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この宇宙には超微小サイズの“余剰次元”が隠れている!? 2018年末、「量子重力」観測で異次元の存在が証明される可能性(最新研究)
2017.08.02
“異次元”や“パラレルワールド”をテーマにした物語が数多く生まれ人気を博しているように、我々が今暮らしているこの世界とは違う別の次元があるとすれば、実に夢が膨らむだろう。まさに文字通りの夢物語だったはずの異次元世界だが、専門家によれば、宇宙の“隠れた次元”を発見できる可能性が高まっているというのだ。
■観測に成功した重力波とは何か?
2015年9月、アメリカの重力波検出器LIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)が“重力波”の史上初観測に成功した。重力波は、100年も前にアインシュタインがその存在を理論上で指摘していた現象である。なお昨年6月には同じく2度目となる重力波の観測に成功し、さらに年明け早々にも3度目の観測が報告されている。
IGOの施設 画像は「Wikipedia」より
では、重力波とは何か? それは宇宙で発生している時空の“歪み”、あるいは“波紋”の伝播であると考えられている。宇宙全体は、決してカッチリと定まった時空ではなく、ゴムボールのように力が加わるとあらゆる方向へと微妙に伸び縮みすると見なされている。そして、このわずかな伸び縮みを示すものこそ重力波なのである。
宇宙空間で壮大なイベントが発生したときに、その“余波”として重力波が発生する。LIGOが検知した重力波は、太陽の20倍以上の質量をもつ2つのブラックホールが激突したときに発生したものであると説明されている。
しかしながら、超巨大ブラックホール同士が衝突するという凄まじい出来事で発生したわりには、重力波はきわめて弱い波動であり、これまで観測されなかったのはその微弱さゆえでもあるのだ。
「Futurism」の記事より
“力”というには弱すぎる重力波だが、最近になって、実は別の影響も受けているがゆえの弱さだと主張する声が上がりはじめている。重力波は、なんとこの宇宙に潜む隠れた異次元の影響を受けているというのだ。
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■余剰次元の発見は近い?
ドイツ・ポツダムにある研究機関、マックスプランク重力物理学研究所の研究者は、重力波の観測が宇宙に潜む余剰次元の発見につながる可能性を指摘している。スタボ・ルセナ・ゴメス博士は、プレスリリースの中で次のように述べている。
「CERNの物理学者たちは、大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider)で余剰次元を探していますが、今のところ良い結果は得られていません。しかし、重力波検出器は余剰次元の存在の実験的証拠を提供することができるかもしれません」
そして、ゴメス博士をはじめとする研究チームは、余剰次元の干渉によって重力波がきわめて微弱になっているのではないかと考えているということだ。
超ひも理論によれば、我々が暮らしている3次元+時間の4次元世界からさらに高次の次元が存在し、その数なんと11次元まであると仮定されている。そして、これらの余剰次元はきわめて微細なサイズで空間に“隠れて”いると考えられえているのだ。
「EWAO」の記事より
もしもこの隠れた余剰次元が発見された暁には、標準的な物理学を修正しなければならなくなることも研究チームは示唆している。たとえば、現在研究が進められている量子重力理論(quantum gravity theory)が、一般相対性理論と量子力学の双方を統一する理論として有望視されているということだ。
この量子重力理論を構築するうえで鍵を握るのは、現在まだその存在が証明されていない量子重力の観測である。そして、研究チームは量子重力を観測するために、このLIGOに加えてイタリアのレーザー干渉計「Virgo」を同時に使って行なう実験を2018年終盤に開始する計画を立てている。はたして来年中にも“異次元”が存在する証拠につながる発見がもたらされるのか、大いに期待が膨らむ。
(文=仲田しんじ)
Detecting Gravitational Waves 動画は「Max-Planck-Institut」より