アムル・イブヌル・ジャムーフと偶像(1)

 アンサールはマディーナに帰ると、イスラームを信仰していることを公然と宣言した。

 それでも何人かの族長はいまだにイスラームに帰依せず、古い偶像崇拝を続けており、その一人がアムル・イブヌル・ジャムーフ・イブン・ザイド・イブン・ハラーム・イブン・カアブ・イブン・ガンム・イブン・カアブ・イブン・サラマで、彼の息子のムアーズはアカバに行って使徒に忠誠を誓っていた。

 アムルは族長のなかでも有力な指導者の一人で、名士のしきたり通りに、家の中にマナートと呼ばれる木造の偶像を建て、それを神聖とし清浄に保っていた。
 サラマ氏族のムアーズ・イブン・ジャバルとアムルの息子のムアーズは、アカバに行き共にイスラームに入信した他の若者たちと共に、深夜、アムルの家に忍び込んで偶像を持ち出し、人々が用を足す穴に偶像を頭から突っ込んだ。
 朝になるとアムルは、「何という災いだ、昨夜、我らの神を持ち出したのは誰だ」、と叫んだ。

 彼は偶像を探しに外に出て、それを見つけると洗浄して香水をかけ、「神にかけて、この犯人を見つけたならば、彼を侮辱してやる」、と言った。

 また夜になるとアムルは早々と眠りにつき、若者たちは再びやってきて偶像を持ち出し、朝になるとアムルはそれを取り戻した。


アラジン3世のバイトルヒクマ(知恵の館)-アラビア偶像崇拝