貧困線【前半】概要 絶対的貧困 相対的貧困 日本貧困率先進国三位OECD六位一般九位相対底辺 

 

 

国民貧困線

各国家について、国民貧困線以下の人口の割合(CIA World Factbookによる)

各国家の国民貧困線は、世帯調査に基づいて人口加重したものによって作成されている。そのため国家間で定義は異なるため、その数字を国家間で比較することはできない。例えば豊かな国では貧しい国よりも、貧困の基準がより寛大になっている。

米国

2015年の米国では、65歳未満を対象とした貧困線は年収12,331ドル、4人家族で子供が2人の世帯では年収24,036ドルであった[28]。米国国政調査庁は、2016年9月に、2015年の国民貧困線は約13.5%(約4,312.3万人)であると発表した[29]

2015年の貧困率の内訳は、

  • 年齢別 18歳未満:約19.7%(1,450.9万人) 18~64歳:12.4%(2,441.4万人) 65歳以上:8.8%(420.1万人)
  • 男女別 男性:約12.2%(1,903.7万人 ) 女性:約14.8%(2,408.6万人)
  • 人種別 白人(非ヒスパニック):約9.1%(1778.6万人) ヒスパニック:約21.4%(1213.3万人) 黒人:約24.1%(1002.0万人) アジア系:約11.4%(207.8万人)
  • 学歴別(25歳以上) 高卒未満:26.3%(617.1万人) 高卒:12.9%(801.6万人) 大学中退もしくは大学学科履修中:約9.6%(555.0万人)  大卒以上:約4.5%(322.2万人)
  • 出身国 アメリカ:13.1%(3,597.3万人) 外国(帰化):11.2%(225.5万人) 外国(末帰化):約21.3%(489.5万人)
  • 両親の有無 両親がいる世帯:約5.4%(324.5万人) 片親(母)世帯:約28.2%(1563.0万人) 片親(父)世帯:約14.9%(631.1万人)

である。[29]

また、貧困線より半分以下が約6.1%(1,944.4万人)、1.25倍までの人を含めると約17.9% (5,691.2万人)、1.5倍までの人を含めると約22.5%(7,168.1万人)、2.0倍の人を含めると約31.7%(1億89.4万人)である。[29]

英国

2016年の英国の最低所得基準は、単身者は年収17,311ポンド、4人家族で子供(2~4歳)が2人の世帯では年収37,812ポンドであった。[30]

2014年度の英国の最低所得基準[2014年の場合は、単身者は17,072ポンド、4人家族で子供(2~4歳)が2人の世帯では40,537ポンド]を下回る層は30.1%(約19.1百万人)である。 貧困率の内訳は

  • 年齢別 18歳未満:45.0%(約6.0百万人) 18~64歳:29.6%(約11.3百万人) 65歳以上:14.6%(1.8百万人)
  • 世帯別 片親(子供:1~3歳)世帯:74.5%(約2.3百万人) カップル世帯(子供:1~4歳):36.3%(約3.7百万人) 両親世帯:38.6%(約6.0百万人) 単身世帯:36.1%(3.0百万人)

カップル世帯:16.1%(2.3百万人) 年金受給者(単身)世帯:24.1%(約1.0百万人) 年金受給者(カップル)世帯:9.2%(0.7百万人)

である [31]

2015年4月のイギリスでは、全労働者の20.7%(約568.9万人)が時給7.83ポンド以下の給与であった。また、内訳は、年齢別で見ると、一番高い層は16~20歳は全労働者の77%(約110.4万人)、低い層は、36~40歳の13%(約40万人)である。男女別では、男性は16%(約223.5万人)、女性は25%(約345.5万人)であった。また、フルタイムの場合は12%(約244.9万人)であり、パートタイムの場合は41%(約324万人)であった。産業別では、一番高い産業は宿泊業で65%(約95.4万人)、低い産業は公務員の2%(約2.3万人)であった。職業別では、一番高い職業は運搬・清掃・包装等従事者が57%(約190.9万人)である、低い職業は、専門的・技術的職業従事者の1%(約5.7万人)である。 [32]

また、2016年時点で、生活賃金(最低限の生活水準の維持に要する生計費から、必要な賃金水準を設定したもの)未満の労働者は、約560万人で、職種別には販売補助や小売店のレジ係(88万人)、未熟練サービス職種(74万人)、介護サービス(45万人)、未熟練の清掃職種(43万人)、託児関連サービス(30万人)などの従事者が多い。更に、生活賃金未満の労働者の比率が高い職種としては、バーのスタッフやウェイター・ウェイトレスなどが挙げられている。また若者や女性で相対的に比率が高く、18-21歳層の労働者で全体の69%、また女性では27%が生活賃金未満と推計されている。なお、時間当たりの生活賃金の金額は2016年10月末時点で、ロンドンで9.75ポンド、ロンドン以外の地域では8.45ポンドである。[33]

インド

インドの公式貧困線は、最低ニーズバスケット(minimum needs basket)方式によって定められている。この方式は、特に食料消費を中心に最低水準の生活を維持するために必要なコストをもとに算出される。都市部と農村部で別々の基準で定めており、必要なカロリーを都市部では 2,100kcal、農村部では 2,400kcalを満たすために必要な食品の組み合わせである食料バスケットを設定し、その食料バスケットに含まれる食品を購入するために必要な金額で基準を定めている。また、各州の貧困線は物価調整を行いそれぞれの州で算出される[34]

2009-2010年ではインド政府が定めた基準の場合、都市部の基準は月収859.60ルピー(約18.8ドル)、農村部の基準は月収672.8ルピー(約14.7ドル)で計算されている。州別での貧困線では、都市部の場合、最高は1147.6ルピー(ナガランド州)~最低736ルピー(オリッサ州)であり、農村部は最高1016.8ルピー(ナガランド州)~最低567.1ルピー(オリッサ州)である。[35]

インド全体では、貧困率は21.92%(約2億6978.3万人)であり、都市部は13.7%(約5312.5万人)、農村部では25.70%(約2億1665.8万人)である。州別では、一番高い州はチャッティースガル州の39.93%(約1041.1万人)、一番低い州はアンダマン・ニコバル諸島連邦直轄領の1%(約0.4万人)である。都市部の場合、一番高い州はマニプール州の32.59%(約27.8万人)、一番低い州は0%の州を除いてラクシャディープ連邦直轄領の3.44%(約0.2万人)である。農村部は、一番高い州はダードラー及びナガル・ハヴェーリー連邦直轄領の62.59%(約11.2万人)、一番低い州は0%の州を除いてアンダマン・ニコバル諸島連邦直轄領の1.57%(約0.4万人)である[35]


指定カースト・指定部族の貧困率は、農村部では指定カーストが42.26%であり、指定部族は47.37%である。また都市部の場合は、指定カーストは34.11%であり、指定部族は30.38%である[36]。また、地域別に見ると、ビハール州とチャッティースガル州の指定カーストと指定部族の貧困率は約3分の2である。更に、マニプール州、オリッサ州、ウッタル・プラデ シュ州では彼らの貧困率は5割を超えている[35]


また、インド政府が定めた貧困線には批判があり、2001年から公益訴訟として最高裁に係属している「食料への権利(the Right to Food)」訴訟で提出された計画委員会の資料(宣誓供述書:affidavit)にある国別貧困線があまりに低いとNGO等が計画委員会を批判した。この宣誓供述書で示された数字では、一日当たりの貧困線が都市部では32ルピー、農村部では25ルピーが基準として示されたが、2009-2010年の基準は一日当たり都市部で約28.7ルピー、農村部で約22.4ルピーとなっており、宣誓供述書で示された基準よりもさらに低く設定されている。そのため、貧困線の設定が低すぎるとして更にNGO等の批判を招いている[34]

なお、インド政府が定めた貧困線ではなく、1日2ドル以下を貧困線とした場合、2010年ではPPPベースで約68.7%である[34]

日本

日本には国民貧困線が公式設定されておらず、国民貧困率の試算も存在しない。実務上は生活保護基準などを元に運用されている[37]

脚注

  1. ^ 貧乏線(ビンボウセン)とは コトバンク 2015-10-11閲覧。
  2. ^ : international poverty line
  3. ^ Sachs, Jeffrey D. The End of Poverty 2005, p. 20
  4. ^ Ravallion, Martin; Chen Shaohua & Sangraula, Prem Dollar a day The World Bank Economic Review, 23, 2, 2009, pp. 163-184
  5. ^ : absolute poverty
  6. ^ Absolute poverty definition by Babylon’s free dictionary”. Dictionary.babylon.com. 2011年11月25日閲覧。
  7. ^ PovcalNet
  8. ^ 世界の貧困に関するデータ
  9. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査関連情報 - 平成26年全国消費実態調査>調査の結果>統計表一覧>全国>所得分等に対する結果>総世帯>84 世帯構成・世帯主の年齢階級,有業人員別相対的及び絶対的貧困率
  10. ^ : relative poverty
  11. ^ 男女共同参画社会の形成の状況 : 第6節 「出番」と「居場所」のある社会の実現に向けて”. 内閣府男女共同参画局. 2015年10月11日閲覧。
  12. ^ 国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問 (PDF)”. 厚生労働省. p. 1. 2015年10月11日閲覧。
  13. ^ Poverty rate, Total, Ratio, 2014 or latest available
  14. ^ Income Distribution and PovertyOECD公式サイト
  15. ^ 主要統計 - OECD
  16. ^ [OECD iLibrary: Statistics / OECD Factbook / 2010 / http://www.oecd-ilibrary.org/sites/factbook-2010-en/11/02/02/index.html?itemId=/content/chapter/factbook-2010-89-en]
  17. a b 厚生労働省 (2017年). “『平成28年 国民生活基礎調査の概況』II 各種世帯の所得等の状況 6.貧困率の状況”. 2017年6月28日閲覧。
  18. ^ 6人に1人! どうする"子どもの貧困" - 放送内容まるわかり! - NHK 週刊 ニュース深読み
  19. ^ 子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える | NHKニュース
  20. ^ 子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える - YouTube
  21. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査関連情報 - 平成26年全国消費実態調査>調査の結果>統計表一覧>全国>所得分等に対する結果>総世帯>84 世帯構成・世帯主の年齢階級,有業人員別相対的及び絶対的貧困率
  22. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査 - 調査の結果>結果の概要>調査の結果>所得分布等に関する結果>結果の概要 ※集計結果をまとめたもの>「平成26年全国消費実態調査 所得分布等に関する結果 結果の概要」(PDF:349KB)(全16頁) Ⅱ 貧困率>2 子どもの相対的貧困率>
  23. ^ 人文学部研究年報|山形大学 人文学部・大学院社会文化システム研究科 - 都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討 戸室健作
  24. ^ 子育て貧困世帯:20年で倍 39都道府県で10%以上  - 毎日新聞
  25. ^ 国立社会保障・人口問題研究所(阿部 彩) (2008年). “日本における貧困の実態 (8p 国際比較…日本の貧困率は、1984年は10%、1999年は15%…) (PDF)”. 2011年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年11月21日閲覧。
  26. ^ 『OECD日本経済白書〈2007〉』(OECD)
  27. ^ 大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、140-142頁。
  28. ^ Institute for Research on Poverty”. 2017年4月1日閲覧。
  29. a b c Income and Poverty in the United States: 2015”. 2017年4月1日閲覧。
  30. ^ Abigail Davis; Katherine Hill; Donald Hirsch; Matt Padley (July 2016), A Minimum Income Standard for the UK in 2016, Joseph Rowntree Foundation 2017年4月13日閲覧。
  31. ^ Matt Padley; Donald Hirsch; Dr Laura Valadez (February 2017), Households below a Minimum Income Standard: 2008/09 to 2014/15, Joseph Rowntree Foundation 2017年4月13日閲覧。
  32. ^ Stephen Clarke; Conor D’Arcy (October 2016), Low Pay Britain 2016, Resolution Foundation 2017年4月10日閲覧。
  33. ^ 独立行政法人労働政策研究・研修機構. “生活賃金と最低賃金の動向”. 2017年3月20日閲覧。
  34. a b c 貧困プロファイル インド 2012年度版 独立行政法人 国際協力機構(JICA) (PDF)”. 2017年4月1日閲覧。
  35. a b c POVERTY ESTIMATES FOR 2009-10 (PDF)”. 2009年11月19日閲覧。
  36. ^ “[http://planningcommission.gov.in/plans/planrel/12thplan/pdf/12fyp_vol3.pdf Twelfth Five Year Plan 2012-17 Planning Commission Social Sectors Volume 3 Government of India] (PDF)”. 2017年4月13日閲覧。
  37. ^ 関根由紀「日本の貧困--増える働く貧困層 (特集 貧困と労働) (PDF) 」 、『日本労働研究雑誌』第49巻第6号、労働政策研究・研修機構、2007年6月、 20-30頁、 NAID 40015509240

関連項目

 

カテゴリ: