あるところにとってもおかねもちなのに、とっても、けちんぼうな男がいました。
なんとかぞくにおいしいものを食べさせるのが惜しいと。
だからかぞくなんかいらないというどうしょうもない男でした。
ある夜のこと。<
そんな男のところに、ほっそりとした、すきとおるような、しろいはだの黒髪の美女が、
「わたし、ごはんをたべないで、ちゃんと
よくはたらきますわ だから あなたのにょうぼうにしてください 」
「ええええ?」
「ごはんをたべないでちゃんとはたらくなんて、うそだろう? 」
「さあ あさごはんよ。 あなたにたべてもらいたいいっしんで いっしょうけんめいつくりました。」
「ほんとうだ、すごいごちそうだ」
「うまいうまい、ごはんをおかわり」
「おや、おまえはたべないのかい?」
「ええ、あなたがたくさんたべてくれれば、わたしはまんぞく」
にょうぼうは、にこにこ、わらっているだけです。
ひるになっても、よるになっても、さらに次の日も、その次の日も、ごはんがたくさんでてきて、またおいしい。
「うまいうまい、ごはんおかわり 」
「おや、おまえもすこしは、食べたら 」
「ええ、あなたがたくさんたべてくれれば、わたしはまんぞく」
にょうぼうは、にこにこ、わらっているだけです。
またその夜、いいかおりのするあたたかなお酒に、やまめのしおやき、ふろふきだいこん、きんかんのかんろに、まだまだいっぱい。
「うまいうまい、おさけもおかわり 」
「あの、ほんとうにおまえ食べないのかい? 」
「ええ、あなたがたくさんたべてくれれば、わたしはまんぞく」
にょうぼうは、にこにこ、わらっているだけです。
おとこは不思議でした。
あさはやくから、よるおそくまで、なにもたべずに、よくはたらき、ほとんど休むこともありません。おまけにいつもにこにこと、ますます、うつくしくなるばかりでしたから。
「うーん、ほんとうになにも食べずにあんなにはたらけるものなのだろうか?」
不思議で不思議でその夜は男はねむれませんでした。
だいどころからは、あすのあさのためのごはんのしたくのおとがきこえてきます。
男はますます眠れません。
すると、真夜中のことです。
「がったん」とつぜん、おもての戸があく音がしました。
そしてだれかが、ひつそりといえをでていくしずかなあしあと。
「おや、あのあしあとはにょうぼうだ。こんなおそくにどこへいく?」
にょうぼうが向かったのは、いえの裏のだいこんばたけ。
なんだ、あしたのだいこんをぬきにきたんだ、そう思って男がこえをにょうぼうにかけようとおもったそのしゅんかん。
「おおおおおおっ うまい、うまい」
どろまみれのだいこんを三本一緒にそのももいろのちいさなくちびるでまるごとかじったのです。
つぎに、おとこがこおりついてうごけないまま、見たのは、うしごやにいくにょうぼう。
「おおおおおおっ うまい、うまい 」
いっぺんにりょうてにさんとうずつ、うしをひきずりだして さくらのつぼみのようなくちで、なまにくをむさぼりくいはじめるではありませんか。
「でも、こんなではものたりないから」そうにょうぼうはつぶやくと・・・・
うつくしいくろかみのなかから口が。
「でもちょうどよいころあいだったわ。おまえもおいしそうにふとってきたし、さあではたべるとしようか」
おとこはこしをぬかしそうになりながらむがむちゅうでにげだしましたが、とうとう、にょうぼうにおいつかれて、あたまからばりばりとたべられてしまったということです。
おしまい。
この民話はどの地方の民話なのか調べてみたくなりますね。笑い。
ある日、うつくしい女があらわれて・・・
いろいろな物語をつくっていくんですね。
女性とはまったくもって不思議な生き物ですよ。
そんな庶民のため息のなかからこの民話が生まれて語り継がれて来たんですかね。
ああ、おんなは・・・
いやいや、そんな一般論でくくってはいけません。
ひとりひとり女性の個性はちがうんですからね。