ライトノベル 【Bom!No!!】 001:諦めることを諦めた(1)
連なった山の間から、
太陽が顔を出し始めた、朝方5時。
淡い雲がオレンジ色に染まる。
まるで歌でも歌っているかのように、
すずめが鳴いている。
心地よい風。
また新しい一日が始まる。
俺は今、猛烈に感動している!
生きていることが、こんなにも素晴らしいだなんて!!
口に出したら赤面確定な、
そんな物思いにふけりながら、朝日を見つめる。
朝焼けが、目に染みるぜ☆
………。
なんてもんじゃないっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
目がぁ、目がぁ~。
チカチカするぅぅぅ!!
3分間待ってくれ。
10分間休憩しよう!
いや、もう終わりにして下さい!!
さすがに、もう朝方です。
このゲーム地獄から、
いい加減に、抜けさせて頂きたい。
それに、かつて高橋名人が言っていたじゃないか。
『ゲームは1日1時間』
当時の子供たちにとって、
母親にプレイ時間を強制させるきっかけを生んだ、
魔の呪文。
当然、俺もその被害者の一人だ。
だが、この言葉に隠された本当の意味を知った時、
俺にとって、この言葉は、どんな偉人の言葉よりも名言となった。
『決して、子供を持つ母親のためのリップサービスではないのです。
子供は成長する上で、様々な経験をつまなければならない。
TVゲームで遊んでばかりいるのではなく、
様々な遊びをするから、成長できるのです。』
しかし、
俺の横にいる、
この女は、
このゲーム一点においての成長、
いや、正しくは、
『勝利』
の二文字を望んでいる。
『諦めることを諦める。』
それがこいつの行動理念なのである。
例え、TVゲームだからといって、
負けたままでいることなど許されるはずがない。
『ゲームは1日1時間』
その意味を履き違えた、当時の肝っ玉母さんでも、
きっと、こいつは止められない。
いや、むしろこいつなら
「ゲームは一日 『最低でも』 一時間。うまくなりたいなら精進しなさいって意味よ。」
と、履き違えたことにも、全く気付かず、
便所サンダルで、
100mを
11秒フラットの
高校女子日本新記録で、
駆け抜けていくに違いない。
「さすがに次がラストだ!!」
「私が勝つまでやめれると思ってるの? このボケナス!!!!!!!!!!!!!!!!!」
涙で、
余計に、
朝焼けが、目に染みるぜ☆