笑)
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