シェルター Ⅰ【前半】目次 戦略上のシェルター シェルター…
サバイバルにおけるシェルター
人間は自然環境の中で、風雨に晒されるなどの要因によって体温が極端に下がると、低体温症に陥る。また、強い日光などによって体温が極端に上がると、熱中症を引き起こす。
墜落や遭難などで文明社会から隔絶された環境では、救助を待つ間は十分な医療を受けにくい状態であるため、健康管理は十分に注意を払うべき要素である。その点で風雨や日光を防ぐ場所は体力を温存する上で重要であり、例えばアメリカ軍の歩兵が行うサバイバル訓練では、こういったシェルターの設営も重要な科目に位置付けられている。
最も装備が充実している場合で、寝袋やテントを持っているなら色々な意味で生存に有利である。これらは快適な睡眠環境を整えるための工夫が凝らされており、設置場所を間違えなければ様々な意味で快適な屋外生活が送れる。しかし、テントの設置場所を間違えてしまうと、そのメリットが薄れるどころか、逆に危険にさらされてしまう。例えば、低地や河の側に設営したために河川が氾濫した時には浸水したり流されたり、野生動物のいる環境ではこれら野生動物にテントを壊されたり寝床を奪われたり、または設置強度が低く風で飛ばされたりといった問題も発生する。
テントがない場合でも、身の回りのものを活用してシェルターを作ることは可能である。パラシュートなどで航空機から脱出した場合には、このパラシュートの有り余る布でテントを作ったり、またはパラシュートの紐(コードと呼ばれる)を使ってシェルターを作る。この場合はナイフを使って様々な工作をすることで、パラシュートからテントやシェルターのほか、食料を確保するための罠の作成方法までもが、歩兵マニュアル上などで見られる。アメリカ先住民族のラコタ族が使うティピーと呼ばれる簡易テントは、同じくらいの長さの木の棒数本の一端を束ねた骨組みに布か皮を巻きつけた円錐型テントだが、これもパラシュートを流用して作り易い。
簡便なものでは、葉の付いたままの枝を横倒しにした木に大量に立てかけて、これを簡易のシェルターとする方法もある。また、直射日光を避けるためには、単に木陰というだけでも立派なシェルターである。更に砂漠など昼間は酷暑で夜は寒冷な地帯では、地面に溝を掘ってその両端に土砂を積み上げ、布を二重にして日光と熱をさえぎると、昼間は一枚目の布で直射日光による熱が防がれ、二枚目の布で夜間の放熱が防がれるというシェルターになる。
雪山や雪原でビバークする必要が発生した時にはイグルー(押し固めた雪のブロックを使って作る、かまくらよりも堅牢なシェルター)とまで行かなくとも、雪洞(積もった雪に穴を掘って内側から壁を押し固めただけ)というシェルターを利用することもできる。ただし、この場合も雪崩に遭わないよう、設営場所には十分な注意が必要である。
なお、ゲリラ戦では一種のカモフラージュをほどこしたシェルターを配して待ち構え、敵対勢力の通過を待って罠に掛ける戦術も見られる。
交通機関におけるシェルター
札幌市営地下鉄南北線のシェルター(澄川駅 - 自衛隊前駅間)
駅やバス停、タクシースタンドなどで、旅客や貨物を雨風から守るために設置される覆い(上屋)のことをシェルターと呼ぶことがある。ヨーロッパの大きな駅では、プラットホームと線路全体を覆う巨大なシェルターがしばしば見られ、プラットホームホールなどと呼ばれることもある。
日本においては、平成12年の移動円滑化の促進に関する基本方針(交通バリアフリー法)制定後、高齢者や身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性向上のため、一定規模の駅とバス停との間における通路シェルターの整備が進んでいる。 また、線路や道路、地下道入口を雨や風、雪から防護するために設置するシェルターもある。強風が頻繁に吹く場所で防風壁を設置するのは、シェルターの一種である。また、積雪地においては、除雪の手間を省き安定した輸送を確保するために全体をシェルターで覆うことがあり、札幌市営地下鉄南北線の例が挙げられる。トンネルが連続する区間においては、トンネル微気圧波対策などの関係から間をつなぐシェルターを設置することがある。また、高速道路においては騒音防止のためにある特定の区間内に設けられており、その代表的なものが中国自動車道の青葉台シェルターや中央自動車道の烏山シェルターである。前者はトンネル式、後者は高架に設けられている。いずれも1970年代半ばに作られた。建設された背景には当時の車の台数の増加による騒音の激化や、開発反対の運動を懐柔させるためにとった苦肉の策などが挙げられる。
関連作品
- ドキュメンタリー「失われた世界の謎」シリーズ(ヒストリーチャンネル)
- 第2回「チャーチルの地下都市」
- 第6回「ヒトラーの巨大都市」
- 第18回「アメリカの秘密の核シェルター」
- 第32回「スターリンの都市改造計画」
- ドキュメンタリー「謎のアンダーワールド2」シリーズ 第19回「モスクワ」(ヒストリー・チャンネル)
出典・脚注
- “【安保改定の真実(1)】ホテル地下の極秘核シェルター アイクが恐れた米ソ核戦争 「共産主義者はサーベルを鳴らし続けた…」”. 産経新聞. (2015年5月4日) 2015年8月17日閲覧。
- “武力攻撃やテロなどから身を守るために”. 内閣官房 (2006年3月31日). 2013年2月23日閲覧。
- “活発化する動き オウム真理教 反社会的な本質とその実態”. 警視庁. 2016年10月30日閲覧。
- “自分の身は自分で守る。これは世界の常識です。”. 日本核シェルター協会 (2013年3月31日). 2013年3月31日閲覧。
関連項目
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ウィキメディア・コモンズには、シェルターに関連するカテゴリがあります。 |
- サバイバル
- 竪穴式住居
- 防空壕
- 遭難
- DVシェルター(「避難所」という意味合いから、いわゆる「駆け込み寺」のような緊急時に保護する施設もシェルターと呼ばれる)
- ドメスティックバイオレンス
- 児童虐待(手近な所では隣家が、より公的には児童相談所などがシェルターとして機能する)
- ストーカー(付きまといに対しては、交番のほかコンビニエンスストアなどが一時待避所として利用される)
- 広義の避難所(災害関連)
- 帰宅難民
- 民間防衛
- グリーンブライヤーホテル内、米国政府極秘緊急リロケーションセンター(英語)
- 品川シェルター
- 喫煙シェルター(受動喫煙を防止するため、屋外に設置される喫煙専用の建屋。)
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