ザカートの義務(1)

  第十の原則は喜捨、ザカート(救貧税)である。イスラームに批判的な人は、これが経済制度に関連するイスラームの唯一の原則であると主張する。この理由により私は、喜捨の議論を最後に残しておいた。  
 ザカートは、総資産あるいは実質資本に対する年間二・五%の課徴金である。これは富者から徴収する慈善ではない。政府はこの課徴金を課し、徴収し、その支出をコーランの規定に従って決定する。ザカートを、富者が貧者に与え、貧者がそれを感謝すべき寄付金と解説するのは間違いである。 
 
 政府が税金を課し、その収入を学校、教師の給料、教科書、給食など教育目的に配分するとしよう。学生も教師もこの政府が支給する便益を、特定の経済階級に感謝を表明すべき慈善とは考えないであろう。政府が課税額に関係なく一律二・五%の税金を課す法律を制定し、税収を軍隊に配分するとしよう。我われは軍隊が富者からの慈善をうけていると言うだろうか。