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春休み初日、

俺は珍しく一人で過ごしていた。


ワン公は家の用事で
今日は無理らしく、
広斗やアカシに電話しても出なかった。

俺は空手着を持って
道場に行く事にした。

道場の玄関は閉まっていたが、
鍵が開いている窓から入って
一人で黙々と
突きと蹴りの稽古を繰り返した。


この時間だけは
何も考えずに真っ白になれる。

ただ、
この日に限っては事情が違った。


これまでは
学童保育があったから
自然と皆が集まる。

あれだけ嫌がった学童保育も
下級生に慕われるようになって、
遊んであげるというより、
最後の方は俺も純粋に楽しんでいた。

そんな俺も、
四年に上がるので
学童保育からは卒業する形になった。

広斗のように行き続けるのも
アリと言えばアリだった。

寂しさを感じていたのかもしれない。

稽古に身が入らないので、
一汗かいて俺は
道場の真ん中で寝転がって
天井を眺めていた。

漠然と考えていた。

俺は広斗とは違う。

学童保育での広斗を見ていると、
確かに自分も楽しんでいるが、
下級生の遊び相手や
宿題の手伝いをしている印象が強かった。


勉強が出来ない俺は
遊んでばかり。

学童保育で嫌な事は何も無かったが、
自分が弱くなっていくんじゃないかという不安もあった。

一区切りつけて
次へ進もうと天井を見ながら思った。


谷津先生にも
挨拶出来ないまま
春休みになってしまっていたし、
これから児童館に行ってみようと思って
俺は起き上がった。

胴着を道場のハンガーに掛けて、
早速児童館に向かった。

児童館の前に来ると、
女の子が一人
塀に寄りかかってうつむいていた。

次回
へ続く