「ダメ!」

そう言って由美が
俺の手を掴んだ。

「時間無いじゃん。俺、読むよ」

「恥ずかしいよ…」

「大丈夫だよ」

何も大丈夫じゃないんだろうけど、
俺は逃げずに
由美の思いを
受け止めたかったんだ。

せっかく勇気を出して
待っててくれた思いに
しっかり応えたかった。

このやり方は
間違ってるんだろうけど。

「恥ずかしいよ…」

顔を赤くして
由美はうつむいてしまった。

封を開けて
中から手紙を取り出した。

二枚に渡って
びっしりと文字が詰まってた。

読み始めていきなり
困った事態が起きた。


漢字が読めなかった。

「由美、ごめん、これ何て読むんだ?」

すると由美は笑った。

「ごめんな、俺、バカなんだよ」

「それは気持ちって読むのよ」

「そっか」

「気持ちを伝えたくて手紙を書きました。って読むんだよぉ」

次の行に進むと、
また読めない漢字が出てきた。

「わりぃ…これは何て読むんだ?」

「もう!どれ?」

何だか由美は嬉しそうだった。

「わりぃ…。俺、ほんとにバカなんだよ。これ」

「児童館って読むんだよぉ」

「わりぃ、次も読めねー…」

「手紙にしなかった方が良かったのかなぁ…」

「良い事思いついた」

「なに?」

「由美、この手紙読んで聞かせてくれない?」

次回
へ続く