与論島の野鳥 No32 アカショウビン | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No32 アカショウビン

「広報よろん」 平成2年(1990年)8月30日発行 第158号

 

 

 

・アカショウビン

     カワセミ科

        方言名:

 

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アカショウビンに会いたくて山奥の分校に転勤した先生がいる。
アカショウビンを求めて北海道へ移住した動物写真家がいる。
アカショウビンを見たと聞いて翌朝奥秩父へ飛んだ漫画家がいる。
アカショウビンの声が聞きたいと土砂降りの中をでかけた奴がいる(筆者)。


昔、岡倉天心は「薬師寺三尊をまだ見てない人があるならば、私は心からその人を羨む」と言ったそうだ。
あるものに初めて接した時の感動が大きければ大きいほどこういう表現が生まれるのだろう(辰濃和男)。


この「薬師寺三尊」をそのまま「アカショウビン」に入れ換えても決して誇張だとは私は思わない。


朱色のくちばし、紫を帯びた赤い翼、炎のような赤い体腰にはコバルトブルーのワンポイント、そして「キョロロロー」と尻すぼみに鳴く哀愁を帯びた声。
その姿を一目見たら、その声を一度聞いたら二度と忘れることはできない。
アカショウビンはそんな鳥である。

 

 


彼らは梅雨と一緒にやって来て、深い森におおわれた沢に住む。
彼らは雨の妖精である、彼らは森の妖精である、と私は思っている。


そんな彼らも人間の倣慢さには抗しきれなかった。
昨年の9月、住み処の伐採で親とはぐれて衰弱している幼鳥を保護した。
今年の5月には翼を傷めた成鳥が持ち込まれた。


ノグチゲラやヤンバルクイナにしろ、このアカショウビンにしろ、開発の名による森林の伐採などで、俗世間に引きずり出された深緑の住人たちである。

                                               (ヨロン野鳥友の会)

 

 

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