「たっちゃん…金、ある?」
「ねーよ」
「1円も?」
「ねーよ」
「チッ」
「チッじゃねーよ!」
海岸沿いに走る道路脇で俺と丹沢敦司は座り込んでいた。
俺は自販機にもたれかかり、丹沢敦司は自分の単車に腰をかけ、うなだれていた。
初秋のある日、俺はあっちゃんこと丹沢敦司に誘われてツーリングに出た。
といっても、参加メンバーは俺とあっちゃんのたった二人。
どこに行くにしてもぞろぞろと仲間がついてくるあっちゃんだったが、たまに単独行動を取る事があった。
特に、単車の運転が今一つのあっちゃんは、こっそりと単車の練習をするようなお茶目な一面もあった。
仲間の前では見せられないそんな一面を、キリヒトのメンバーではない俺にはたまに見せてくれた。
気が楽なのだろう。
この、たった二人だけのツーリングも、そんな遊びの延長だった。
唐突に誘われたのだが、暇だった俺は断る理由はなかった。
ただ、男二人で遊ぶよりは女の子がいたほうが楽しい。
ナンパなら一緒について行くという条件付で、いざ出発となった。
あっちゃんはナンパするような男でもないし、する必要もない位勝手に女の子がわんさか集まってくる男だった。
ただ単に、単車で一人で遠出をするのが怖いから俺を誘ったのだろう。
俺には居候先のスーパーカブしかなかったから、あっちゃんの後部シートに乗った。
途中運転を交替しながらのツーリングだった。
排気量の多い単車にまたがるのは気分爽快だった。
でかい単車を運転させてもらえた事に俺は感謝した。
あっちゃんも俺が毎日仕事ばかりの生活を送っていたのを気にかけて気分転換をさせてくれたのかもしれない。
しかし思いつきで行動する共通点がある二人は、とにかく無計画。
無用心。
調子に乗って飛ばしまくり、随分遠くにきた。
気がつけば茨城県北部。
太平洋側の海沿いにある某所まで来ていた。
そこで、こともあろうに燃料切れ。
途中何度もスタンドを通過したが、次で入れよう、次で入れようと通り過ぎている内に燃料が無くなってしまった。
ツーリングなのだから出発前に入れてくればいいのに、丹沢は俺がついて行くいう事で舞い上がり、すっかり燃料の事が頭から飛んでいたのだろう。
とりあえずスタンドまで手で押していこうという事になったが、俺は勿論金など持っていない。
そして、肝心の丹沢は、途中で財布を落としてしまっていた。
「どうすんだよあっちゃんよぉ!」
「…」
「泣くんじゃねーよコラ!」
途中寄ったビーチはとっくに海の家がたたまれいて、ギャルどころか人っ子一人おらず、気晴らしにそのまま遠出した挙句、燃料切れと金切れ。
俺の苛立ちは一気にピークに達した。
「はぁ」
俺が大きくため息をつくと、あっちゃんが手をぽんと叩いて言った。
「良い事思いつーいた」
~つづく~
井口達也
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