四位一体   ユング |   心のサプリ (絵のある生活) 

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三位一体の立像というか、モニュメントみたいな像はヨーロッパにはたくさんあるが、ユングは、この三つの父、息子、霊の他に、悪魔を加えた四位一体を考えていた。


これは何を意味するのか?


花輪の「刑務所の中」を読んでいて、子供をあやしているある男が友人から人を殺すところを見に来ないかと誘われて見に行ったという記述があり、私はこういう話はほんとうに嫌いなので、ページを飛ばそうかと思ったが、実話なので、つくづく人間の悪について考えるはめになってしまった。

 新聞を見ても最近は、息子が親を殺す親殺し、そして、幼児虐待などの子殺し、また、保険金目当ての殺人やら、女房と離婚するためにわざわざ男に金を払って浮気させその現場写真で妻を脅したり、ネットで殺人をつのったり、まあ、まるでソドムとゴモラの街のごとく、日本もまた悲惨で陰惨なる国家と成り果ててしまった観がある。

 義理や人情、死ぬと分かっていて誰かのために命をかけるような話がつい30年前まではヤクザ映画でさへ人気を博したものなのに、今や、ヤクザも義理人情に熱い人間などどこにもいなくなって、守銭奴と化している。


 ところで、ユングのこの神=父の明るい面を代表している「息子」と、その悪、暗い面を代表している「悪魔」を考えてみると、西洋のB級ホラーでもよく描かれているように、「悪魔」もまた、神の息子には違いないのである。

 堕天使という言葉があるが、天使が墜落したイメージか。

 妙なる言い方だが、ユングは悪があることこそ、神の存在証明としたような気配があると思う。
 一般的にキリスト教の牧師などはそういう分析はせずに、父なる神が絶対的な善であるならば、神が造り出した世界に悪が存在することが説明できないと、考えているのではないか?


悪は「善の欠如」というようなprivatio boniとして説明するらしいが、こじつけもはなはだしい。

 ユングはだからこれに満足せずに、悪という対立物が存在するからこそ、善が存在すると彼は考えるのだ。


 西洋の書物の中でも、悪魔学という分野があるが、これも私が若い頃に調べたところ、悪ガキが母親の気をひこうとして悪さをするような「深層心理」があると言う。
 真の無神論者と彼等は違う。

 神がいなければ、悪魔も堕天使もいないことになるからだ。


 そのような虚無論者よりは悪魔学の連中はまだ神の存在に憧れているということになる。


 すこし穿った見方をすれば、西洋から巣立った、これらの「息子」「悪魔」を含む「霊」という四位一体は、結局は、資本主義と、絶対的な一神教、グローバリズムを育てたという言い方も可能かもしれない。

 ユングは私はまだ詳しくは知らないが、この四位に「霊」を入れたことによって、絶対的な一神教よりも少し幅の広い、ゆとりのある、多神教的な存在もまた視野に入れている、そんな気もする。
 最後の最後に、東洋的なものに救いを見つけようとしたユングには私はその意味でも、気になる存在ではある。

 アバターという映画があり、宮崎駿のファンであるキャメロン監督が、絶対的な一神教的な世界から、まるで「もののけ姫」のような多神教的な、(日本人から見ると非常に好ましいというか、懐かしいというか、自然であるところの)森の中の世界を、提示したということは、シンクロではないかとも思う。


 単純な二元論ではもはや地球は救えない。

 自分が絶対だと思うような人間は結局は、同じように考えている人間と対立するのは当然である。
 しかしながら、だからといって、相対主義の中で日々あっぷあっぷして魂のよりどころさへ見つからないで苦しんでいる、自殺王国の日本が、さらに上の次元の国家とはとても言えないだろう。

 歴史的に見れば、いくらでも民族の誇りとしての日本人の長所や、思想、生活の見事な工夫などの「おそるべき積み重ね」がある日本であるのに、皆それを大切にしないで、金儲けに奔走している。

 小さな頃から母親の二重心理や、極めて貧乏な家に育ったユングは裕福なる友人とのギャップなどから神経症に悩み、かなりのオバケのような感受性を持つようになったのだろう。
 河合隼雄氏の「中年クライシス」にも記されているが、彼もまた、中年期に、相当の神経症を発症し、そこからの脱出することでまた新しい彼の道が開けることになったことが思い出される。

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