企業の人事担当者に言わせると、最近の大学生は「コミュニケーション能力」を勘違いしているそうだ。
人前で、うまく喋ることがコミュニケーション能力だと思って、やたらに語りまくる者(そして、大半はマニュアルの丸暗記)が多いらしい。
しかし、人事担当者が真のコミュニケーション能力として見ているのは、そこではない。
相手の話に能動的に関わろうとする姿勢であり、相槌であり、質問であり、働きかけである。
私がよく言う「創発的なメモ」、つまり相手の言っていることをヒントにしながら、自分の考えをメモする方法も、これにあたるだろう。
自分がどうであるとか、どんな人物であるとかを主張するのではなく、まず自分の与えられた環境や条件とは何か、相手は何を求めているのかを判断したうえで、自分なりの主張をできるかどうか、なのである。
これを「能動的な受信能力」と名付けてみたい。
企業に入りゃあわかるが、「私はこれがやりたい」などと言っている隙などどこにもない。
組織や上司、そして顧客が何を望んでいるのか、それをまず聞くことであり、それに100%対応した上で、もし可能ならば、アウトプットに「自分らしさ」や「オリジナリティ」をほんの少しだけ表現していくのである。
そして、その自分らしいアウトプットが認められていくにつれ、徐々にその領域を広げていけばいい。
こうして、会社の仕事と自分の仕事のバランスがとれるようになっていく。
広告業界や、他のクリエイティブ産業だって、全く同じことだ。
漫才でいえば、気の利いた「ツッコミ」がきちんとできるかどうか、である。
「ボケ」、つまり自発的に面白いことをいう奴は必要ない。
しかしそのあたりは、普段からやってないとな、ダメなんだよな。
大学の授業なんてのは、大半は社会に出て役に立たないといわれ続けているのだが、しかし「能動的な受信能力を鍛錬する場」として位置づけ直せば、学生にも企業社会にも意義をもたらすのではないかと思う。