昨日、ママ友Aさんのやっている喫茶店に行き、女主人である彼女と話していたのですが。


   ご近所に教育熱心なBさんという人がいて、この人の話になり。


   Bさんは子供を産む前、育児書の編集をしていて、保母さんにとってバイブルともいうべき本を何冊も作ったという人なのですが。


   「小さい頃から子供をこういう風に教育すると才能が伸びる」てなことを周囲の人にしきりに言い、「育児書の編集をしていたのだから、言っていることが正しいのではないか」と彼女の言うことを信じる人も一定数、いるわけで。


   彼女にはいつも数人のおとり巻きがいた。


   彼女の言うことを真に受けて、私のところにもフリマで買ったという七田式の幼児向け英語教材を持ってきて、「Bさんが子供が小さいうちから英語もやらせたらいいって言うんだけど、どう思う?」と訊きにきたママ友もいた。


   私としては「帰国子女を見ていて、10歳前に親が話していない言語を子供が話すと母国語がおかしくなる可能性があるからやめた方がいいと分かった」としか言いようがないのですが。


   そのママ友は、「でもBさんは小さい頃からやらせた方がいいって言ってるし」と不満そうなので、「だったら私ではなくてBさんに訊いたら?あなたは自分に都合がいい意見を聞きたいんでしょ?」と私は言い返し。


   こんな風ですから、私は近所のママ友界では、「キツイおばちゃん」とされていたと思う。


   もうね、Bさんたら罪な人。

 

   私までBさんの教育論に巻き込まれて迷惑っす。


   で。


   Aさんがあるとき、Bさんに「うちに来て、お茶飲まない?」と誘われたので、Bさんの家にお邪魔したところ。


   なぜかそこには、Bさんの他に5人くらいのママたちがいて。


   Aさんの知らない人もいたので、Aさんは、「どうしてこのメンバーと一緒に私が呼ばれたのかな?」と思って、茶を飲んでいたら。


   しばしみんなで和やかに談笑した後、Bさんが仕切り始め。


   「今日は、C君ママのAさんもおよびしていることですから、早速、AさんからC君みたいなお子さんを育てる秘訣をお話いただきましょう!」とBさんはやる気まんまん。


   やる気?


   何をやる気?


   「ご近所のママ友に自慢できる子供を育てる方法を教えてもらおうぜ、野郎共!」というやる気でございます。


   ママ友の集まりだから、野郎共じゃないけどね、おばちゃん共だけどね。


   で。


   Aさんは自分の息子がすごいとご近所で評判になっているとも思っていなかったので、びっくして、「本当に特別な教育はしていませんよ」と言うと、Bさんは「じゃあ、ご主人が特別な方法を」と突っ込んでくるので、Aさんは困ってしまったという。


   で。


   Aさんは、そそくさとその家を後にしたそうですが。


   で。


   ここで私が、「BさんもAさんからトクする話を聞きだしたかったんだから、タダじゃだめじゃん。こういう話をどういう人たちにして欲しいから、って事前にAさんに説明して、カネ払うくらいじゃないとダメじゃん。あまりにも自分の都合だけ考えすぎ。教育熱心な人って、みんな勝手すぎるけど」と言うと、Bさんも破顔一笑、「話す人の都合も考えて、ミニ講演会の講師ってことにするのかあ」と。


   まあ、冗談はさておき。


   Bさんの娘も高校生になり、今のところ、勉強も運動も芸術も、特別な才能は伸びていないようである。


   よってBさんの教育方針は効果なかったようである。


   C君はラグビーで花園に行き、あとちょっと背が伸びたら全日本を目指せるぞ、と監督に言われているので、本当に特別な子だったようである。


   しかし。


   Aさんが言うには、「息子はラグビーで特別、を目指したけど、それが本当に自分に合ってたと思うけど、娘は普通の中学に行って楽しそうだよ。だから、普通が合ってるなら、それが幸せだよ」。


   分かる。


   うちの息子も、「凡人は気楽だから凡人がいい」って自分で言ってるし。


   で。


   要するに、昨日は私もAさんも暇だったんですね、ご近所のママ友の噂話なんて話してたんですが。


   Aさんは作家さんの世界では、特別な人ですが。


   人、それぞれ。


   世のほとんどは凡人でいいんじゃないでしょうか?