男の友情と映像美~Exiled 放・逐 | ひょうたんからこまッ・Part2

男の友情と映像美~Exiled 放・逐

『放・逐~ Exiled』
(2006年・香港/108分)
公式サイト
第8回東京フィルメックス特別招待作品
11月18日(日)有楽町朝日ホールにて鑑賞
放逐  放逐
9部門ノミネート/1部門受賞作品

Best Film ノミネート (Asian Film Awards 2007)
Best Director ノミネート, 杜[王其]峰(ジョニー・トー) (Asian Film Awards 2007)
Best Film ノミネート (Hong Kong Films Awards 2007)
Best Director ノミネート, 杜[王其]峰(ジョニー・トー) (Hong Kong Films Awards 2007)
Best Cinematography ノミネート, 鄭兆強 (Hong Kong Films Awards 2007)
Best Film Editing ノミネート, David Richardson (Hong Kong Films Awards 2007)
Best Action Choreography 受賞, Ling Zhen Bang, Huang Zhi Wei (金馬奨 2006)
Best Picture ノミネート (金馬奨 2006)
Best Director ノミネート, 杜[王其]峰(ジョニー・トー) (金馬奨 2006)
Best Film Editing ノミネート, David Richardson (金馬奨 2006)


<監督>

杜[王其]峰(ジョニー・トー)・・・Johnny To
<Writers>
Kam-Yuen Szeto (written by) and Tin-Shing Yip (written by)
<出演>

黄秋生(アンソニー・ウォン)/Anthony Wong Chau-Sang : /Blaze
呉鎮宇(フランシス・ン・ジャンユー)/Francis Ng : /Tai
張耀揚(ロイ・チョン)/Roy Cheung :/Cat
林雪(ラム・シュ)/Suet Lam :阿肥/Fat
張家輝(ニック・チョン)/Nick Cheung : 阿和/Wo
任達華(サイモン・ヤム)/Simon Yam : Boss Fay
任賢齊(リッチー・レン)/Richie Ren : Sergeant Chen
何超儀(ジョシー・ホー)/Josie Ho : Jin
張兆輝(チョン・シウファイ)/Siu-Fai Cheung : Jeff
陳雅倫(エレン・チャン)/Ellen Chan : Hooker
許紹雄(ホイ・シウホン)/Shiu Hung Hui : Sergeant Shan
Ka Tung Lam : Boss Keung
放逐


2回目の体験でジョニー・トー監督の世界に酔う。
今回は細かい内容には極力触れずに書いていきたいと思います。
東京国際映画祭で鑑賞した『マッド探偵』に続きこの『放・逐』が、、

2回目のジョニー・トー監督作品体験となります。
冒頭からまず、映像の持つ力に惹き込まれました。
houtiku

とにかく、カメラワークが素晴らしいです。

ある情景をひとつの画面に納める為の、

緻密な計算と完成された構図。
ひとつのアングルから滑らかに移動していくカメラの目線。

ある場所を定点にゆるやかに動くカメラは、

まるで生き物のように登場人物を追い、その背景となる景色を切り取ります。

さらに、ワンカットごとに静止した時の「絵」的な構図の美しさ。

四角いスクリーンの中に、人が、ものが、

実に見事なバランスで納まっているのです。

特に、はっとさせられるほど斬新な構図に人物を配置したシーンは、

今でも強く印象に残っています。
放逐

俯瞰で全体を見下ろすシーン、逆に下から上を見上げる構図。

視点を変えることで、活劇シーンがさらに立体的なものに変っていきます。

冒頭アパート2階で繰り広げられる銃撃シーンでは、

赤子に乳を飲ませる女や部屋を仕切るカーテンの動きと、

男たちが撃ち合うアクションのシーンとの対比による

静と動の絶妙なコントラストを観ることが出来ました。

またクライマックスのホテルの銃撃戦には、

さらに芸術的とも言えるシーンが登場します。

「猫(ロイ・チョン)」の得意なビールの缶打ちで、
空中に高く舞い上がるビールの缶・・・。
この缶の行方をスローモーションの俯瞰図で映しつつ、

同時に銃撃戦の全体像を俯瞰で描いたシーンは、

『マトリックス・リローデッド』「ある懐かしいシーン」

思い起こさせるものでもありましたが、

この表現方法がここで実に効果的な役割を果たしています。


『マッド探偵』にもこのような絵画的な美しさを感じましたが、

この『放・逐』におけるカメラの視点・動線・構図には、

ジョニー・トー監督自身の美学を見たような気がしました。

まだ、監督の作品を殆ど観たことの無い私が

このように書いてしまう事は、大変におこがましく恥ずかしい事ですが・・・。
放逐

この緻密な計算は作品の絵的な部分だけではなく、

ストーリーにも見て取ることができます。

先日も書いたように、、

この『放・逐』1999年の同監督の大ヒット映画

『槍火(邦題:ザ・ミッション)』の続編となる作品らしいのですが、

残念なことに私は『槍火(邦題:ザ・ミッション)』を観ていません。

しかし、この『放・逐』は前作品を観ていなくても、

十分物語に入り込むことが出来ました。

「笑い」「緊張」を絶妙なバランスで配合しながら、

ちょっと複雑な事情のある「男たちの友情」を描いた物語です。

阿肥阿和の5人。
奇しくも命を狙われることになった阿和(ニック・チョン)

彼の命を狙う火(アンソニー・ウォン)阿肥(ラム・シュ)
そして阿和の命を守ろうとする泰(フランシス・ン)猫(ロイ・チョン)

絡み合っては解ける彼らの友情に笑わされたり、泣かされたり。

そこにはストレートな「男の世界」「男の美学」が描かれていました。
ラストシーンも、思わず泣かされてしまう憎い作りになっています。

あれだけ途中で人を笑わせたくせに、監督ズルイ・・・。
放逐

もともと私はこういった傾向の作品(男の友情を描いたもの)が大好き。

映像の持つ魅力と共に、予想外に面白いストーリーに出会い、

すっかりジョニー・トー監督のファンになってしまいました。

キャストでは、キャット役ロイ・チョンさんと、

(見たまんまの役名?)ファット役ラム・シュさんが気になる存在です。

そして、金塊警備員役リッチー・レンさんも、すてきでした。
放逐

冒頭からラストまで、決して眠くはならないこと請け合いの作品です。

香港系の映画には、ハリウッドや韓国の作品には無い美学を感じます。

香港の作品に共通して感じることは、

映像にも脚本にも「隙の無い構成力」があることです。


・・・それにしても「あの娼婦」「ちゃっかり加減」ときたら、

最初から最後まで転んでもただでは起きないタイプの人でした。

『マッド探偵』でも女の鬼が作品の要の存在になっていましたが、

監督が描く女性は、ちょっとずるくて、ちょっと怖くて、

それでいて案外物語のキー的な存在だったりしているような?

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