四川大地震
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四川大地震 | |
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本震 | |
発生日 | 2008年5月12日 |
発生時刻 | 14時28分1秒(CST) 6時28分1秒(UTC) |
震央 | ![]() 北緯31度01分5秒 東経103度36分5秒( ![]() |
震源の深さ | 19km |
規模 | [1][2] Mw 7.9 , Ms8.0 |
最大震度 | メルカリ震度階級XI:四川省汶川県映秀鎮 彭州市銀廠溝 什邡市紅白鎮 安県高川鄉 北川県曲山鎮 平武県南壩鎮1 |
津波 | なし |
地震の種類 | 内陸地殻内地震 右横ずれ成分含む逆断層型 |
余震 | |
最大余震 | 2008年5月13日15:07(CST)、M6.12 |
被害 | |
被害地域 | 四川省を中心とする中国内陸部 |
プロジェクト:地球科学、プロジェクト:災害 | |
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四川大地震(しせんおおじしん、しせんだいじしん)は、中華人民共和国中西部に位置する四川省アバ・チベット族チャン族自治州汶川県で現地時間(CST)2008年5月12日14時28分(UTC6時28分)に発生した地震のことである。
中国地震局は「汶川地震(ウェンチュアンディジェン、ぶんせんじしん、拼音: Wènchuān dìzhèn)」という名称を基本として、広域名の四川省や地震規模を組み合わせた「四川汶川8.0級地震」とも呼び、中国国内の報道などでは歴史的事件の名称でよく用いられるような発生日に基づいた「512大地震」とも呼んでいる。また「四川大震災」などとも呼ばれる。
目次
1地震活動の詳細
1.1地震のメカニズム
1.2本震
1.3余震
2被害
2.1世界遺産、文化財などの被害
2.2地震に便乗した犯罪
3前兆現象
4中国国内の反応
4.1北京オリンピックへの影響
4.2義捐金を巡る騒動
4.3メディアの反応
5中国国外の反応
5.1各国政府・組織
5.2自衛隊派遣
5.3台湾企業
5.4芸能人・有名人
5.4.1シャロン・ストーンの発言
5.5一般市民
6日本の国際緊急援助隊の派遣
7脚注
8関連項目
9外部リンク
地震活動の詳細
地震のメカニズム
この地震は、四川盆地の北西端にあって北東から南西の方向に走る衝上断層(断層面が水平に近い逆断層)が動いた結果として起こったとみられている。この断層は龍門山脈の下を走る龍門山断層(ロンメンシャン断層、龍門山衝上断層帯、Longmenshan Thrust Zone)と呼ばれる長さ約300kmの断層帯の一部だとみられている。
地震が発生したこの付近は、標高5,000m級の山が連なるチベット高原から標高500m前後の四川盆地へと急激に標高が低くなる地帯であった。このような急な地形が形成された要因であり、この地震の要因でもあるのがこの付近で活発な地質活動(隆起、沈降、地震といった大地の動きの総称)である。
インド亜大陸などが乗ったインドプレートは1年間に数cmというスピードで北に動いていて、中国をはじめとしたユーラシア大陸の大部分が乗ったユーラシアプレートを強く圧迫している。数千万年前から続くこの動きによってもともとあった山塊や付加体が隆起して、ヒマラヤ山脈やチベット高原といった高地ができた。このプレートの動きは現在も続いており、ヒマラヤ山脈やチベット高原は強い圧迫の影響を受け続けている。この影響はチベット高原の北部では北方向への圧縮、同高原の東部では東方向への圧縮となり、四川盆地の西側でも東方向へ地殻が圧縮されている。また、GPS測地によって新たに考案されたプレート区分においても四川盆地の西側は南方向に動くユーラシアプレートと南西方向に動く揚子江プレートの境界部分に当たる。四川盆地の西の縁は、何らかの理由によりその圧縮の力が集中していると考えられている。
このような条件の下で四川盆地西縁には活構造ができ、地形も急になった。四川盆地西縁の活構造は康定断層帯(鮮水河―小江断層帯。厳密には、四川盆地西縁の活構造に属するのは断層帯の南東側半分のみ)や龍門山断層帯といった多数の断層を有している。また、竜門山断層帯は構造地質学上、アルプス・ヒマラヤ造山帯と揚子江卓状地(シナ地塊の一部)の境界部分に位置している。この地域は寧夏回族自治区・甘粛省東部・四川省西部・雲南省に連なる「南北地震帯」の中にあり、古くから地震の多い地帯ということが知られていた。
プレートの境界と動きのベクトル
(USGSの図をもとに作成)
1933年8月25日には今回の地震の震源から北北東に約110km離れた地点(茂県叠渓鎮)を震源とするM7.5の地震(茂県地震)が発生、1958年2月8日には北川県でM6.2の地震(北川地震)、1960年11月9日には松潘県でM6.8の地震(松潘地震)、1970年2月24日には大邑県でM6.2の地震(大邑地震)、1976年8月16日・23日にはM7.2の地震が2回(松潘・平武地震)発生するなど、龍門山断層帯の周辺で発生したものと見られる地震は20世紀だけでも多数ある。また、竜門山断層帯にYの字型に接している康定断層帯でも同じように地震がたびたび起きている。ただし、龍門山断層帯の周辺で発生した地震はいずれも龍門山断層帯で発生したものではなかった。ある研究では平均変位速度は1mm/1年以下と非常に動きが遅く1千万年前以降はほとんど活動していないとされており、かなりの長期間に渡って静穏期に入っていたと見られている。今回の地震は、この静穏期の終わりを告げるものであり、従来の地質学では「古い断層」「活動していない断層」とされている竜門山断層帯で地震が発生したことは衝撃を与えた。
また2001年11月14日のチベット北部の地震(M8.1)、2002年のアフガニスタン北部の地震(M7.4)、2004年のスマトラ島沖地震(M9.1)、2005年のスマトラ島沖地震(M8.6)やパキスタン地震(M7.6)、2006年のジャワ島南西沖地震(M7.2)、2007年のスマトラ島沖地震(M8.5)、2008年の新疆ウイグル自治区の地震(M7.2)など、インドプレートとユーラシアプレートの境界地域で地震が頻発していることからこの地域が地震の活動期に入っており、向こう20年程度は大規模な地震が続発する恐れがあるとの指摘もある[8]。
本震
四川大地震の震央(USGSによる)
色により震度を示した図(USGSによる)
- 発生時刻 - 2008年5月12日14時28分(現地時間、UTC+8)、15時28分(日本時間、UTC+9)
- 震源 - 四川省阿壩・チベット族チャン族自治州汶川県・北緯31度01分5秒、東経103度36分5秒、深さ19km
- 震源断層 - 龍門山断層の南部、逆断層、直下型(プレート内)地震
- 地震の規模 - マグニチュード Ms 8.0(中国地震局)[2]、Mw7.9 (USGS)[1]
北京、上海、香港など、北部の黒竜江省、吉林省、新疆ウイグル自治区を除く中国本土のほとんどの地区や台北[10]、バンコク、ハノイなどで体に感じる揺れが報告されている[11]。
このように広範囲で揺れが観測された理由としてこの地域がユーラシア大陸の強固な岩盤の上にあって地震波が減衰しにくいこと、震源が浅く規模が大きかったため、水平方向に伝播しやすく減衰しにくい表面波(レイリー波)が強くなったことなどが挙げられている。日本の長野県にある気象庁精密地震観測室(現・気象庁松代地震観測所)では15時41分、18時10分、20時40分(いずれもJST)の4回にわたって表面波を観測し、表面波が地球を2周したことがわかった[12]。また、東京大学地震研究所は、防災科学技術研究所の広帯域地震観測網(F-net)がとらえた地震波形の解析結果から、地震波が地球を6周したと発表した[13]。
名古屋大学の山中佳子准教授の解析によると地下の断層は長さ約120kmキロ、幅約40kmにわたる範囲で大きく動いたとみられ、1995年の阪神・淡路大震災を招いた断層は長さ40〜50kmとみられることから今回の断層は長さで2倍以上、地震のエネルギーは約20倍に相当するとみられるという[14]。
また筑波大学の八木勇治准教授らは、長さ約250kmにわたる断層が2段階にわけて動いたとする分析結果を出している。地表近くで最も大きくずれ震源近くでは地表に約7mの段差が現れているとみられ、地震の破壊力は阪神大震災の30倍にもなるという[15]。断層の中に「特にずれが大きい場所が2か所ある」としている[15]。
余震
余震は長期間続き、5月22日までに782回観測されている[16]。中国地震局は24日までにM4.0以上の余震が173回、そのうちM5.0以上が27回、M6.0以上が4回あったと報告した。
8月30日午後4時半(日本時間同5時半)ごろ、雲南省に程近い四川省攀枝花市と涼山イ族自治州の境界付近を震源とするマグニチュード6.1の攀枝花地震が発生、死傷者は600人以上で100万人以上が被災した。5月の大地震と同じ断層の南端のズレに起因するものの、余震ではなく別の地震とみられている[17]。