西島秀俊さんのトークショー@シネマート六本木 | ひょうたんからこまッ・Part2

西島秀俊さんのトークショー@シネマート六本木

イベント・レポ
「東京フィルメックスの軌跡~シネマート六本木」
西島秀俊トークショー

10月31日(土)開場 12:45/開映 13:00~
『ブリスフリーユアーズ/Blissfully Yours』タイ映画上映後
<トークゲスト>西島秀俊

ひょうたんからこまッ・Part2

トークショー当日からまたまた大分日が経ってしまいました。
記憶もかなり曖昧になってきていますが、
やはり一応記録だけは残しておこうと思います。
例によってメモと怪しい記憶に頼ったレポですので、
細かい部分は突っ込まないでくださいね。
リトル★ダックさんがチケットを押さえてくださったので、
この貴重な場に参加することが出来ました。
当日会場でリトル★ダックさんと出会うまでは
諸事情でちょっとドキドキしたり(笑)もしましたが、
お陰でこの機会が無ければ多分観ることはなかったであろう、
タイ映画:アピチャッポン監督の作品に出会い、
西島さんの映画への思いの片鱗にも触れることも出来て、
本当に貴重な体験をさせていただくことが出来ました。
リトル★ダックさんに感謝、感謝、です。

本来は、トークショーのレポの先に、
『ブリスフリーユアーズ/Blissfully Yours』 と言うタイの映画と、
この映画の監督アピチャッポン・ウィーラセタクンと言う人についての説明が
必要だとは思うのですが、
とりあえず記憶の薄れぬうちにトーク部分から先に記録します。

西島さんが2005年開催の第6回東京フィルメックスで審査員を務められ、
以来この映画祭に毎年通いつめていることは有名ですが、
西島さんとアピチャッポン・ウィーラセタクン監督との出会いもまた
このフィルメックスが導いたものだったそうです。
西島さんが審査員を務める前年の第5回東京フィルメックスの
コンペティション作品として上映されたのが
アピチャッポン監督の『トロピカル・マラディ』と言う作品。
『トロピカル・マラディ』は同年開催されたカンヌ映画祭で
賛否両論の渦を巻き起こしつつもタイ映画史上初の受賞を果たした作品ですが、
アピチャッポン監督の作品はどうやらどれも一筋縄ではいかない凄い作品。
初めてこの作品に出会ったとき、西島さんもかなりの衝撃をうけたそうです。
アピチャッポン監督の作品は、この後の第7回東京フィルメックスでも、
『世紀の光』が特別招待作品となっていますが、
西島さんがまず会場内の私たち観客に放った言葉が、

「・・・・羨ましい」。

アピチャッポン監督の名や彼の作品を見聞きしたことのある人は?と問われ、
手を挙げることが出来たのは会場内でも本当に僅か数名
殆どの人が私と同じく上映される映画の情報すら知らない人ばかりでしたが、
その無知な私たちのことが「羨ましい」と、西島さんは言うのです。

「ああ、あの映画を初めて観たときの衝撃!!
その新鮮な衝撃を今初体験しているあなたたちが羨ましい!」


・・・と感じるのだそうです。

とにかく先の予測のつかない展開と描写の連続に対するドキドキ感は
他の監督の作品には観られないものだそうで、
アピチャッポン監督の作品に出会って初めて、
「映画って、こんなに自由なんだ!」と感動したそうです。

今回改めて監督の作品を鑑賞し直してきたと言う西島さんのお薦めは、
当日の夕方に同劇場で上映された『トロピカル・マラディ』でした。
カンヌで受賞しているからと言うわけではありませんが、
「これも『ブリスフリーユアーズ』以上に凄い作品だから是非観て行って欲しい。
油断して観ているととんでもない世界に引き込まれてしまう。
ネタバレしないように簡単に言ってしまうと、トラに変身してしまう人間の話。
『ブリスフリーユアーズ』同様ここでも森が登場する。」
・・・と語る西島さんの幸せそうな表情に、
思わず私たちの気持ちも誘われてしまうのだから不思議です。
当日時間的な余裕さえあれば、私は『トロピカル・マラディ』を観て帰りましたから。
それほど西島さんのアピチャッポン監督作品にかける思いは、
ストレートに私たちに伝わったのでした。
因みに西島さんは渋谷のイメージフォーラムで
10分くらいの短編も観ているそうですが、
そこにも森が出て来たそうです。
残念ながら上映スケジュールと都合が合わず、
結局西島さんお薦めの不思議映画
『トロピカル・マラディ』
を観ることは出来ませんでしたが。
同監督の第7回東京フィルメックス招待作品の『世紀の光』ですが、
こちらも凄い作品だそうで、
「日常のすぐそこに私たちの知らない世界がある。
神秘的で得体の知れない世界がある。
輪廻転生も何となく監督の作品テーマだと感じていたが、
今制作中の最新作には、よりはっきりその傾向が表れているように思われる。
その結果も来年観られるんじゃないかな。。」

西島さんは今年の春にも監督本人と会っていますが、
監督自身は決してとっつきにくい人ではなく、
穏やかで知性の重みを感じられる人だそうです。
「映画も決して何かを狙って撮っているわけではなく、
誰の影響も受けず、自由な感じ方が出来る作品になっている。
狙ってるのか素で撮っているのかは観ていて分かる。
脚本無しでリアリティを追求しているのだと思っていたのだが、
ある時本を見たらちゃんと絵コンテが書いてあっあので、
書いたりもするんだ・・・と思った(笑
『サヨナライツカ』の撮影でバンコクを訪れていたとき、
監督と一緒に飲みに行く機会があったが、
助監督を始めクルーが凄く若かった。
少人数の熱意の有る若い人たちが監督のクルーだったんだ。」

『マッハ!!!!』や、『チョコレート・ファイター』のような豪快なアクションも
タイ映画として大好きで楽しんでいると言っていた西島さんですが、
『トロピカル・マラディ』は、一方タイ映画で始めてのカンヌ受賞作品となります。
特殊な作品を作る監督なので、新作が本当に楽しみなのだそうです。
『世紀の光』は・・・、ネタバレしてしまうけど簡単に言えば、
<しばらく戻ってこない息子が帰ってきたらサルになっっていた!!!>
と言う話。
これも脚本などあるのかと思っていたが、
脚本はちゃんとあったんだ(笑。
とにかく俳優たちの説得力の有る演技に驚かされる。
この『ブリスフリーユアーズ』に出て来るおばさんは、
あまりにリアルにおばさん過ぎて芝居臭さが感じられず、
プロの人ではないのかも、と思わせるほどの説得力にある演技に驚いたが、
『世紀の光』にも彼女は出て来る。
監督は役者の使い方が本当に上手いと思う。
最新作がこれまた奇想天外な物語で、姿を見なかった息子が猿人になる?
・・・みたいな物語で楽しみにしている。」
※おばさん役=Jenjira Jansudaと言う女優さん

次にフィルメックスの話題に移りました。
「フィルメッックスが面白いのは、
『バッシング』(小林政広)と『あひるを背負った少年』(イン・リャン)、
『SPL<殺破狼>』(ウィルソン・イップ)が、
同じコンペティション作品に入ったりしていること。
こんなこと、フィルメックスくらいしかない。
中国のインディペンデント映画から、香港アクション映画まで、
ラインアップを観ていると感心してしまう。
まだ僕の観ていない作品も沢山あるし。
フィルメックスでファンになった監督もいる。」

ただフィルメックスのパンフレットは説明が分かりづらいとちょっとご不満の様子。
「でもプレスのようにあまり説明され過ぎていても困る。
自由に鑑賞するのが見るものの楽しみであり特権であるから。」

アピチャッポン監督の作品は政治的な要素も含まれているようですが、
それを声高に訴えてはいないそうです。
西島さんは、色々な映画があっていいと言います。
そして最後にこのひとことで結びました。
「色々な映画があっていい。
(娯楽作品のように)分かりやすい映画があってもいい。
日常を変えるような映画との出会ってほしい。
残念なことにそんな機会は段々減っているが、
そのためにもみんなにフィルメックスに映画を見に来て欲しい。
僕も大抵ここには観に来ているし(笑。
映画を観ることで日常が変り、
思い込みや偏見から開放されて自由になる幸せを感じて欲しいと思う。」

『ゼロの焦点』 の公開日(11月14日)も、自信無さげ、
『サヨナライツカ』 (来春1月23日)の公開がいつかも、
問われて答えに詰まった西島さん。
今はドラマでも大活躍ですが、過去は振り返らない、
本当に映画と演技が好きな生まれついての役者なのだなあと思いました。

本当に映画の世界が好きで好きで、
映画の世界に生きている人なのね、西島さん!!!