金髪坊主の男に蹴り倒された俺が振り向くと、村上は俺が反撃するよりも早くその男を殴っていた。




オールバックの男と金髪坊主組対、俺と村上。




2対2。




憂さ晴らしには丁度いい。




村上の反撃を合図にして殴り合いが始まった。




2対2の接近戦。




相手も喧嘩慣れしているし、俺達も一歩も引かない。




互いに大声を上げる余裕もなく、とにかく早くカタをつけようとめまぐるしく動き回った。




大抵の喧嘩は最初の数発で決まる。




先に相手を驚かせるか、ひるませたら勝負アリというパターンが多かった。




しかし今回はそう簡単にはいかなかった。




俺は金髪坊主と、村上はオールバックの男を相手にしたが、村上がオールバックの男の持っていた棒で額をフルスイングされて倒れた。




助けに行こうとしたが、隙を見せた俺は金髪坊主に服をつかまれ、そのまま柔道の大外刈りの要領で地面に叩きつけられた。




喧嘩は止まったら負ける。




俺は目の前に覆いかぶさっている相手の首に手を回し、裸締めにした。




全力で締め上げたら、プシュっと音がして相手がよだれを吹いた。




もうすぐ落とせる。




すると俺は後頭部を蹴られた。




オールバックの男が俺を蹴ったのだった。




そこで俺はようやく手を話、体を転がしながら立ち上がった。




村上ものそりと立ち上がった。




息付く間もない攻防がようやく一息ついた。




お互いに勝負が付かないと判断したのかもしれない。




気がつけば周りはギャラリーだらけ。




肝心の女の子はとっくに逃げてしまったようで見当たらない。




「警察呼ばれたみたいだよ。逃げたほうがいいぞー」




ギャラリーの一人が言った。




歌舞伎町で揉め事が起これば警察はすぐに飛んでくる。




そういう街だ。




俺達はにらみ合ったまま動かなかったが、相手から先に動いた。




「おめぇら、どこのモンよ」オールバックの男が言った。




不良をやっていれば何百回と聞くことになるし、言う事になるこの台詞。




そして勿論、そう問われたら堂々と答える。




「狛江愚連隊だバカヤロウ。いつでも来いコラ」




村上がそう答えると、相手の金髪坊主が鼻で笑った。




カチンと来てまた手が出そうになったが、「警察だ警察」とまたギャラリーの一人が言った。




その場から逃げるしかない。




俺は去り際に聞いた。




「お前等、どこのモンよ」



~つづく~


井口達也



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