蕎麦 ⅩⅣ【末】日本各地での蕎麦文化 蕎麦の嗜好 東京…

 
 

各地の名物そば

ソバは痩せた土壌でも栽培できたことから、北は北海道から南は鹿児島まで、山間地や新規開拓地で盛んに生産された。なお、各地の有名・老舗蕎麦店、立ち食い蕎麦屋、蕎麦チェーン店などについてはそれぞれ関連項目を参照。

北海道地方

詳細は「北海道の蕎麦一覧」を参照

東北地方

青森県
津軽そば津軽地方
元々はつなぎに大豆を使い、手間を掛けて作られる蕎麦[62][85][86]を指していたが、その手間から作る人や店が減少したことによって津軽地域で食べられる通常のそばを指すことも多くなった[87]。「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」の三たてがよいとされる江戸前のそばに対し、あえて茹でおきのそばをかけで食べるという特徴がある。
夏井田そば(青森市
白神ソバ(西目屋村
岩手県
わんこそば花巻市盛岡市
秋田県
石川ソバ(八峰町
西馬音内そば(羽後町
山形県
板そば(山形県内陸部)
紅花そば(村山地方
紅花を練り込んだ蕎麦[62][88]
冷たい肉そば河北町谷地)

冷たい肉そば

茹でた鶏肉の薄切りを具材に用いた蕎麦[89][90]
山形そば(山形市
蕎麦店が江戸に誕生してから時間をおかず、蕎麦に関する技術が山形に伝わって定着し、常食されるようになった[91]松尾芭蕉の『奥の細道』の随行者・河合曾良の「曾良旅日記」に羽黒山で蕎麦を食べた記述がある[91]
天童そば(天童市
手打そばが観光資源となっており[92]、また乾麺も生産されている[93]
福島県
裁ちそば(南会津地方)
つなぎ粉を一切使わない生地で脆く畳むのが難しいため、生地を伸ばした後に数枚から十数枚重ねて裁つように切るところから、こう呼称されるようになった[62][94]
磐梯そば(磐梯町猪苗代町
地産そば粉と名水百選にも選ばれている磐梯西山麓湧水群の天然水を使用した蕎麦[95]。磐梯そばの知名度向上と地域活性化を目的として2007年に磐梯町で「第13回日本そば博覧会 in 会津・磐梯」が開催された[96][97]
山都そば(喜多方市山都地区)
宮古地区で有名なことから宮古そばとも言う。つなぎを一切使用しない、地産そば粉と伏流水を使用した蕎麦で、手打ち体験にも力を入れている[98]耶麻郡山都町(現・喜多方市)が蕎麦貯蔵用の大型保冷庫を建設した。
高遠そば(南会津郡下郷町大内宿
長野県伊那市高遠そばを参照。
檜枝岐そば(檜枝岐村
檜枝岐産の蕎麦(前述の「裁ちそば」等)[99][100]を指す。

関東・甲信地方

茨城県
金砂郷そば(常陸太田市
常陸太田市金砂郷地区は茨城県の奨励品種「常陸秋そば」の発祥地であり、その旧町名をそばのブランド名として復活させた(商標登録日本第4873108)[101]
栃木県
今市そば・日光そば(日光市
日光市今市地区は、ソバ生育に適した気候と地形だったことから古くからの産地で、蕎麦屋は老舗町おこし観光資源として新たに誕生した店もあり、地域活性化の一環として秋には「日光そばまつり」が行われている[102][103]
出流そば(栃木市
地産地消(地元で生産し地元で消費する)の方針で取り組んだ「盆ざるそば」が主流[104]
仙波そば(佐野市仙波)
佐野市仙波地区にて地産地消の方針で取り組んだそば。
群馬県
岡屋敷そば(伊勢崎市
岡屋敷そば生産組合[105]がそばの栽培・加工(地場産のそば粉や生そばを製造)・販売を行っており、秋には「そばの里はなまつり」を開催している[106]
埼玉県[編集]
秩父そば(埼玉県秩父地方
古くからそばの栽培に適した土地で、祝祭事や来客時には家庭でそばを打ってもてなしていたが、近年はそばを打つ家庭が減少傾向にあり、その伝統が蕎麦屋に受け継がれ現在に至っている[107]
千葉県
甚兵衛そば(印旛沼周辺)
義民・佐倉宗吾が幕府へ直訴するために江戸へ向かう際、禁制を犯して渡し舟を出しその後印旛沼に身を投じた渡し守「甚兵衛」[108]の名前を使った蕎麦。
東京都
深大寺そば調布市三鷹市
元禄年間、天台宗東叡山寛永寺貫首公弁法親王に蕎麦切りを献上し賞賛を得てから知名度が上がり、その後一般庶民に広まった。
とろろ蕎麦(八王子市高尾山
大正時代、山を登る参拝客に精をつけてもらおうと麓の店が提供したのが始まりといわれている。地域おこし観光資源として、冬季に京王電鉄と「冬そばキャンペーン」実行委員会によって「高尾山の冬そばキャンペーン」が開催されている(2008年(平成20年)現在6回目)。
あられそば(東京都
小柱(青柳の貝柱)を具にした温かい蕎麦[113]。小柱をかき揚げにして具にする店舗もある。
神奈川県
秦野のそば(秦野市
タバコ耕作の裏作としてソバが作られ神奈川県内一の産地となっており、新かながわの名産100選に選定され、戦後に誕生した「丹沢そば」などのブランドがある[114][115]
長野県
信州そば

信州そば(天麩羅付き)

戸隠そば(長野市戸隠)

戸隠そば

凍りそば(北信地方)
寒晒し蕎麦(長野県諏訪地方、伊那地方)
凍りそばとは違い、玄ソバを厳寒期の清流に浸し、天日と寒風にさらして乾燥させて製造される。江戸時代に「暑中寒晒蕎麦」として信濃国伊那郡高遠藩と、信濃国諏訪郡高島藩の2藩から将軍家に献上され夏の土用に食された[116][117]。管理が難しい事などから明治以降は途絶えていたが、出羽山形藩に高遠藩主保科正之が移った縁があり昭和49年に献上の記述が見つかったことから研究の末、昭和59年に山形で初披露された。
行者そば(伊那地方)
奈良時代初期に役小角木曽駒ヶ岳で修行中、幾つかある登山道の途中にある集落「内の萱」の里人に篤い持て成しを受け、そのお礼に役小角が里人に渡したソバの種が発祥とされ、焼き味噌を溶き入れたつゆ(辛つゆ)に薬味として辛子大根おろしとネギを入れて食べる[120]。行者は修行の中に「五穀断ち」があるが、そばは該当せず、また火を使わなくても食する事ができる点を理由に、そばの実や粉を常備食としていた。
富倉そば(北信地方)
須賀川そば(山ノ内町)
富倉そばと同じオヤマボクチをつなぎに用いたコシが強い蕎麦と、そばがきの一種で長野県選択無形民俗文化財の「はやそば」が特徴である。
開田そば(木曽町開田高原)
冷涼で朝霧や夕霧が発生する気候によりソバ生育に適していた事から古くからのソバ産地で、その地産そば粉で作った蕎麦である[121]。具材にすんき(カブ菜の漬け物)と鰹節を用いた「すんきそば」は冬季に作られる[62]
霧下そば(北信地方
「霧下そば」について、狭義では戸隠そばの中でも昼夜の気温差が激しく霧の発生する場所で獲れたソバやそば粉やそれで作った蕎麦だけを指し、広義では戸隠産の良質なソバやそば粉やそれで作った戸隠そばを指す[122][123]。また、同様の条件を満たした「開田そば」を指すこともある[62]
善光寺門前そば(長野市
単に「門前そば」や「寺町そば」とも言われ、善光寺表参道周辺で営業している店で出される蕎麦の総称。特に共通の特徴がある訳ではないが、蕎麦屋の立ち並ぶ密度と、参拝の休憩所と名物を求める参拝客から暗黙的に認知され定着したようである。
高遠そば伊那市
会津松平家の初代藩主保科正之は大変なそば好きだったと伝えられており、また二十数年信濃国高遠藩との密接な関わりがあり、この地域ではみそ味(みそ+大根おろし+ネギ)のそばつゆ「からつゆ」にて蕎麦が食されていた[62][127][128][129]。その後、保科正之が陸奥国会津藩23万石と大身の大名に引き立てられたことがきっかけで、この「からつゆ」蕎麦の食べ方も会津地方に伝わり、発祥地の名を取って「高遠そば」と呼ばれるようになったが、その名が逆に会津から高遠地区に伝わって「からつゆ」蕎麦を「高遠そば」とも呼ぶようになり、それに対して出汁の効いた醤油味のつゆは「あまつゆ」とも呼ぶ[62][127]
現在福島県の高遠そばは南会津郡下郷町大内宿の名物として有名である。当地では箸が用意されず、付け合せの長ネギを用いて食す事が特徴である。
本山そば(塩尻市
本山宿は「そば切り発祥の地」といわれ、その所以は宝永3年(1706年)に出版された『本朝文選(風俗文選)』に「蕎麦切りといっぱ(いうのは)、もと信濃の国本山宿より出て、あまねく国々にもてはやされける」と書かれたことによる[130][131][132]。また、本山宿本陣では寛文10年6月4日1670年7月25日)の大名宿泊時に蕎麦切り献上の記録も残っている[130]。この地域では家庭毎に蕎麦打ちの技術が伝えられていたこともあって長らく蕎麦屋がなかったが、本山手打そば振興会の手によって蕎麦屋が開店した[130]
ただし、日本のそば切りの発祥は#歴史の節にて宝永3年(1706年)より古い文献も示されているため、本山そば説が否定されることもある。
とうじそば(松本市奈川地区)
信州野麦峠周辺の旧奈川村に伝わるそば。まるでしゃぶしゃぶのようなそば。ラーメンのつけめんのようにそばと汁が別で、そばを汁に入れて(投じて)温めて味をつけてから食する。汁は火にかかったなべに入って(いることが多く)常時温かくなっており、これにそばを専用のカゴに入れて浸してから食べる。そばを投じるためとうじそばという。なお投汁そばが語源の説もあるがこれは登録商標になっている。わんこそばのように、家主が次々とそばをカゴに入れて温めて客人におなか一杯食べてもらうことが目的に発祥したとの説もある。
安曇野そば(安曇野市
名水百選」、「水の郷百選」に選ばれた安曇野わさび田湧水群の名水を用いた蕎麦と、日本最大規模の大王わさび農場をはじめとする地元産の山葵を薬味とする蕎麦の総称。名水と薬味が共通であるため、蕎麦は昔ながらの信州そば(田舎そば)だけでなく店ごとに特徴を出すなど差別化の試みが見られる。そこが地元民にとって飽きの来ない選択肢の広さとして受け入れられている。NHK連続テレビ小説おひさま」の舞台としても有名になった。
山梨県
御岳そば甲府市昇仙峡