君がそばにいたあの日~テラビシアにかける橋 | ひょうたんからこまッ・Part2

君がそばにいたあの日~テラビシアにかける橋

『テラビシアにかける橋』
BRIDGE TO TERABITHIA
(2007年・アメリカ/95分)
公式サイト
1月17日(木)
平塚シネプレックス試写会にて鑑賞

スタンド・バイ・ミー・・・。

いつも傍にいてくれると思った。

何時までも一緒にいられると思っていた。

別世界へ繋がる魔法の綱にぶら下がり、

まるでターザンのように不思議の国へと飛んだ日・・・

あの日から僕の住む世界が変った。

二人はテラビシア国の勇敢な王と王女。

君と過ごすキラキラした時間。

僕は・・・永遠に続くと思っていた。
テラビシア
<スタッフ>
監督:
ガボア・クスポ
原作:「テラビシアにかける橋」キャサリン・パターソン
脚本:ジェフ・ストックウェル、デヴィッド・パターソン
音楽:アーロン・ジグマン
撮影:マイケル・チャップマン
<キャスト>

ジェス・アーロンズ:ジョシュ・ハッチャーソン
レスリー・パーク:アナソフィア・ロブ
エドマンズ:ズーイー・デシャネル
ジャック・アーロンズ:ロバート・パトリック

メイベル・アーロンズ:ベイリー・マディソン

Brenda Aarons:Devon Wood
Ellie Aarons:Emma Fenton
Joyce Aarons:Grace Brannigan

Bill Burke:Latham Gaines
Judy Burke:Judy McIntosh
Grandma Burke:Patricia Aldersley
Janice Avery:Lauren Clinton
Carla:Isabelle Rose Kircher
Scott Hoager:Cameron Wakefield
Mary Aarons:ate Butler

<原作小説賞歴>
スクール・ライブラリー・ジャーナル最優秀図書賞(1977)
ALA(アメリカ図書館協会)優秀児童書賞(1977)
ニューベリー賞(1978)
ルイス・キャロルシェルフ賞(1978)
銀の鉛筆賞(1981、オランダ)
ジュニア文学賞グランプリ(1986、フランス)


以下あらすじ・ネタバレを含みます。

『スタンド・バイ・ミー』を思わせるあやうい思春期の揺らめき。

それは、少年が大人になる入り口で体験した冒険だった。

『ビッグ・フィッシュ』を思わせる現実とファンタジー世界の交錯。
ふたりはファンタジーの世界を現実にした・・・。

この過去の2つの作品に、ふと想いを馳せてしまいました。
貧困・いじめ・父子のすれ違い・・・。

『テラビシアにかける橋』は、
アメリカの児童文学作家キャサリン・パターソン作の
同名の児童文学作品を原作としており、
1985年にはテレビ映画も製作されています。
この物語の主人公・思春期の少年ジェスの毎日は、

心を塞がれる現実と向き合うことしか許されない日々でした。

唯一ジェスが自分らしく過ごすことの出来る時間、

それは大好きな絵を描いているときでした。

父親と母親は日々の暮らしに追われ、

そんなジェスの才能や個性などには見向きもしてくれません。

父親の口ぐせは「現実を見ろ」

ジェスは自分には厳しい父親の愛情が、

全て末娘のメイベルにのみ向けられていると思っています。

学校に行けば上級生にも同級生にも苛められる日々。

ジェスが得意な走りを披露できる徒競走大会だけが、

ヒーローになれるかも知れない唯一のチャンスでした。

その彼の俊足を打ち破ったのは、転校生のレスリー

初めは変人に見えたレスリーですが、

実は豊かな感性と、強い自我の持ち主でした。

彼女との出会いでジェスは次第に変っていきます。

ジェスだけではなく、周囲の人間まで変えていくレスリーの魅力。

そのレスリーと二人だけで過ごす時間は、

ジェス「現実」以外にも、

見る事の出来る世界見える物があることを教えてくれたのでした。

別世界へといざなう魔法の綱を握って川を渡り、

二人だけの牙城で目に見えぬ「ダークサイド」たちと戦う日々。

二人の過ごした時間は、二度とは繰り返すことの出来ない、

その瞬間だけの魔法の時間でした。

私たちは、知らず知らずのうちにそこに、

幼い頃に過ごした自分たちの懐かしい時間を重ね合わせています。

全てが輝き、何でも可能にすることが出来たあの日々。

空想の中の出来事が現実になっても不思議では無いと、

素直に信じることの出来たあの時代。

・・・あの頃に感じたワクワクした気持を、

私はスクリーンの中に見出していました。

やがてその世界にも終わりがやって来ます。

そして何故か常に「終わり」は痛みを伴ってやって来る・・・。

この物語でも、ジェスにとって耐え難いほど辛い試練が与えられます。

ほんの一瞬の自分の選択が、

彼のその後の人生に後悔と罪の意識をもたらすことになるのです。

しかし、その大きな壁を乗り越えた時、

ジェスの周りには、彼を愛してくれる人々の存在が見えて来ました。

両親も、姉達も、うるさい小さな妹も、

自分を見ていてくれるということ・・・。

意外な所にも、自分のために立ち上がってくれる人がいるということ。

たったそれだけの事に気付くことが、

少年にとってどれだけ大切なことだったか。

一歩大人になった少年は、自分のことだけを顧る生活から、

自分以外の人の気持を汲み取り、

守るべき者は守れる戦士へと成長していくのでした。

ジェスが妹メイベルを王国へと誘うラストシーンは

身震いするほど感動的です。

とにかくアナソフィア・ロブの魅力が光ります。

『チャーリーとチョコレート工場』ヴァイオレット役よりも、
『リーピング』ローレン役の方が深く記憶に残っていましたが、

この作品で魅せた彼女の表情は、さらに印象的なものになりました。
ここで描かれるレスリーに魅力が無ければ、この物語は成立しません。

その意味でアナソフィア・ロブの笑顔は、
「言葉」よりも大きな力を持っているように感じました。

この作品で果した彼女の功績は、大きいと思います。

また主演のジョシュ・ハッチャーソンも、
思春期に迷う少年の心を巧く表現しています。
父親との関係に悩み、その父の投げかける言葉によって、
「逃避したい現実」に度々戻されてしまう時の、
苛立ちや焦燥感を実に巧みに表現していたように思います。

さらに好演が光っていたのは、ジェスの妹メイベル役のベイリー・マディソン
幼いながらも大人顔負けの演技に目を見張りました。
個人的にはアビゲイル・ブレスリンや、
ダコタ・ファニング以上の子役に成長して欲しいと思っています。 

新年早々、素晴らしい作品に出会うことが出来ました。
久しぶりにファンタジー・ジャンルに属する作品で、
大変な満足を得た気がしています。

これは大人の心に届くファンタジーです。
大人になってしまった人にこそ、観てもらいたい作品です。
「テラビシア」とは『ナルニア国物語』シリーズに登場する島名
「テレビンシア」から命名された架空の国のことだそうです。
原作を読んでみたくなりました。
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