軍隊の階級 Ⅶ【右】士官候補生【下士官待遇】

 
 

特務士官・准士官(士官相当官)

日本海軍の特務士官は士官相当の階級の准士官であった。特務士官と准士官を合わせて特准と称した。特務士官になるものは兵からのたたき上げで、兵、下士官、准士官を経て特務士官に昇任した。士官相当の階級とはいえ制服や階級章は将校とは別であり作戦指揮権はなかった。例は少ないが特務士官から士官へ転官して士官の海軍少佐に昇任することができた。

日本海軍の特務士官は次のように変遷。

  • 1897年(明治30年)9月16日、准士官に兵曹長を設置し高等官(奏任官:少尉相当官)とする。
  • 1915年(大正4年)12月2日、兵曹長の官階を准士官から新設した特務士官に変更。
  • 1920年(大正9年)4月1日、特務士官で最も上の階級を大尉相当官に改め特務大尉と特務中尉を新設、兵曹長を特務少尉に改称し、同時に准士官の上等兵曹を兵曹長に改称。
  • 1942年(昭和17年)11月1日、特務士官の階級を改め、特務大尉を大尉、特務中尉を中尉、特務少尉を少尉とする。
日本海軍の特務士官及び准士官の階級の変遷
官階 1897年~1915年 1915年~1920年 1920年~1942年 1942年~1945年
特務士官(奏任官四等)     特務大尉 大尉
特務士官(奏任官五等)     特務中尉 中尉
特務士官(奏任官六等)   兵曹長 特務少尉 少尉
准士官(奏任官六等) 兵曹長      
准士官(判任官一等) 上等兵曹 上等兵曹 兵曹長 兵曹長

英国海軍においても1950年代までの兵曹長 (Warrant Officer) は、日本海軍の特務士官やアメリカ軍の准士官 (Warrant Officer) と同様の階級であった。なお、1970年代以降の英国海軍の兵曹長 (Warrant Officer) は英国陸軍のような上級の下士官である。

アメリカ軍の准士官 (Warrant Officer) は、士官よりも下、下士官よりも上で、そのどちらにも属さない別個の階級であり、独立したキャリア制度である。本来、厳密には高度な技術を備えた専門職のための階級である。特殊な例としては、軍の内部で発生した犯罪の捜査を行うCID(犯罪捜査部)の捜査官は、将校でも下士官でもないその特性が捜査に都合がよい事もあり准士官が充てられている。アメリカ空軍の准士官は1986年に廃止された。 アメリカ海軍には Warrant Officer の階級はないが Chief Warrant Officer の階級はある。

Chief Warrant Officer には給与等級 E-7、E-8 または E-9 に該当する階級から昇任できる。アメリカ陸軍やアメリカ海兵隊では Warrant Officer には給与等級 E-7 未満に該当する階級からも昇任できる。

このように、アメリカ軍の昇任経路からみると下士官 (E-7, E-8, E-9) と准士官 (WO1, CW2, CW3) の階級が同等の階級として並立している。一方、待遇からみると、アメリカ軍の Chief Warrant Officer の給与と特権は階級によるが士官と同じである。准士官には将校の給与等級と同程度の給与が支払われる。しかしそれは准士官は軍での経歴が長いことが普通だからであり、時としてもっと高いこともある。WO の給与は O-1(少尉)よりも若干高い、CW2 の給与は O-3/O-4(大尉/少佐)とおおまかに同じ、CW3 の給与は O-4/O-5(少佐/中佐)とおおよそ同じである。

韓国軍の준위(准尉)は、各種専門技術行政担当の職に補される。専門技術職に携わる将校(士官)と副士官の間に位する准士官の階級であり、各部隊及び機甲部隊で兵器、弾薬、輸送、陸軍航空などの専門職を任務とする。韓国軍の階級を3段階で分類する時は通常は将校に含まれる。

准士官(士官相当官)の階級の一覧