タイムトラベルが可能であることが、数学的に証明される! 教… 

 

 

 人類の見果てぬ夢のひとつに「タイムトラベル」がある。もしも馬券を買う前に、数十分先の未来までちょっと出かけてきてレース結果が確認できたら……、と考えるだけでワクワクしてくるだろう。しかし、残念ながらそれは夢のまた夢であることは誰しもが痛感していることだ。だが、今後も時空を超えた旅は本当に叶わぬ夢のままなのだろうか? 5月22日付けの「Daily Mail」の記事は、ケンブリッジ大学の物理学者、ルーク・バッチャー博士の「時空を超えたコミュニケーションは理論上じゅうぶん可能である」という主張とその理論を紹介している。


時間旅行の鍵を握る「ワームホール」とは何か


 タイムトラベルの実現の鍵を握っていると考えられているのが「ワームホール」という構造体だ。
 
 宇宙を舞台にしたSFスペースオペラ(例えば『宇宙戦艦ヤマト』など)でよく「ワープ航法」が描かれているが、それと同様に、このワームホールを通過することで光速よりも早い速度で移動することができると考えられている。宇宙空間にポッカリと開いたトンネルのようなものだというイメージが相応しいだろう。そして、このワームホールに入り込み出口を抜けた先は、人間が一生かかっても到達できない途方もなく遠い場所だったりするということだ。


■タイムトラベル理論はカンタン、2つの点と線

 では、果たしてワームホールはどんな構造になっているのか? これを理解するためによく引き合いに出されるのが、紙の上にペンで記した2つの点の例である。

 この2点の間を直線で結んだ距離が最短距離であるが、紙そのものをU字に曲げてしまえば2点の距離をグッと縮めることが可能だ。さらに、この2点が重なり合うように紙を折り畳んでしまえば距離はゼロになる。このように紙を曲げたり折ったりできるように、空間も歪み得るものだと考えられているのである。

 このワームホールが空間(宇宙空間)に発生する際には莫大なエネルギー物質が必要だと考えられているが、理論上は決して不可能なことではないとバッチャー博士をはじめとする科学者たちは考えている。

 そしてこのワームホールを利用して物質を光速以上の速度で移動させることができれば、時空を超えたコミュニケーションが可能になるという。つまりタイムトラベルが実現することになるのだ。これを最初に主張したのは相対性理論の創始者、アルベルト・アインシュタインである。

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宇宙空間にポッカリと口を開けた「ワームホール」 画像は「Daily Mail」より

 

■はかない命のワームホールを延命させよ!

 バッチャー博士はメッセージを託したフォトン(光子)に、このワームホールを通過させることで、過去や未来との時空を超えたコミュニケーションが可能になると述べている。

 ただ、この際に問題となってくるのは、ワームホールの性質である「存在の不安定さ」である。ワームホールは浮き上がっては消えていく“うたかた”のようなはかない存在なのだという。そのため、入り口から進入した物質(理論上は人間も)が出口へと通り抜ける前に消えてしまいがちなのだ。ワームホールが消えてしまえば、通過中の物質はもまた海ならぬ宇宙の“藻屑”として消え去ってしまう。

 しかし、バッチャー博士はこの短命過ぎるワームホールの寿命を嘆く前に、まず個々のワームホールの形状を見極めることが肝要であることを指摘している。


■ワームホールの形に着目せよ

“トンネル”になぞらえられるワームホールであるが、そのほとんどは入り口の直径よりも全長は短く、いわばイカリング(オニオンリング!?)のような形状をしているものが多いということだ。しかし、もし入り口の直径よりも長い“トンネル”を持つワームホールが見つかれば、それはタイムトラベルに適したワームホールだという。

 ワームホールの内部に存在するカシミールエネルギー(Casimir energy、真空エネルギー)の作用で、ワームホールの形状が少しばかり安定するのだという。

 遡ること4半世紀前の1988年、カリフォルニア工科大学の物理学者、キップ・スローン博士が既にカシミールエネルギーを使ってワームホールを安定させることができると指摘していたのだが、それが現在になって改めて脚光を浴びることになったのだ。

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「ワームホール」で時空を超える日が来る!? 画像は「Daily Mail」より

 時空を超えたメッセージのやり取りを思い描くバッチャー博士のビジョンはこれでさらに一歩前進することになったのだが「ワームホールに送り込むフォトンに内容のあるデータを持たせられるのかどうか?」、「そもそもフォトンが無傷でワームホールを脱出できるのか?」など、他の科学者からの疑問の声はまだ多い。

 また、記事のコメント欄からはタイムトラベル固有の問題である数々の矛盾(有名な「親殺しのパラドックス」など)の説明ができない以上はメッセージのやりとりも不可能なはずだ、という指摘も多い。

「この理論の構築のためにはまだまだ多くの検証が必要です」としながらもバッチャー博士は「(夢の実現の)可能性が確かにあるという事実に魅了されています」と意欲的に研究に取り組んでいる。

 果たして将来、レースの結果を見た者が送ってきたメールに従って馬券を買う日が来るのだろうか? 夢はさまざまな方向へと膨らむばかりだが、実際に万馬券を当てられるかどうかはともかく、時空の壁を打ち破る研究がこうして着実に積み重ねられていることを知っておいても損はないはずだ。