ミーム Ⅱ【初】諸定義 歴史
分類
- 流行ミーム - すでに広まっているもの。定着したものは、習慣あるいは伝統ミームへと移行する
- 習慣ミーム - 意識されることなく繰り返されているもの。
- 伝統ミーム - 意識的な活動によって維持されているもの。
- 掟ミーム - 規範としての正式な承認を受けたもの。法やルールなど。
- 仕掛けミーム - 広めることを意図して人為的に作られたもの。
- 伝道ミーム - 他者にも伝えようという呼びかけが含まれているもの。
- 伝説&物語ミーム - 事実かどうか判断のつかないもの。あるいはフィクション。
- ミームに関するミーム - ミームの視点から問題を捉えなおしたもの。メタミーム。
ブロディ(1998)によるもの[1]。
識別ミーム(distinction-memes)
私たち人間が、様々な物事を認識できるのは、世の中をあらゆる物事に分割してラベルを貼っている識別ミームが心の中にあるからである。例えば、「日本」とは、日本という識別ミームが私たちの心にあるから存在するのであって、日本という概念は現実ではない。もし日本というミームがなければ、陸と海があるだけである。また、このような概念と現実との区別も、ミームである。
コカ・コーラのロゴマークは多くの人の識別ミームとなっている。
このように、物事についてのあらゆる概念はミームであって、真理ではない。すなわち、ミーム学の考え方(パラダイム)において、この世に絶対的真理は存在しない。なぜなら、物事にラベルを貼るやり方は、何通りもあるからである。例えば、土に対して、「土」以外の識別ミームを使えば、土を分子一つ一つに分解して識別することもできる。
あるブランド・ロゴの識別ミームを心に持っていれば、知らないブランド・ロゴの商品よりも目に入り、買う可能性が高い。例えばコカ・コーラのロゴマークは多くの人が識別ミームとして持っている。これにより人々は店内でコーラを選ぶ時、見慣れないコーラよりもコカ・コーラの方を手に取りやすくなる。
英語が理解できる人、つまり英語の識別ミームを持った人は、英語を聞き取ることができる。しかし、英語の識別ミームを持っていない人は、英語を聞いても理解できない。
このように、心に持っている識別ミームによって、人々の受け取る情報は選別され、行動も変わる。
関連づけミーム(association-memes)
ミーム同士を関連づけるミーム。関連づけミームにより、ある物事(ミーム)によって別の感覚や考え(ミーム)が心に浮かぶ引き金となる。例えば、何かのにおいを嗅いで、過去の記憶を思い出すのは、においと記憶の関連づけミームがあるからである。また、「学校」という言葉を聞いて、自分の「学校での体験」が心に浮かぶのは、学校と「自分の体験」との関連づけミームが心にあるからである。
テレビCMでは、製品といい気分の関連づけミームを視聴者の心に作り出す。例えば、女優の魅力と商品を関連づけたり、音楽の心地よさと商品を関連づける。
戦略ミーム (strategy-memes)
「何々をすれば何々という結果になる」という、原因と結果に関するミーム。このミームが心にあることで、そのミームに基づいて人は行動する。例えば、パソコンの使い方、車の乗り方、日常会話の仕方、人間関係における行動の仕方等、様々な戦略ミームが心の中にある。ただし、人間は予測の付かない行動を取ることもあり、そうした場合は戦略ミームは関係ない。
人は無意識の中にたくさんの戦略ミームを持っている。戦略ミームは物事への予測を持っているが、常に予想通りになるとは限らない。例えば外国で車線が自国と反対になると、無意識下にある運転の戦略ミームが上手く機能しないため、とまどうことになる。
ある戦略ミームが必ずしも良い結果を招くとは限らず、そうしたミームが自分の心にあることに無自覚の場合もある。例えば、子どもの頃に身につけた人間関係に関する戦略ミームが大人になってからも影響力を持つ場合、本人にとってマイナスとなることもありうる。
なお、strategyの訳に日本語の「戦略」が対応しているが、ここでは軍事的な意味ではない。