債権 曖昧さ回避「債券」異(羅: jus obligati…【前半】
倒産法制における分類
- 協定債権
- 清算株式会社の債権者の債権で、一般の先取特権その他一般の優先権がある債権、特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権及び特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権を除く債権をいう(b:会社法第515条)。
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債権の効力
債権の一般的効力
債権には一般に以下のような効力があるとされる。
- 給付保持力
- 債権者の履行による給付を保持しても不当利得とはならない効力。債権の必要最小限の効力とされる。
- 訴求力
- 訴訟手続で債権を実体法上の権利として確認できる効力
- 執行力
- 確定判決を債務名義に執行しうる効力
- 貫徹力
- 債権の内容について本来の給付そのままに強制的に実現する効力
- 掴取力
- 債権の内容について債務者の財産の差押えとその換価という形で実現する効力。
債権の効力と責任
効力が不完全な債権、債務と責任とが分離される特殊な債権の形態も存在する[11]。
- 自然債務
- 給付保持力のみの債務。自然債務を参照。
- 責任なき債務
- 給付保持力や訴求力はあるが執行力のない債権。例として強制執行はしないとの内容の特約を付した債権がこれにあたる(大判大15・2・24民集5巻235頁)。
- 債務なき責任
- 債務はないが自らの財産が債務の引当てとなっている場合。例として物上保証人や抵当不動産の第三取得者がこの場合となる。
債務の種類 | 給付保持力 | 訴求力 | 執行力 |
---|---|---|---|
通常の債務 | 有 | 有 | 有 |
責任なき債務 | 有 | 有 | 無 |
自然債務 | 有 | 無 | 無 |
債権者代位権と詐害行為取消権
債務者の責任財産を保全するため、民法は債権者代位権と詐害行為取消権を認めた。民法第3編第1章総則第2節で規定された制度である。
- 詐害行為取消権(債権者取消権)
- 債権者は原則として債務者が債権者を害することを知ってした法律行為(詐害行為)の取消しを裁判所に請求することができる(424条1項)。
第三者による債権侵害
詳細は「第三者による債権侵害」を参照
債権債務の共同帰属
債権者あるいは債務者は複数である場合もあり、物権における共同所有関係(共有・総有・合有)類似の関係に分析される[13]。
共有的帰属・総有的帰属・合有的帰属
- 共有的帰属
- 共同所有関係における共有としての形態をとるもので、一個の債権債務に準共有(264条)が成立する場合がこれにあたる。共有の規定について264条は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない」と定める。債権についても「所有権以外の財産権」に含まれるから準共有が成立しうる。本来、民法の多数当事者の債権債務はこれに属するが、民法第3編第1章総則第3節の多数当事者の債権債務の規定(427条以下)は264条の「法令に特別の定めがあるとき」にあたるため、427条以下の規定が264条に優先して適用されることになる。
- 総有的帰属
- 合有的帰属
- 共同所有関係における合有としての形態をとるもので、組合員の組合債権がこれにあたる(最判昭33・7・22民集12巻12号1805頁)
多数当事者の債権債務
既述のように準共有について定める264条本文は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する」とし、本来であれば債権も「所有権以外の財産権」として準共有が成立するが、金銭の給付などに共有物分割規定(256条以下)を準用するのは煩雑であることなどから、民法は多数当事者の債権債務関係については民法第3編第1章総則第3節の多数当事者の債権債務の規定(427条以下)を置いている(427条以下の規定は264条但書の「法令に特別の定めがあるとき」にあたり優先的に適用される)[13]。
- 分割債権及び分割債務(427条)
- 多数当事者の債権関係における原則的形態。分割された債権や債務は相互に独立したものと扱われる。
- 不可分債権及び不可分債務
- 連帯債権及び連帯債務
- 連帯債権についての規定は必要性が貧しいとして民法上に規定は設けられていない。
- 保証債務
債権の移転
債権の移転原因には次のようなものがある。
- 契約による移転
- 歴史的には、債権譲渡(債権者の変更)は債権の本質に反するという考え方も根強く存在していたものの、近代以降においては、債権譲渡自由の原則が強調されるようになった。日本においても、債権の自由譲渡を認めない慣例が存在したとされ、当初は債権譲渡自由の原則に対する抵抗が強かったものの(民法典論争)、特約により譲渡性を排除できる規定を設けるという形で妥協がなされ、現在に受け継がれている。現在の日本民法においては、民法第3編第1章総則第4節で規定される。
- 債務引受
- 契約上の地位の移転(契約引受)
- 単独行為による移転
- 旧概念においては一般的に「寄附行為」と呼ばれていた。
- 法律の規定による移転
- 裁判所の命令による移転
- 民事執行法上の転付命令
- 随伴性による移転
- 元本債権の移転による利息債権の移転
- 主たる債権の移転による保証債権の移転
なお、債権者を交替させるものとして、債権者の交替による更改があるがこの場合には債権の同一性が失われる。
債権の消滅
債権の消滅原因には次のようなものがある。
- 目的消滅による債権の消滅
- 目的到達による債権の消滅
- 弁済(履行)によって債権は消滅する。第三者弁済、担保権実行、強制執行なども含め、すべて目的到達として債権は消滅する。
- 債務者が債権者の承諾を得てその負担する本来の給付に代えて他の給付をした場合(代物弁済)には弁済に準じ債権は消滅する(482条)。
- 目的到達不能による債権の消滅
- 債務者の責めに帰すべからざる事由による履行不能(危険負担を参照)がこれにあたる。なお、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合、債務不履行による損害賠償という形に変わって債権は存続することになり、債権は消滅しない。
- 目的到達による債権の消滅
- 目的消滅以外の債権の消滅
- 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を消滅させることができる(505条第1項本文)。ただし、債務の性質がこれを許さないときは相殺は認められない(505条第1項但書)。
- 当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは旧債権は消滅する(513条第1項)。
- 債権者が債務者に対して債務を免除する意思表示をしたときは債権は消滅する(519条)。
- 権利の一般的消滅原因による債権の消滅
以上の消滅原因のうち弁済(代物弁済、供託)、相殺、更改、免除、混同については民法第3編第1章総則第5節で規定される。
なお、患者への投薬が債権債務の内容となっていた場合に、患者が偶然全快して投薬が必要でなくなったときなどのように、目的到達による債権の消滅とみるべきか目的到達不能による債権の消滅とみるべきか分類が難しい場合もある。
関連項目
脚注
^ 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、3頁
^ 英: obligee、creditor、仏: créancier、独: Gläubiger
^ 英: obligor、debtor、仏: débiteur、独: Schuldner
^ 英: personal right、英: right in personam、仏: droit personnel、独: Personliches Recht
^ 仏: dette、独: Schuld、Verbindlichkeit
^ 羅: obligatio、英: obligation、仏: obligation、ドイツ語: short(ドイツ法、オーストリア法)、Obligation(スイス法)
^ 英: obligation、独: Schuldverhältnis
^ 井原今朝男『日本中世債務史の研究』(東京大学出版会、2011年)P345-362
^ a b 内田貴著 『民法Ⅲ 第3版 債権総論・担保物権』 東京大学出版会、2005年9月、113頁
^ 内田貴著 『民法Ⅲ 第3版 債権総論・担保物権』 東京大学出版会、2005年9月、112頁-116頁
^ 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、29頁
^ a b c d 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、89頁以下
^ a b 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、146頁
^ 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、169頁
^ a b 於保不二雄著 『債権総論 新版』 有斐閣〈法律学全集〉、1972年1月、346-347頁
^ 於保不二雄著 『債権総論 新版』 有斐閣〈法律学全集〉、1972年1月、347頁
参考文献
- 平井宜雄『債権総論(第2版)』(1994年、弘文堂)
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