地震危険度(じしんきけんど、英: seismic risk…
主な地震危険度評価
- 日本
- 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」(最新:2010年版) - 時間依存、地点ごと・地震ごと
- アメリカ
- 連邦レベル
- カリフォルニア州
- 「全カリフォルニア地震破壊予測[注 2]」(Uniform California Earthquake Rupture Forecast, UCERF)(最新:2008年版"UCERF 2") - 時間依存、地点ごと・地震ごと
- 世界
- USGS 「世界地震ハザード評価プログラム[15]」(Global Seismic Hazard Assessment Program, GSHAP) - 時間非依存、地点ごと。国際連合が1990年代に掲げた「国際防災の十年」(IDNDR)の一環で行われた事業で、国際科学会議及びその傘下の国際リソスフェア計画(International Lithosphere Program, ILP)、IASPEI、UNESCO、ポツダム地球科学研究センター(GFZ)、インド国立地球物理学研究所(NGRI)、スイス地震局(SED)、中国国家地震局(SSB)、USGSが参加した。50年間に10%の確率で生じる最大加速度をもとにゾーニングした地図が作成された[16]。
地震危険度の値の意味と活用方法
地震調査研究本部は、内陸の活断層の地震(内陸地殻内地震)において、発生後に当時の確率値を逆算していくつか紹介している。これによると、地震発生直前での30年間発生確率は、1995年の兵庫県南部地震(M7.3) では0.02-8%、1958年の飛越地震(M7.0-7.1)ではほぼ0-13%、1847年の善光寺地震(M7.4) ではほぼ0-20%などとなっている[17]。
地震動予測地図工学利用検討委員会の2002年の報告によると、確率論的地震ハザード評価は耐震設計や耐震補強などの建築構造設計の分野、リスクマネジメントやライフサイクルコスト(LCC)評価などの経営分野、不動産の鑑定や地震保険などの保険の分野、各自治体の地域防災計画など防災政策の分野で主に用いられる[12]。一方シナリオ型地震動評価は、先に挙げた建築構造設計や防災政策の分野の中でも特に、原子力施設や超高層建築物などの重要な構造物の設計、地震の被害想定などで主に用いられる[18]。
地震危険度評価の問題点
地震危険度の評価は、計器観測記録が残る19世紀終盤以降のデータだけでは足りず、長期間のデータが必要である。地震の見落としや過大評価があるとそれが誤差となって現れるため、データの不完全さという問題が付きまとう[1]。また、確率が低いからと言って地震が起こらない訳ではない。確率や期待される最大震度が低いからと言っても、大地震が起きた時の被害が小さい訳ではなく、起きてしまえば甚大な被害が出ることに変わりはない[19]。
そして、確率的長期評価に対する否定的な見解もあり、「確率の大小が地震防災の優先度を左右してしまう」という批判や、「確率の高い地域では危機意識の高まりにつながる一方で、低い地域では安心につながる場合があり、想定されていない断層で大地震が発生する場合もあるのだから、確率が低いからといって安心できるわけではない」という指摘、確率を取り上げるのではなく「いつどこで大地震が起きてもおかしくない」というようにランダム性を強調すべきという指摘もある。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は評価において全く想定されておらず、地震危険度評価に対しても疑問を投げかけた。同じ領域で同じ規模の地震が繰り返し発生するという仮定に依存していた従来の評価を一部見直して連動型地震のような低頻度のものを評価できるようにし、津波堆積物調査や地殻変動観測の成果を積極的に取り入れることとされた。これにより、2011年以降は「全国を概観した地震動予測地図」の更新が休止されている[20][21][19]。
出典
注釈
脚注
- ^ a b c d e 地震の事典、§9-1(476-483頁)
- ^ 片山恒雄「地震活動度・危険度の確率論的な考え方」、東京大学生産技術研究所『生産研究』27巻5号185-195頁、1975年5月1日
- ^ a b 藤原・河合ら、2002年、§2-A「日本における確率論的地震ハザード評価に関する研究の変遷」、2013年9月14日閲覧
- ^ a b c d 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 長期評価部会・強震動評価部会、「確率論的地震動予測地図の試作版(地域限定-西日本)」内「説明文」§1(31頁)、2004年3月25日付、2013年9月14日閲覧
- ^ 地震動予測地図工学利用検討委員会、2002年、§3-1「地震ハザード技術の進展」、2013年9月14日閲覧
- ^ 河角廣「 有史以來の地震活動より見たる我國各地の地震危險度及び最高震度の期待値」、東京大学地震研究所『東京大學地震研究所彙報』第29冊第3号、1951年10月5日、469-482頁
- ^ a b c 力武、2001年、397-402頁
- ^ a b 地震調査研究推進本部 地震調査委員会、「「全国を概観した地震動予測地図」報告書」内「分冊1: 確率論的地震動予測地図の説明」§1(1-2頁)、2005年12月14日更新時点、2013年9月14日閲覧
- ^ 石川裕、奥村俊彦、亀田弘行「活断層を考慮した神戸における地震危険度評価(PDF) 」、土木学会『阪神・淡路大震災に関する学術講演会論文集』1巻、1996年、61-68頁
- ^ 「全国地震動予測地図」地震調査研究推進本部、2013年9月14日閲覧
- ^ 島崎邦彦、林豊「擾乱を含んだ時間予測モデル (PDF) 」、日本地球惑星科学連合、『地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集』、Sl-004、2000年
- ^ a b 地震動予測地図工学利用検討委員会、2002年、§4-1-1「確率論的地震ハザード評価の利用形態」、2013年9月14日閲覧
- ^ 「地震の発生確率と地震動の超過確率」、防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション、2013年9月14日閲覧
- ^ 地震動予測地図工学利用検討委員会、2002年、§2-2-2「米国の地震ハザード地図プロジェクト」、2013年9月14日閲覧
- ^ 「世界地震ハザード評価プログラム」、新語時事用語辞典、2011年4月8日、2013年9月29日
- ^ 地震動予測地図工学利用検討委員会、2002年、§2-2-1「世界地震ハザード評価プログラム」、2013年9月14日閲覧
- ^ 「過去に発生した地震の、地震発生直前における確率」:地震調査研究本部>トップページ>地震に関する評価>長期評価結果一覧
- ^ 地震動予測地図工学利用検討委員会、2002年、§4-1-2「シナリオ型地震動評価の利用形態」、2013年9月14日閲覧
- ^ a b 「今後の地震動ハザード評価に関する検討 ~2011年・2012年における検討結果~ (PDF) 」地震調査研究推進本部、2012年12月21日付、2013年9月11日閲覧
- ^ “東北地方太平洋沖地震に伴う長期評価に関する対応について (PDF)”. 地震調査研究推進本部地震調査委員会 (2011年6月9日). 2011年6月10日閲覧。
- ^ 読売新聞2011年6月10日13版37面、および地震予測の手法見直し 発生例なくても想定 政府調査委Asahi.com 2011年6月9日
参考文献
- 宇津徳治、 嶋悦三、山科健一郎(編) 『地震の事典』 朝倉書店、2001年、第2版。ISBN 4-254-16039-9。
- 力武常次 『地震予知 発展と展望』 日本専門図書出版、2001年。ISBN 4-931507-01-8。
- 藤原広行、河合伸一ら(地震動予測地図作成手法の研究プロジェクト)「確率論的地震動予測地図作成手法の検討と試作例」、防災科学技術研究所『防災科学技術研究所研究資料』第263号、2002年12月
- 地震動予測地図工学利用検討委員会「地震動予測地図の工学利用-地震ハザードの共通情報基盤を目指して- <地震動予測地図工学利用検討委員会報告書>平成16年9月」、防災科学技術研究所『防災科学技術研究所研究資料』第258号、2002年9月