鱧吸(はもすい) | 侘寂伝文(わさびやブログ)

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鱧吸(はもすい) 

見た目は簡素な吸い物ですが 全ての工程に於いて高度な技術と感性が要求されます 日本料理の献立では上位の仕事に位置し 調理場内でも副料理長級の‟椀方”と呼ばれる熟練者がこれを担当します 

 

椀種の食べ味(鱧)は淡泊な身質の為 副材の組み合わせによって色々な仕上がり方を演出できます 

ご要望がありましたので 簡単に仕事の要点を幾つか下記に述べておきます(分かり辛い分はご容赦を) 
 
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1.鰭抜き(ひれぬき) 

鱧を水洗いした後 中骨に沿って身を開き背びれを取り除きますが ここで雑な抜き仕事をすると 口に生臭い鰭骨が残ってしまい 折角の吸い物の味が台無しです こういう下処理にも細心の注意が必要です 

 
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2.葛打ち(くずうち) 

鱧落としの時より若干(0.5㍉位)厚めに骨切りした鱧の上身を吉野葛で丁寧に打ち粉していきます 吉野葛は加熱する事で凝固しますから 余分な粉を一切つけない様 粉払いしながら1枚1枚素早く葛打ちしていきます ゆっくり仕事していると手の熱で粉が変質するので手早い仕事が必要不可欠です 

 
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3.湯通し(ゆどおし) 

葛打ちした鱧を80度位の昆布出しに潜らせ 7割ほど火を通します(完全に火入れしない事) 1枚ずつ丁寧に葛打ちしていないと見た目が団子状になり 非常に不細工です 湯通し後素早く氷水に落とし 冷めたら水からあげて水気を充分に取ります 

ここまでが椀種の“仕込み(下処理)”です 
 
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4.鰹出し(かつおだし) 

わさびやでは 懐石で吸物を提供する際 提供直前に鰹出しをひきます しかし鰹出しに必要な昆布出しは前日より和らぎ水に浸し充分に戻しておきます ここで何回か述べていますが昆布は“生取り”で旨味を充分に引き出せます “えぐみ”を催す無意味な加熱は絶対に禁物です 
 

昆布出しが沸いたら花鰹を落とし 火加減に注意しアクを救いながら数分コトコト火にかけます 火を止めたら花鰹が完全に鍋底に落ちるまでそのままに 落ち着いたら丁寧に花鰹を漉します 

 

あと注意点は 提供時に椀種と副材それぞれの温度を合わせる事くらいでしょうか 

 
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味は勿論ですが蓋物ゆえ香りも大切です 木の芽を入れて柚子も振って…みたいな何でも沢山入れたら良いというものではないので 椀種に合った香りを選抜し添える事 

 

実際 お客様に提供する際 自らも食してみて味と香りのバランスを体験していくと良いでしょう 

見た目も疎かには出来ません 青いものは青く...その色合いを鮮やかに引き出す事も必要不可欠です