「マンガ嫌韓流」が発売されて一週間が経った。Amazonの和書ランキングでは、「性器が描写されていて警察から指導が来た」性愛書に一時首位を譲ったものの、8/1時点では再び堂々の一位。著者のサイトに依れば、初版3万部、発売前に1万部の増刷が決まり、発売直後にさらに6万部の増刷だそうで、計10万部となったそうだ。 このブームがAmazonだけではない証拠に、「嫌韓流」をググってみると良い。ハン板にあった報告よれば発売に前後して「嫌韓流」のヒット数がものすごい勢いで増えているそうで、実際8/1の16時時点ではなんと52万件にも達している。
 これほどの現象にもかかわらず、ここ数年来マスコミ(電通?)の作った「韓流」の虚像への致命傷となりかねないためか、大手マスコミはだんまりを決め込んでいる。いまのところ唯一「週刊朝日」のみがこの話題を取り上げているようだ。後述の通り、特に左派メディアはこの話題を黙殺すると思っていたから驚いた。その中吊り広告を見た限りでは、嫌韓の風潮を揶揄する内容のようにも思える。個人的には、香山リカあたりにコメントさせて「ぷちナショナリズム」だとか何とか言わせているのではなかろうかと踏んでいるのだが。それにしても、縦え悪意に充ち満ちた記事であれ、このような現象があることを伝えるだけでも、黙殺するよりは潔い態度である。取材をしておきながら報道しなかった文春および産経新聞は反省するように。

 W杯以来の「作り笑顔の日韓友好」は、竹島の日狂想曲や教科書問題騒ぎなどで一気に褪めた感がある。マスコミでも未だに真剣に韓流などと言って浮かれているのは女性週刊誌ぐらいのものだろう。そんななか、もしこの「嫌韓流」がヒットし社会問題ともなれば、日韓双方とも今の認識のままでの日韓友好などあり得ないという事実が、白日の下に晒されることは間違いない。だからこそ左派勢力は、今回は表だっては批判しないだろう。「論ずることが右翼の土俵に上がることになるから、このような低俗な本は相手にしない」という態度を取るものと予測する。WILL7月号の立花隆氏と元共産党兵本達吉氏の対談で、「立花隆氏の宮本顕二批判に反論しようとすると、(そういう議論の好きな)共産党員がこぞって立花氏の本を買ってしまうだろうから、党としては反論をするのを控えた」というよう趣旨の話があったが、「嫌韓流」に対してもそのような態度を取るのではないか。

 小林よしのり「ゴーマニズム宣言・戦争論」の時は、左派勢力は躍起になってこれを否定した。なぜなら彼らの中にそれを否定できるだけの論理が備わっていたからである。「日本は良いこともした」論に対して「こんなに悪いこともした」と反論することが可能だったし、どのようなものであれ「日本人はかくあるべきだ」という主張には反対意見を置くことが可能だからだ。尤もその結果、「従軍慰安婦」の虚像が破壊されてしまったことは左派勢力・反日勢力にとって痛手だったかも知れないが、こうした勢力は固より狭いサークルの中で知的不誠実な「卑劣な正義漢」達さえ相手にしていれば良いわけだから、彼らにしてみれば大した問題ではないのかも知れない。
 それに対して「嫌韓流」だ。この本は基本的に思想やべき論ではない。覆い隠されてきた韓国や日韓関係の実像を知らしめる本であり、言うなれば一種の暴露本である。となると、この本を否定するには、「嫌韓流」で述べられている韓国の実像を否定するか、「韓国は確かにそうかも知れないが、日本だってこうではないか」と反論するよりない。それに加えて低能な“論客”達は、著者は差別主義者だの、韓流に対するねじれた心証だの、韓国に対する嫉妬だのといった、愚にもつかないレッテル貼りをするかもしれないが。
 しかしながら嫌韓流に書かれていることは、表現こそセンセーショナルかも知れないが、概ね事実である。(尤も、例えば「(韓国には)誇るべき文化などない」としているところを左翼は攻撃するだろうし、弊社もその意見には同意しかねる。)「捏造だ! 歪曲だ!」と批判するなら、何処が捏造でどう歪曲しているのかを議論せねばならず、その議論の課程に於いて、どのみち覆い隠されてきた「都合の悪い面」は明らかになってしまうだろう。少なくとも、そのような議論をするだけの見解の異なる問題が存在することだけは確実に認識される。どのような時代背景があったにせよ、日韓基本条約により、両国間の賠償問題は最終的かつ完全に終了していること。同条約において韓国側が個別補償を否定し、一括補償という形で受け取ったこと、その補償金を開発に用い(これは正しい判断であったと思う)、個人に対しては日帝が賠償しないと思わせていること。最近ではさらには個別補償が欲しいが為に(この態度は何と言おうとタカリである)、日韓基本条約を破棄せよという決議案が一部議員によって提出されていることなども明らかになるだろう。仮にそうした議論の結果、「やっぱり韓国とは、何をされても言われてもニコニコペコペコして仲良くしましょう」という結論になったとしても、その議論にコミットした、または見聞きした人々の「韓国観」はシビアになっているはずである。

 現状の“日韓友好”の土台となっているのは、朝鮮人の抗日意識と、一部日本人の「卑劣な正義感」が手を結んでいるからであって、決して対等な立場での友好ではない。「日本は非道な植民地支配をした」と騒ぎ立て、日本人に対して「道徳的優位」に立ち、ともれば屈服させようとする朝鮮人と、ただ「過去の日本人に悪いことをされた」と言われたからといって、自分を「良い人」の立場に置こうとせんがために、事実確認もしようとせず、ただ謝っておくことが「良いこと」なのだと考える「卑劣な正義感」の持ち主が、たまたま手を組んだだけである。こんな関係が巧くいかないことはわかりきっている。朝鮮人の要求は、彼らの文化や行動様式からしてもエスカレートしていくだろうし、「卑劣な正義漢」達にしても、エスカレートしていく要求に対して徐々に不満を募らせていくことだろう。自らの政治思想のために朝鮮を利用している人々はそれでも構わないのだろうが、それが日韓友好というものなのだろうか。否は否と言い、またそれを諫めるのが、時としては殴ってでも止めるのが真の友人であり、友情というものではないか。民族意識の高揚のあまり、あれほどの抑圧国家である金氏朝鮮に融和的態度を取る韓国民に、「人口も国力も高まった“日帝”をあれほど口汚く罵る癖に、お前らの同胞を何百万と餓死・獄死させている暴君をなぜ批判しないのだ。日帝よりも日成・正日親子の『金日帝』のほうがよほど非道ではないか」という諫言一つできなくて、何が真の友好か。

 それとも擁韓論者達は、韓国は分断されたりしてカワイソウな国なんだから批判したり非難してはイケナイと言うのだろうか。確かに後進国が非人道的な、そしてしばしば独裁的な(しかもその地域の歴史や文化に基づく非人道的文化・独裁というわけでもない)国家体制を取っているからと言って、直ちにケシカランなどと言う気はない。韓国を「そういう目」で見ることが妥当だというなら、まあそういう見解もありうるだろうが、弊社は韓国は先進国(に限りなく近い中進国)であると思う。なのでそういう差別的な見方はしない。

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 ところで、弊サイトやリンク・トラックバックなどのあるサイトを巡回している諸氏にとっては、この「嫌韓流」はあまり必要でないように思える。同書が触れている内容は、既にwebのあちこちで語られ尽くしていることであるし、西尾氏・西村氏のコラムは、両氏のblogなどを追いかけている人からすれば、改めて読むような内容ではない。(むしろblogのほうが字数制限のないぶん、多角的であるかもしれない。)下條氏の竹島関連のコラムは中公新書の「 竹島は日韓どちらのものか」を読むほうが良い。傾聴すべきは大月隆寛氏の嫌韓厨批判のコラムぐらいだろうか。
 「嫌韓流」は知韓入門書ではあるが、いささか扇動的に過ぎる点があることを否定できない。この本を読んで、いくら今まで隠されてきた韓国の暗黒面に憤りを覚えても、それを以て身近な在日や韓国人に石もて打つような真似は控えねばならない。(もちろん、「嫌韓流」に出てくるようなタイプであれば、思うさま応戦して欲しいところだが。)匿名掲示板だからと言って“征韓論”などを唱えるようでは、地下鉄だかのコンコースに貼られた日本を貶める絵を描いた小学生(やそれを指導したキチガイ教師)と同レベルになってしまう。
 「フォースの韓国面」に堕ちないためにも、反・韓流を掲げる人々は心してほしい。自戒も込めてであるが。

〔追記〕2005/08/02
 週刊朝日の記事は、言い回しに誤解を招きかねない点こそあるものの、普通のインタビュー記事でした。いずれにせよこういう現象があると伝えることは好ましいことなので、週間朝日グッジョブです。
 民主党白議員が意外と冷静な意見で驚き。つい先日まで「韓国人の立場」でテレビに出てたはずなのに。