ヘリ空母 Ⅰ【前半】
軽空母
詳細は「軽空母」を参照
1975年、ソ連海軍では大型のVTOL空母キエフ級(改型の「アドミラル・ゴルシコフ」を含めて4隻建造、満載排水量36,000トン、ヘリコプターとSTOVL機約30機搭載)を建造した。キエフ級は、ミサイル巡洋艦の性格が強く、搭載したSTOVL機(Yak-38フォージャー)の能力も低かったこともあり、その後はCTOL機を運用できる正規空母の建造に移行した。なお、ソ連海軍はキエフ級に「航空巡洋艦(重航空巡洋艦)」という名称を与えていたが、その理由は、空母のボスポラス海峡通過を禁じたモントルー条約を回避するためであり、空母であっても「巡洋艦」と称することで通過を可能とするためである。 1980年に完成したイギリス海軍のインヴィンシブル級(満載排水量20,600トン)は、最初全通甲板型巡洋艦として設計されていたが、ヘリコプターとSTOVL機(シーハリアー)合わせて21機の運用が可能な軽空母として完成し、以後の西側諸国で建造される軽空母の方向性を決定付けた。
正規空母「アメリカ」と軽空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」
西側諸国ではインヴィンシブル級に倣って、ヘリコプターとSTOVL機の両方を搭載できる空母の建造が行われた。イタリア海軍の「ジュゼッペ・ガリバルディ」(1985年、満載排水量13,850トン、航空機16 - 18機)、スペイン海軍の「プリンシペ・デ・アストゥリアス」(1988年、満載排水量17,200トン、航空機27機)、タイ海軍の「チャクリ・ナルエベト」(1997年、満載排水量11,500トン、航空機12 - 14機)などである。
タイの「チャクリ・ナルエベト」は2015年現在STOVL機AV-8Sマタドールが全機保管状態にあって実働していないため、実質的にヘリ空母としての任務にしか就いていない。
ひゅうが型・いずも型護衛艦
詳細は「海上自衛隊の航空母艦建造構想」、「ひゅうが型護衛艦」、および「いずも型護衛艦」を参照
ヘリコプター護衛艦 「ひゅうが」
ヘリコプター護衛艦「いずも」
第2次防衛力整備計画の策定段階で、海上自衛隊はHSS-2/2A対潜ヘリコプター18機を搭載する、基準排水量8,000トンのヘリ空母 (CVH) の建造を計画し、1960年(昭和35年)7月の防衛庁(当時)庁議において建造決定にまでこぎつけたものの、政治的な事情で実現しなかったという経緯があった。この再来とも呼べるのが、2004年度計画によるヘリコプター搭載護衛艦のひゅうが型である。
ひゅうが型は、全通甲板を持ち、砲戦能力・揚陸機能・V/STOL機の運用能力のいずれも持たない純然たるヘリ空母としては、世界で初めて新造された艦である[要出典]。海上自衛隊での種別は「ヘリコプター搭載護衛艦」ではあるが、全通甲板を備えたヘリ空母となる。
2015年より、しらね型護衛艦の代替としてヘリコプター運用能力をより発展させたいずも型が就役。ひゅうが型より一回り大型で、常時搭載機も哨戒ヘリ×7、掃海・輸送ヘリ×2、最大14機の搭載を予定し、陸上車輛の輸送・他艦艇への洋上給油等の多様性も強化されている。
クイーン・エリザベス級航空母艦
詳細は「クイーン・エリザベス級航空母艦」を参照
2015年現在イギリスで建造中であり2017年に就役予定のネームシップ「クイーン・エリザベス」は、一時期固定翼機の運用能力を持たないヘリコプターのみを搭載するヘリ空母として運用される予定であった。クイーン・エリザベス級は、V/STOL機であるF-35Bを搭載する軽空母として計画されたが、F-35Bの開発が大きく遅延して「クイーン・エリザベス」の就役に間に合わないことが懸念され、また建造がかなりの段階まで進んでいたためカタパルトなどのCTOL機運用能力を追加することも不可能だったためのやむを得ない措置であった。2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」は、電磁式カタパルトを持ちCTOL機のF-35Cを運用できる正規空母として再設計の上、建造が進められており、2019年に「プリンス・オブ・ウェールズ」が就役すると同時に「クイーン・エリザベス」は予備役に編入される予定であった。
F-35Cのイギリスにおける実戦配備が2023年まで遅れる見込みのため、再度C型からB型に戻されることとなり、現在のところ2隻ともがSTOVL空母としての能力を得る予定である。
その他のヘリコプター搭載艦
現在ではフリゲートより大きい水上艦には、対潜作戦や連絡・物資運搬用等の目的でヘリコプターを搭載する場合が多い。
例えばアメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートは満載排水量4,100トンの艦体に2機のヘリコプターを搭載しており、イスラエル海軍のアリヤ級ミサイル艇は、約500トンの艇体に1機のヘリコプターを搭載しているが、これらの艦はヘリ空母とは呼ばれない。また、韓国海軍ではKDX-1(広開土大王級駆逐艦)はDDHと見なしているが、世界的にみればフリゲートに分類される。
イギリス海軍では、民間のRO-RO式貨物船を改造した傷病兵収容艦「アーガス」があり、イギリス軍が保有するヘリコプター及びハリアーを運用する事ができる。当初は航空練習艦(後に航空支援艦に変更)と名乗っていたように艦載ヘリコプターの離着陸訓練が任務の中心であるが、輸送任務や病院船、海外展開の際の洋上におけるヘリコプター基地としての役割も可能である。全通ではないものの広範囲の甲板を持つ事から、イギリス陸軍や同空軍のヘリコプターが海外展開する際に、洋上給油基地としての役割を担った事もある。
中国人民解放軍海軍には艦載ヘリコプターの離着陸訓練を目的とした、世昌級航空練習艦が存在している。要目は「アーガス」に類似しており、病院船や輸送艦としての運用も可能である。
アメリカ海軍では、イオージマ級強襲揚陸艦「インチョン」がごく短期間、機雷戦指揮艦として運用された。これはイオージマ級のヘリ運用能力を転用したもので、MH-53掃海ヘリコプターと航空掃海具を搭載し、自ら航空掃海を行なう事ができた。また、掃海部隊の指揮機能を持ち、掃海艦艇への洋上給油なども可能とさせたものであった。
出典
- ^ 岡田幸和「幻に終わった海上自衛隊のヘリ空母」、『世界の艦船』第490号、海人社、1994年12月、 141-147頁。
- 長田博「海上自衛隊DDH運用思想の変遷 (特集 海上自衛隊のDDHとその将来)」、『世界の艦船』第584号、海人社、2001年7月、 70-75頁、 NAID 40002156107。
- 「現代軽空母のメカニズム (特集 空母のメカニズム)」、『世界の艦船』第451号、海人社、1992年6月、 94-99頁。
- http://arms-tass.su/?page=article&aid=104085&cid=44
- http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/43816993.html
- 関賢太郎 (2015年10月24日). “来年にも4隻体制に 導入進む日本の空母、その現状と課題”. ミリタリー/乗り物ニュース. 2016年12月17日閲覧。
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