ヒジュラ暦七年アルムハッラム〔一月〕、ハイバルへの遠征(10)

 使徒がアブル・フカイク氏族のアルカムース砦を落とすと、サフィーヤ・ビント・フヤイイ・イブン・アフトブが、もう一人の女と共に使徒のもとに連行されて来た。女たちを連行していたビラールが、ユダヤ教徒の死者たちのそばを通りかかったとき、サフィーヤと一緒にいた女が死者たちを見て叫び声を上げ、自分の顔を打ち、砂を頭にかぶせた。これを見た使徒は、「この女悪魔を連れ去れ」、と命じた。

 使徒がサフィーヤを彼の後ろに立たせるように命じ、自分の外套を彼女にかぶせたので、ムスリムたちは使徒が自らのためにサフィーヤを選んだことを知った。私は、そのユダヤの女がそのような行動をとったとき、使徒はビラールに、「二人を連行したとき、ビラールよ、そなたは彼女に同情しなかったか、彼女は夫の亡骸のそばを通ったのだ」、と言ったと聞いている。

  サフィーヤは、キナーナ・イブヌッ・ラビーウ・イブン・アブル・フカイクの妻だったとき、彼女のひざの間に月が落ちる夢を見た。彼女がそれを夫に語ると彼は、「それは単に、お前がヒジャーズの王ムハンマドを求めていることを意味しているにすぎない」、と言った。そして彼が彼女を激しく殴打したため、彼女の目の周りは黒くあざになった。彼女が使徒のもとに連れて来られたとき、その跡がまだ残っており、使徒がその理由を聞くと、彼女はその話を使徒に語った。